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食生活を改善しよう!

コンコン、と控えめなノックが聞こえる。

「どうぞ」

さっきの茶髪の美人、もとい専属侍女のリサだ。

「リリーお嬢様、お体の調子は良かったのですか?お医者様もいらっしゃいますが。」

「リサ、ありがとう。もう心配ないわ。」


リサは紅茶の準備をしながらこちらに問う。

「お食事はどうなさいますか。」

私は少し考えて、

「シェフに直接メニューの要望を伝えるわ。」

と言った。

リサは驚いた顔をしながらも、子爵家の調理室に案内してくれた。


この中世ヨーロッパのような世界の貴族の人々はリリーだけでなく、ふくよかな人が多い。それはこってりとした油料理が高級で、高級=美味しいとされている貴族社会で好んで食べられていたからだ。

比較的広い調理室には、豚、牛、馬など様々な動物からとられた油の匂いが充満していた。


毎日油、油、油。それは太るし、肌に悪いに決まっている。

「そうと決まれば、まず食生活の改善からよね!」

この体、いくら絶世の美女の原石といえど磨きがいしかない。

しっかりとした食事制限、適度な運動から美女は作られるのだ! 


そうして料理長であるジェフに向き合った。


「これからの料理について話し合いたいの。簡単に言うとね、栄養バランスのとれたヘルシーなメニューに変更して欲しい!」


ダイエットを成功させるには食事制限が必要不可欠だ。脂質と糖質を抑えてビタミンやタンパク質を多く摂る。消化を良くするために食物繊維も取り入れる。


と言っても、この世界にビタミンとか栄養素の概念があるかは怪しい。

「野菜を多く摂ることで、代謝が活性化されるし消化も良くなるの。逆に油の多い食材は控えて、蒸すだとか調理法も工夫することでヘルシーなメニューになるわ。」


「ですが、お貴族様の料理は油を使って丁寧に揚げたり焼いたりするのが普通です。我々も子爵家で出す料理に自信を持っております。蒸し料理など、味がついていないただの食材ですよ。」


恐る恐るといった感じに料理長のジェフは答えた。

なるほど。これはダイエットメニューの味の意識を変える必要があるらしい。


「じゃあ、私に今日のディナーを作らせて。」

ジェフは驚いたようにこちらを見つめる。

「なりません、料理は我々の仕事。とてもリリー様にできるようなものではありません。」

「私の要望するメニューが美味しいことを証明してみせる。さあ作るわね。」

私は慌てるジェフの横で調理を始めた。


前世から、ヘルシーな料理やダイエットメニューは美味しくない!というような偏見があった。今が前世でさんざん研究した料理の腕を見せるときだ。

まずは___若鶏を蒸す。鶏肉にはタンパク質とビタミンが多く含まれておりダイエット向きの食材でもある。低温でじっくり蒸すことで鶏肉の持っている旨味を最大限に活かすことができる。次ににんにくと醤油、酢、砂糖を入れ油淋鶏ソースを作る。

これで若鶏の油淋鶏ソース和えの完成!


次に春野菜のスープ。野菜は色ごとに摂れる栄養素が大体決まっているので、カラフルな野菜を取り揃えると栄養がバランス良く摂れる。味付けは薄めにして野菜の甘味を引き出すためひと煮立ちさせる。


「よし!若鶏の油淋鶏ソース和えと春野菜のスープの完成!食べてみて。」

料理長のジェフと侍女のリサが匂いにつられて、恐る恐ると完成品を口に運ぶ。


「…美味しい!蒸し料理なのに全然ぱさついてない。ジューシーで油淋鶏ソースによくあっている。」とジェフ。

「この春野菜のスープ、野菜の旨味が引き出されていて美味しい。」とリサ。

低温調理にしたり、味を少し変える一工夫があれば、ダイエットメニューだって美味しくなるのだ。


「これからはこんなメニューも良くない?」とジェフに問う。

「とても美味しかったです、先ほどは失礼しました。料理の新たな道が見えてきた気がします。」と目を輝かせてくるジェフはなんだか可愛い。ダイエットメニューのレシピを書いて渡すと、大きな体躯を丸めてお礼を言ってくれた、可愛い。


「これで食生活は改善できたわね!」

まだまだやることはたくさんある。異世界生活は始まったばかりだ。


読んでくださってありがとうございました!

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