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誰か僕の姉さんを止めて下さい  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
幸福の王子大作戦

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第四十三話 宇宙人の反撃

「はぁ? 全員の洗脳が解けた?」

「はい、リーダー。何か、トラブルでも起きたのかと」

「アルファ。トラブルでは説明になっていない」

「我々の技術が、地球に適応しなかったのかと」

「そんな事が有り得るのか? 現に、他所からやって来た連中は、他の議員たちを駒の様に使っていたではないか!」

「それは、我々とは別の技術体系としか……」

「だが、一度は上手くいったのだろ?」

「はい。だから、トラブルとしか考えられません」


 そんな馬鹿な事が有るのか? トラブルなら、突然起こるのでは無く何か予兆が有ったはずだ。しかし、それを見逃すアルファではない。そうなると別の問題か? 

 ただ、別の技術体系と言われたら、「我々には成す術が無い」と語ってるのと同じ事だ。それでは、他の奴らに負けを認めた事になる。我々は目的を達せられない事になる。


 それでは駄目なのだ!


「もう一度、聞く。アルファ、技術的な問題なのだな?」

「恐らく――」


 困った。そうなると、作戦を変えなければならない。


 本来、この団体は日本の現状を憂い、その在り方を変える事を理念にした団体だ。組織の幹部である理事は、我々が憑依しているから問題は無い。ボランティアの連中も深い事までは考えないだろう。


 問題は、職員をやっている連中の事だ。


 その中には会計を担当している職員も存在している。そいつが、今の帳簿を見れば資金を不正に使用している事が直ぐに分かるだろう。


 そうしたら、どうなるか。


 我々は告発されるだろう。宮司に憑依したアレが、我々を捕まえに来るんだ。奴は、融通が利かない。出来ればそれは避けたい。そうやって頭を悩ませていると、今度はベータが俺の執務室に入って来た。


「リーダー! 洗脳が解けました!」

「ベータ。それは、アルファから聞いた所だ」

「それでは、これも報告を受けているんですね?」

「技術的な問題だと聞いているが?」

「いえ、それは違います。アレです! 宮司に憑依したアレ! アレがハッキングをかけたに違いありません!」

「ベータ! これは技術的な問題だ! アレに何が出来るものか!」

「アルファ。お前は思い違いをしている。アレは我々と違い、コードネームを貰えなかったから拗ねているのだ」


 馬鹿な事を。アレとは、この間会ったばかりだ。ハッキングなんてしている様子は、欠片も感じ取れなかった。そもそも、アレに我々の技術をハッキングする知能なんてあるのか? 


 いや、待て待て。よく考えろ。我々は一にして全、全にして一だ。俺の持っている技術は、アレも持っているはずだ。

 そうすると、どういう事だ? 技術的な欠陥ではなく、アレが干渉して洗脳が解除されたというのか? そんな事をしてアレに何の徳が有る? それこそ、拗ねてるとしか考えられない。


「二人共、待つんだ。どちらの意見が正しいのか、俺には全く判らん」

「技術的なトラブルです!」

「アレがハッキングしたんです!」

「困ったな。仮に二人の意見が正しいとして……」

「ベータが間違ってます!」

「アルファが間違ってます!」

「ちょっと待ってくれ。一旦整理をさせてくれ」


 あぁ、本当に困った。同じ報告なのに、原因の推定が違うとは。これでは、対処のしようが無い。いや、待てよ。対処と言ったか? そうだ! もう一度、洗脳をかけ直せば良いんじゃないのか?


「アルファ、ベータ。洗脳をかけ直す事は可能か?」

「試してみないと」

「そうですね、試してみないと」


 二人共、やや口ごもる様子で俯く。これだから、意思疎通の出来ない人間の体は面倒なのだ。言葉では伝わり辛い物も有るだろうに。だから、人間は遅れているんだ。

 それよりも、二人の様子を見る限りは、まだ試してはいないのだな。それなら洗脳をかけ直す事も可能ではないのか?


「それには、私がお答えしましょう!」

「ガンマ?」

「が、ガンマン?」

「アルファ、ガンマンだと西部劇だ!」

「そうだった、ベータ」


 なんて事だ。だんだんとコントの様になって来た。ここはショー劇場ではない。ここは、俺の執務室だ。

 

「ガンマ。洗脳についてだが――」

「かけ直す事は無理でした」

「はぁ?」

「かけ直す事は無理でした」

「繰り返さなくても良い……」


 ガンマは俺の言葉を遮る様にして言い切った。そこまで言い切られると、何も問い返す気にならない。不思議だ。何で、こうも妙な事が続く? もしかして、我々は全員が洗脳でも受けているのか? そうでないと、同胞たちのおかしな言動に説明がつかない。


「お困りの様ですね、リーダー」

「デルタ……。お前モカ?」

「せっかくコーヒーを頂けるなら、モカよりキリマンジャロを頂きたい」

「いや、コーヒーの話はしてない!」


 困ってるから、ちょっと語尾が上擦っただけだ。決して、コーヒーの話なんてしてない。何がキリマンジャロだ! 洒落やがって! そもそも、俺はリーダーでお前は部下だぞ! お前が勝手に淹れろ!


「それで? デルタは何をしに来た?」

「この混沌とした状況を打開しようと思いまして!」

「デルタ、お前……。コントと混沌をかけたのか?」

「駄洒落か? デルタ」

「落ちたな、デルタ」

「アルファ、ベータ、ガンマ。お前ら三人共黙ってろ! 今は俺が報告をしてるのだ!」

「そうだ。お前たち、少し黙ってデルタの報告を聞こう」


 俺が少し目付きを鋭くすると、アルファたちは黙り込む。そうだ、それで良い。そうなれば、妙な劇場っぽくはならない。

 

「リーダー。これは、道明寺翠嵐のせいだと思います」

「いやいや、デルタ。それは無い!」

「アルファのいう通りだ、それは無い!」

「ベータに同意する。それは無い!」

「いや、お前らが無い!」


 アルファたち四人は、それぞれが睨み合う。しかし、これに関してだけはアルファに同意する。道明寺翠嵐が如何に天才でも、我々の技術に到達しているとは考え辛い。何せ、技術レベルが天と地の差以上は有るのだから。


 道明寺翠嵐が何を企んでいたとしても、我々には何も手出しを出来ない。それは絶対だ。


「リーダー。良く考えて頂きたい。何故、道明寺海がボランティアに参加していたのかを?」


 そうだ。俺は肝心な事を忘れていた様だ。道明寺海がボランティアに参加していたのは、道明寺翠嵐の指示だろう。それは、何か企みが有ったと仮定しても間違いはなかろう。それを防ぐ為に、我々は道明寺海に洗脳を施そうとしたのだ。


 それにしても道明寺翠嵐は、何を企んでいる? いや、待てよ。そもそも、我々は何故、道明寺翠嵐を敵視してる? アレが何か吹聴したからじゃないのか? そんな戯言を信じても良いのか? 本当に道明寺翠嵐は、我々の脅威なのか?


 いよいよもって分からなくなって来たぞ。


「つまりです。リーダー! 道明寺海を利用すれば良いのです!」

「いいや、デルタ。洗脳は奴を利用する為でも有ったはずだ!」

「そうです。ですが、今度は違います!」

「違うとは何がだ?」

「道明寺海はガードが固いんです」

「ガード? 奴を直接は我々側には取り込めないという事か?」

「そうです」

「それならどうする?」

「奴の友人を使うんです」

「友人? 奴に付きまとっていた妙な男か?」

「そうです。奴を攫うんです!」

「そうか。攫った所を一人で来させると?」

「ええ。そうすれば、洗脳できるチャンスが生まれます」

「ついでに、あの妙な男も洗脳してしまえば――」

「ええ。完璧な作戦だと思いませんか? リーダー?」


 そうだな。完璧な作戦だ。それであれば、当初の目的通りに道明寺海を手中に出来る。それ所かおまけも付いて来る。


「よし! その作戦はお前に任せるぞ、デルタ!」

「畏まりました!」

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