戯れる人生
完全に不意打ちで掴まれたせいでなんとも凄い情けない声が飛び出した。
背筋が伸び切りびっくりした猫のように飛び跳ねる。
「な、何するんですかいやほんとに!」
思わず光さんの方に振り向きなぜこんなことをしたか問いただす。
「エイナさん細いしスタイルも凄まじいですが出来過ぎじゃ無いですか?」
何やらちょっと真剣な表情で体の隅々まで見てくる光さんは首をひねりつつ何か考えている。
鏡に映る姿は確かにシミ一つ、傷一つない整った体ではあるけれど光さんの方が綺麗な体だと思う。
「そうですか?光さんもこのくらい綺麗ですし出来過ぎじゃないと思いますけど……」
「ああ、そういうことですか、それなら納得です。」
何かはっとした光さんはうんと頷き何故かおれのほっぺをむにむにのばし始めた。
「洗ってて思いましたがこのもちもちすべすべつるつるの肌触りにこのボディラインはありえないんですよ、魔法でもない限り。」
「つまり?」
「無意識にスタイルと美容を綺麗にする魔法を使っている事になりますね。」
顔を撫でながら結論を話す光さん、おれのことずっと触っているが飽きないもだろうか。
「そんなことあるんですか?」
無意識に魔法を行使する。言われてもいまいち理解出来ない感覚であり、ぴんとこない。
「普通はありえないですね、そんなことになるのはあまりに魔法に近い人だけです、鍛えたらできたりするようなものではなく生まれ持った天賦の才とでも言うべきものです。」
どうやら凄い珍しいことらしいがそんなことよりナチュラルに髪の毛を梳くように指を通してくる方が気になる。
「魔法に愛されている証明でもあるので悪いことでは無いですよ。」
「あの。」
「何でしょうか。」
「なんで触れているんですか?」
さっきからずっとおれの体に触れながら話すのか甚だ疑問である。
「だって気持ちいいじゃないですか、こんな心地よい気持ちになるならば触らない方が失礼でしょう。」
何が失礼なのだろうか、逆におれに対して失礼なきがするが口には出せなかった。
「エイナさんにはこの世の全ての幸福が詰まってますね、やはり人生はこの時の為にあったんです。」
「そんなこと無いですよ!?」
言い過ぎである、人生の生まれた意味とか、幸福とか絶対こんなところにない、あってたまるか。
「まあちょっと大げさに言い過ぎましたが触れるだけでここまで惹かれるのは多分エイナさんが段違いに魔法に愛されているのと、それと私の魔法の親和性がいいのが原因ですかね。」
「親和性あるんですか。」
「ありますとも、光と影ならばあって然るべきです。」
どうやらあるらしい、魔法自体に相性があるのは知っていたが光と影は相性がいいのか。
「それにエイナさんも私と同じ……いえ、確証のない推測ですしあってたとしても喋れないですね。」
気になることを口走る光さんは未だほっぺたをつついてくる。何ともしまらない雰囲気だ。
「まあ私達は特別な事情があっての仲間と言うことで、今話せることはあまりないですけどどうか信用してほしいです。」
「大丈夫です、話せないことがあっても光さんに助けてもらったのでそこは信用します。」
困り顔でお願いされても元々光さんのことは全面的に信頼しているので気にしないでほしい。
「ありがとうございます、いい子ですねエイナさんは。」
感謝されるいわれもないのだが、こう面を向かってハッキリ言われると恥ずかしい、照れてしまう。
ちゃんと光さんと顔をあわせられているだろうか。
「いい子なのでこのまま全部洗われてくれますよね?」
あれ、なんか雲行きが怪しくなってきた。
おれは顔の血の気が引いていくのを感じた。
「それはもうよくないですか……ほら、気持ちだけで十分ですよ。」
向かいの光さんを刺激しないようにそっと風呂椅子を立つ。
「逃しませんよ?」
逃げられなかった。
がっしりと抱きつくように捕まったおれはもはや捕食を待つのみである絶対絶命の小動物であった。
それに光さんの豊かな双丘、つまり胸が、胸が当たってダイレクトな感触がああああ。
「髪も、体も、全部私の為に洗われてください。」
「ぴっ!」
囁くように耳元で息がかかるほどの至近距離で呟かれた言葉は緩やかな死刑宣告であり、極楽に落とされる審判であった。
「先ず髪からじっくりしましょうか。」
いつの間にか手にかけられたシャワーから温い流水がある程度長めの髪を伝い流れ落ちる。
じっとりと水を含んだ髪の重みを感じつつすかさず泡立てられたシャンプーを頭に乗せられた。
「エイナさんの髪は凄いですよ、ここまで艶のある綺麗な濡羽色はなかなかお目にかかれません。」
優し手付きでそっと寄り添うように髪の先まで丁寧に洗われる。
ずっとしてきてもらったように慣れたようにこなしていく。
泡がまた濯がれたところには濡羽色が煌めく色を覗かせる。
「じゃあ次は体の隅々までですね。」
「お手柔らかにお願いします……」
抵抗は無意味なのでせめて手加減してほしいです。
「じゃあまずは、ここですかね?」
「ぴゅい!」
喉を擽るように触り首のまわりをなぞるように洗っていく光さん、やらしい触り方でしか無い!
「まだまだここからですよ?」
「みゅあああああ!」
ここからは思い出したく無いおれの尊厳が死ぬ話だ。
「満足しました。」
満足げに立つ光さんと風呂に口まで浸かってこもるおれだけが残された。
ぎりぎりで申し訳ない
分割して半分を突貫で書きました
ちょっとした理由でヒカリちゃんからの好感度激高状態普段はここまでじゃない
愛さえあれば性別など関係ない
短い一話を明日更新したい
ストック?ないよ
更新は明日