運動&お風呂ダイエット
「ダイエットといえば運動よね!」
次に私は屋外の庭園に出て、身体を動かすことにした。
私が住んでいる家は、子爵家の領地にあり田舎ならではの広大な庭園を有している。
色とりどり花が咲き、庭師によってそれらの調和が完璧に保たれている。
その庭園の真ん中に立って私は__筋トレを開始していた。運動用の服がないため乗馬で使用しているズボンを着て無心でスクワットをする。
運動にはいわゆる筋トレのような無酸素運動とランニングのような有酸素運動がある。ダイエットに効果的な運動のやり方は、無酸素運動で脂肪を分解して有酸素運動で燃焼するというものだ。
有酸素運動を20分以上続けると脂肪が燃焼されると言われる。そして有酸素運動として最も効果的と言われるのが、
「縄跳び!」
スクワットなど筋トレを終えて有酸素運動に入った。縄跳びの縄がないのでエア縄跳びをする。
周りからはさぞ変に映っていることだろう。庭園の真ん中でずっとジャンプしている人がいるのだから。
だが、縄跳びは陸上で唯一全身の筋肉を使うことができる運動なのだ。故に実にダイエット向きである。
「今日はっ、30分、飛び続けるぞっ!」
運動に慣れていない身体で息が切れながらも、根気で飛ぶ。この原石を磨くためには努力を惜しむつもりは毛頭ない。
(絶対に前世からの憧れの女の子になってやる…!)
私は飛び続けるのだった。
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コンコン。
運動を終えて部屋に戻ったら控えめなノックが聞こえてきた。
扉を開けて入ってきたのはリサだった。
全く、両親は娘が二階から落ちたっていうのにとんだ無関心ね。
まあ、お陰でこうやって自由に過ごせているのだけれど。
そんなふうに一人考えていたら、リサが戸惑ったように声をかけてきた。
「リリーお嬢様。お怪我をなさってから何か心境に変化がございましたでしょうか。」
リサが戸惑うのも無理はない。
なにせいきなり前世の記憶が蘇って人格が変わって、料理やら運動やらやり始めたのだから。
リリーの記憶を頼りにすると、今私は12歳。
リリーとしての記憶はもちろん鮮明にあるのだが、なにせ前世何十年と日本で過ごしてきた記憶のほうが強くて、人格としては完全にそっちになっている。
記憶が戻る前のリリーは、一言でいうとガサツ。
貴族にありがちな横柄な態度ではなかったけれど、何に対しても扱いが雑でそれで使用人にも恐れられていたみたい。
私の理想の女の子はそんな人ではないし、そういうのは得意じゃない。しかも、私の目標※この原石を徹底的に磨き上げることを達成するには周囲の協力は必要不可欠。
「まずは信頼回復からね。」
そう小さくつぶやくとリサに話しかけるため深呼吸する。
「そう固くならないで。気にしてくれてありがとう。今まで私、いろいろなことに雑だったと思うの。自分にもだけど、何よりリサたちに。」
そういうとリサは焦って
「そんなことはございません!リリーお嬢様はきっぱりとしてらっしゃるところが美点だと思っております。」
と返す。ガサツなリリーにも一生懸命お世話をしてくれていたし、本当にいい侍女だ。
「ふふっ。そんなことないけど、嬉しい。これからはお嬢様なんていいから、リリーと読んで。私、自分のこともっと気を使おうと思うの、協力してくれる?」
するとリサは大きく頷いて
「もちろんです!リリー様!」
と笑顔で答えたのだった。
「私、自分磨きのためにダイエットをしたいと思うの。熱めのお湯を用意してくれない?」
「熱めのお湯ですか?かしこまりました。」
そう言ってリリーはテキパキと準備を進めてくれた。
「わあ、きれい!」
リサはお湯だけでなく完璧な準備をしてくれたようで、金の縁で彩られたバスタブは乳白色の液体で満たされており、中には真っ赤なバラの花びらが浮かべられていた。
「リリー様の自分磨き、存分に付き合わせていただきたいと思います。前々から侍女としてリリー様を磨き上げたいと思っておりました。こちら、美肌効果のあるお湯でございます。
こちらで存分にマッサージさせていただきます。」
そういうリサの目は爛々と輝いており、私は同士を見つけた!とばかりにリサの手を掴む。
「心強いわリサ!!一緒に天下を取りましょう!」
自分では何を言ってるのかわからなくなりながらも初めての友のような存在に私の心は踊っていた。
「それにしてもダイエットにお風呂ですか…?なかなか聞いたことがありません。」
リサは首を傾けながらそう言う。
そうなのか。この世界ではお風呂ダイエットは一般的ではないらしい。
「お風呂に入ることで汗をかいて、脂肪を燃焼するのよ。それに、血液の循環も良くなってお肌もきれいになるの。」
3・3・3入浴法というものがあって、3分間湯船に浸かり、3分間外に出ることを3回繰り返すものがある。
この入浴法では一回につき300キロカロリー消費できるので1ヶ月続けることで食生活を変えずとも1.5kgほど落とすことができる。
リサはなるほど、と言って湯船の中の私の身体にマッサージを開始してくれた。
「いたたたたたたた」
その後の私の安否は定かではない………
読んでくださってありがとうございました!