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誰か僕の姉さんを止めて下さい  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
裸の王様大作戦

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第二十八話 裸の王様大作戦

「所で姉さん。一体、どこまで予定通りだったの?」

「ほぼ、だな――」

「でもさ、秘書の人については予定外だったでしょ?」

「リスト化した議員から、何らかのアクションが有るとは予想してたぞ」

「じゃあ、姉さんが襲われるのも?」

「当然だ。その為に防衛手段も準備していた」

「それだと、僕が助けに入ったのは無駄だったって事?」

「そんな事は無い。私がどんなに嬉しかったか、お前にも分かるまい」


 僕が聞いてた作戦は、『すっぽんぽんマークスリー』を使って、矢場って議員を裸にする事。それは、国会で起こす事。『すっぽんぽんマークスリー』は時間差で効果を現すから、秘書として潜入して議員に飲ませる事くらいだった。


 でも、僕が予定外だって思った姉への襲撃や、例の秘書さんが企んでた姉さん抹殺計画とか、そんなのは織り込み済みだったんだね。

 そういう意味では、養父もスラムのボスって人も、それこそ例の秘書って人も、姉の手のひらの上で踊らされていただけじゃないかな?


 姉って全部見通してたりするの? それは、ちょっと怖いね。天才ってより、何か人間より上位の存在って気がするよ。もしかして、宇宙人に憑依されてたりしない? いや、それは絶対に無いな。だって、姉は小さい頃からこんな感じだし。


 僕は小さかったから薄っすらとしか覚えてないけど、姉は子供ながらにスラムの人たちを手玉に取ってたらしいよ。凄いよね。


「でもさ、秘書さんを危険な場所に行かせる必要は無かったんじゃない?」

「よく言うだろ? 目から目ヤニが、歯からハニワがって」

「言わないよ! どこの格言なの!」

「兎に角、お前は普通に捕まえれば良かったと思うのか?」

「そうだよ。当たり前じゃない」

「はぁ。お前は浅はかだな……」

「どう言う事?」

「秘書が捕まったら、その口から私の名前が出るだろう」

「そうしたら、一連の事件に姉さんが関与してるってバレる?」

「宮司じゃなくても、そうおもうだろうな」

「そうしたら、アリバイ作りも無駄になっちゃうね」

「無駄とは言わんが……。根掘り葉掘り捜査されるのがオチだろうな」


 養父の話では、危険な場所に行かされたのは例の秘書さんだけで、家族は今まで通りに暮らしてるらしい。急に家族の大黒柱が行方不明になったんだから、大変な思いはしてるんだろうけど、その辺は組織がバックアップするんだって。悪いのは例の秘書さんだけだからね。


 それから、姉がリストアップした五名は、全員議員辞職する事になったらしい。ちゃんと起訴もされたみたいだよ。


 でもね。矢場って議員に関しては、ギリギリのタイミングだったみたいだね。だって、色んな所に根回ししてたらしいし。国会での激しいやり取りは単なる茶番で、何回かやり合ったらそれも終わりだったらしいよ。当の議員は、秘書の誰かを犠牲にして自分は逃げる気でいたらしい。


 怖いよね。事前に証拠をネットで公開してたのに、まんまと逃げようとしてたんだから。こういう闇献金的な件で議員が不起訴になる事は、ニュースで見た事が有るけどね。裏で何らかの力が働いてたって考えると、政治の世界は本当に怖いと思うよ。


 勿論、こういう情報を簡単に取って来る小野寺さんも怖いけどね。


「ジェニファー。それから彼等はどうなっている?」

「五人全てが政治資金規正法の抵触行為について、身に覚えがないと証言しているようです」

「まぁ、それでも無罪とはいかんだろう?」

「そうでしょうね。証拠が揃ってますから」

「それにしても不思議だな。高野・東島元議員については、これから仕掛ける予定だったのに」

「えぇ。あっさり辞職を決めたようですし。ただ、それ以上に不思議な事が……」

「不思議とは?」

「覚えていないと証言している姿が、一様に嘘偽りではないと思えるのです」

「そうなのか?」

「それだけではありません。皆、人格が変わった様に思われます」

「気のせいでは無いのか?」

「それなら良いのですが」


 あれ? 二人共おかしな事を言ってない? だって、宇宙人が取り付いてたんでしょ? その間に宇宙人が犯した過ちを、本人が覚えてるはずがないじゃない。そうでしょ?

 それに、人格が変わったってのも当然じゃない? だって、宇宙人の憑依が解けて元の人格に戻ったんでしょ? それなら、人格が変わった様にも見えるんじゃない?


「ねえ、二人共。宇宙人の事を忘れてない?」

「……あぁ。そ、うだったな。海、そうだよ。宇宙人、宇宙人の憑依が解けたんだ」

「仰る通りです、海様。宇宙人の事を失念しておりました」

「全く! 重要な事なんでしょ? 組織の目的は宇宙人の支配から世界を救う事!」

「そうだ! よく覚えていたな、感心だ! 私は、敢えてお前を試したのだ!」

「本当かなぁ?」

「本当ですよ、海様」

「小野寺さんが言うと、嘘くさく感じるんだよなぁ」

「まさか! 私が海様に嘘をつくとでも?」

「つくじゃない! 騙すじゃない!」


 姉と小野寺さんが僕をからかうのは、今に始まった事じゃないから。今のもそうなのかな? まったく、止めて欲しいんだけどね。


 それより、姉の奇行は今後も続くのかな? 出来れば平和的な解決策が無いのかな? 宇宙人の事も、日本の状況もね。


 だってそうでしょ? 地上の人たちは、それこそ不満だらけだと思うよ。僕は、スラムから上に来たから、今の生活には不満は無いけどさ。

 上に住んでる人だって、この状況に違和感を感じてる人はいっぱい居ると思うよ。少なくとも、ネット上では大騒ぎだった訳だし。


 姉はネットの騒ぎを、『似非正義の旗の下に集う者達が、非道を行った議員達を追及する、壮絶な足の引っ張り合い』と言ってたけど、議員達が起訴されたらぱったりと止んだ。

 それは、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』ってやつなのか、議員が起訴されて満足したのか、どっちなのかは分からないけど。やっぱり不満が有るから、ネットで盛り上がったんだと思うよ。


 組織がそんな人達を巻き込んで、政府も無視できない大きなムーブメントを起こせば、多少は現状を変える事が出来るかも知れないしね。そうしたら、姉も犯罪紛いの事をしなくても良くなるだろうしね。


 まぁ、宇宙人の事は別に対策を立てないといけないんだろうけどさ。後は、宮司って警察の人もだね。


 両方、面倒だよね。宮司さんって人は、直接家に乗り込んできたらしいよ。僕は学校だったし、姉と養父母は会社だったし。小野寺さんが上手く対応してくれたらしいよ。結構しつこいよね。でも、仕方ないか。犯人は姉なんだし。組織もそれに深く関わってるんだし。何なら僕も作戦の詳細を聞いてるんだし。


 全員、罪を背負ってるんだから一蓮托生かな。捕まる時は一緒だよ。


 後は宇宙人かな。憑依は解けた可能性は高いんだろうけど、それならそれで次のターゲットに憑依する可能性が有るんだろうし。いたちごっこかも知れないよね。

 それでも、姉が世界の為に戦うっていうなら、僕も協力するよ。だって、世界を守る為だもんね。


 それから姉は、ネットでこう締めたんだ。「これは裸の王様大作戦! 国民達よ、この世に悪がのさばる限り我々は再び現れる。作戦は再び行われる。忘れるな! 恐れよ! 悪を許すな! 善をなせ! 我々は世を正しき方向へ導く」ってね。

 

 勿論、暴露したアカウントと同じく捨てアカだよ。でも、分かる人には分かるんだろうね。色んな暴露を繰り返した張本人が再びネットに現れたってね。

 

 このメッセージが誰かに届くと良いな。そして、本当の意味で変わっていけると良いな。僕はそう願うよ。


 第二章へ続く。

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