プロローグ
ゴツン。
あっ、落ちるーーーー。
「お嬢様!!」
メイドのそう叫ぶ声を聞きながら私は二階から落下したのだった。
パチリ。
目を開けると、どこぞの美術館?というような天使が描かれた天井があった。
体を起こしてあたりを見渡すと、中世ヨーロッパのような調度品の数々。
「リリーお嬢様!目を覚まされたのですね」
茶髪の彫りの深い美人がこちらを見て言った。
リリー?あ、そうか。
私はすべてを思い出した。結果、また気を失った。
目を覚ますと、どこぞの美術館というような天使が描かれている天井がまた目に入った。
とりあえず、体を起こして今の状況を整理することにした。
「つまり、二階から落ちた衝撃で前世の記憶を思い出した、っと。」
前世は貧乏で地味なOLだった。
ラノベを読んで、そこに描かれているキラキラした女の子たちに憧れていたけれど、現実は厳しく、生活はカツカツだった。
ライトノベルを読むことが趣味だったけれど、まさか自分が俗に言う異世界転生を経験するなんて。
そう思って部屋の中にある大きな鏡の前に立った。背の高い、12歳くらいの少女がこちらを見つめて立っていた。
リリー・ラナ。ラナ子爵家の長女。
髪や肌は荒れて体もふくよかだけれど、蜂蜜色の瞳は髪と同じ白銀の睫毛に縁取られて、キラキラと輝いている。
すっと通った鼻筋に薄い桃色の唇は完璧な位置に配置されていた。
「……間違いない。この子、原石だ。」
前世では、ライトノベルで活躍するキラキラした女の子に憧れながら自分のことについては諦めていた。
しかし、今ならば。
「憧れの女の子になれるかもしれない…!」
そうして前世の記憶を思い出して数分後、今世の目標がたてられるのであった。
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