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誰か僕の姉さんを止めて下さい  作者: 東郷 珠(サークル珠道)
裸の王様大作戦

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第二十二話 宇宙人の反撃

 さあ、困ったぞ。我々の任務は更に困難になった。地球の実態を把握するだけなら、大して時間はかからない。しかし、他の星から来た連中の事まで探るとなれば、話は別だ。

 考えてもみろ、『円盤に乗ってやって来る様な、遅れた文明の連中』が相手なら、気にするまでもない。相手は我々と同じ、高次元生命体なのだ。何処に潜んでいるか、誰の体に潜っているか、全くわからないのだ。


 同胞は、米国の大統領と日本の首相に憑依していると考えている様だ。たしかに、ここ数年の世界の変貌を見れば、同胞の推理は間違いないのかも知れない。しかし、その二国では済むまい。既に、地球は支配されかけていると考えてもおかしくはない。


 この状況を、他の国に派遣された同胞は理解しているのだろうか? どこまで侵略が進んでいるのだろうか? そして、我々はそれに対してどうすべきなのか?


「余計な事は考えるな! 我々の目的はあくまでも諜報だ」

「待て待て! 問題をはき違えるな、同胞よ!」


 同胞の言いたいことは分かっている。我々はあくまでも調査し報告する事だ。決定は本隊が行う。本隊の指示で地球から撤退するなら、それは仕方のない事なんだ。


 でも、よく考えろ。私がここに来たのは、そんなマクロな事ではない、切迫した事態に対応するためだ。それは、道明寺翠嵐だ。奴の脅威から同胞を守るために、ここへ足を運んだんだ。


「所で同胞よ。君は巷に流れる情報通り、裏金作りを行ったのか?」

「なんだ、そんな事か?」

「そんな事ではない! あれだけの証拠が世に出回ってるのだぞ!」

「その程度なら、幾らでも誤魔化せる」

「誤魔化しようが有るのか? 国会でも追及されるぞ!」

「私は次期幹事長だぞ! 党が幾らでも守る」 

「そんな訳が有るか! 事と次第では警察も動かざるを得ない!」

「それで、お前が来たという訳か? 俺を逮捕する為にか?」

「そうならない為に、忠告に来たんだ!」

「それは、例の女か?」

「あぁ、そうだ」

「だったら、気にする事はない。邪魔なら始末してしまえばいい」

「始末? 始末と言ったか?」

「あぁ。ただの人間だろ? 幾らでも手は有る」

「……それを警察の私に言うのか?」

「はぁ。お前は憑依前の人格に左右されるようだな」


 そんな事は無い。私は任務を忠実にこなしているだけだ。宮司の人格には左右されていない。あんな弱気で何もできない愚図なんかの人格にはな。

 だってそうだろ。宮司なら、この窮地でも考え込んで一歩も踏み出せない。私は違う。今もこうやって行動を起こしている。同胞の下に駆けつけ、危機を訴えている。


 ただな、同胞よ。


 君が国会議員足らんとしている様に、私は特別捜査官なのだ。管轄を超えて事件を追う権限を持つ、特別な刑事なんだ。

 如何に道明寺翠嵐が危険な存在であっても、始末するなんて事は絶対に出来ないし、やってはならない事だ。


 我々本来の任務に従ったとしても、『現地の生物をみだらに傷つけてはならない』のが決まりだ。元の人格に毒されているのはどっちだ? 同胞よ!


「まぁ、その女の始末は任せておけ!」

「待て! それは絶対に駄目だ!」

「しかし、その女がいると任務に支障を来すのだろう?」

「忘れたか? 我々は、現地人を傷つける資格を有していない」

「だからお前は馬鹿だと言うんだ。上に報告しなければ良いだけの事だ。こんな些末な事はどの部隊でもやっている」


 どこの部隊でもやっている? だから、我々もやっても良い? そんな事は有るか! ふざけるな! 


 私は腹を立てているのだぞ! これまで大事な事を私に隠していたのをな! 私が現場リーダーで無かったのは、今は置いといてもだ。それでも、早く連絡をよこすべきだったはずだ。


 一致団結して、道明寺翠嵐に対抗していたら、今頃は逮捕出来ていたかも知れないのだぞ! それが真っ当な方法じゃないのか?


「冗談じゃない! 道明寺翠嵐に手は出させない! 奴は私が逮捕する!」

「それなら、早くしたまえ!」

「わかっているさ!」

「同胞を二人も失ったのだぞ。まぁ、今頃は他の人間に憑依しているだろうがな」

「二人の行方を知っているのか?」

「今は分からん。いずれ向こうから連絡が来るだろう」

「そうなったら、今度こそ教えてくれ!」

「何故だ? さっきも言っただろ? お前は遊撃隊なんだとな」

「それと私を独りにさせるのとは、別の問題だろ!」

「違わないな。お前とは話にならん」

「それはこっちの台詞だ!」


 吐き捨てる様にして、私は席を立った。そして、勢いよくドアを開けて事務所を後にした。こんなにも話が通じない相手だと思わなかった。

 もっと理解力が有って、包容力の有る奴だと思っていたのに。頼りになる奴だと思っていたのに。凄く残念で仕方がない。


 でも――、そうだな。同胞が動き出す前に手を打たないとならないな。何が何でも、道明寺翠嵐の尻尾を掴んで、逮捕まで持って行かないと。


 ☆☆☆


「はぁ、帰ったか。やはり使えない奴だ。隊長の言った通りだ。これまで通り、奴には大事な情報を渡すべきではないな」


 でも、同胞の言い分も確かだな。二人も憑依を解いて、何処かに姿をくらましたのだからな。そんな事が出来る地球人は、見た事がない。私の計画が破綻しかけてるのも、道明寺翠嵐とやらのせいだとしたら、何かしらの手を打たねばなるまい。


「おい!」

「何ですか先生?」

「やってもらいたい事が有る」

「さっきの警察官の事ですか?」

「違う。道明寺翠嵐という女を探せ」

「はい。しかし、先生。その女が何か?」

「それは知らなくていい。見つかったら居場所を教えろ」

「畏まりました。直ぐに探します」


 これで良い。居場所を見つけさえすれば、いつでも始末が出来る。始末をしなくても、恐怖を与える事は簡単だ。例えば、身内をさらうとかな。


 今は、誰とも分からない女に振り回されている場合ではない。先ずは国会を乗り切る事、そして幹事長の席に座る事。そうしなければ、私の目的は果たせん。

 既に米国と日本は、他の星の奴らの手中に落ちたも同然だ。今、奴らを排除しなければ、本隊が到着したとて何も出来はしまい。


 奴らを排除できるのは、私と高野・東島の二人に憑依した同胞だけだ。三人では少々心許ないが、仕方があるまい。

 この為に、わざわざ首相と同じ党の議員に憑依したのだ。目的は必ず果たす。失われた我が祖国の為にもな。

 

 それでは、高野と東島に連絡を入れるか。一応、警告もしておこう。最悪の場合も想定しておかねばならんしな。

 この状況だ。直接会って話をするのはリスクが伴う。だから、そこは慎重にだ。問題ない、宮司とかいう妙な女に同調させられている同胞と、二人は全く違う。信用できるし使える奴らだ。


 さて、反撃開始といこうか。地球人類よ!

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