11 動物園デート中編
「小動物とふれあえるコーナーあるからそこ行きたいな!」
楓が目をキラキラさせて言った。動物園に来て、動物たちに触れ合えるなんて最高じゃないか!
「おっそれはいいな! 行こう行こう! どこにあるか、わかるか?」
俺もテンションが上がって、すぐにスマホを取り出そうとしたけど、楓がもう地図を広げていた。
「えっとね、たしかこっちの方!」
楓が指差す方向に、俺たちは足を進めた。どんな小動物がいるんだろう? ハムスターとかモルモットとかかな?
楓が嬉しそうにしているのを見るだけで、俺も楽しみで仕方なかった。
楓が地図を頼りに進んでいくと、可愛らしい動物の鳴き声が聞こえてきた。入り口には「なかよし動物広場」って看板が出ていて、たくさんの人が小動物と触れ合ってるのが見えた。
「わー! うさぎさんいる!」
楓が目を輝かせて、小さなケージの中にいるウサギたちを指差した。モルモットやハリネズミなんかもいて、見てるだけで癒やされる。
触れ合うウサギたち
手を消毒して、俺たちはウサギのコーナーへ。地面に座って、そーっと手を伸ばす。
ふわふわの毛並みのウサギが、ちょこんと俺の手のひらに乗ってきた。想像以上の柔らかさに、思わず笑みがこぼれる。
「可愛い〜! この子、なでなでしてって言ってるみたい!」
楓も隣で嬉しそうにウサギを撫でてる。楓の指先がウサギの耳を優しくなでるたびに、ウサギが気持ちよさそうに目を細めるのが見えた。
夢中になってウサギを撫でていると、自然と楓との距離が縮まっていた。そして、小さなウサギの背中を一緒に撫でようとしたその時、
俺の指先と、楓の指先が、そっと触れ合った。
「「あっ…」」
お互いに、小さく声が出た。一瞬、時間が止まったみたいに感じる。楓の指先は、想像よりもずっと柔らかくて、少しだけ温かい。俺の心臓は、ドクン、と大きく鳴った。
楓が少しだけ顔を赤らめて、目線をウサギに移した。俺も、何でもないフリをして、ウサギの頭を撫で続けた。
「あ、タケルもウサギ触る? ほら!」
楓が少しだけ赤くなった顔のまま、優しい声でそう言った。そして、自分が撫でていたウサギを、そっと俺の方に押しやってくれる。
「おう、ありがとう!」
俺は平静を装って、差し出されたウサギを優しく撫でた。ふわふわで温かいウサギの毛並み。
でも、それよりも、さっき触れ合った楓の指先の感触が、俺の頭から離れない。




