特殊魔法案件 魔法氾濫
「エイナさん!」
ヒカリに背を向けて走り出したエイナにたまらず声を出して手を伸ばして追いかける瞬間にそれは起こった。
「っ!」
確かに見えていたはずの姿が、いない、夢か幻でも見ていたように消えてしまったエイナに息が詰まるヒカリ。
あり得ない、どうして、そんな思考がずっと脳によぎり思考が纏まらない。
「魔法ですか……!」
数秒の混乱を抑えながらも一つの結論を導き出す、魔法少女として現実であり得ないことはないとヒカリは知っている。存在の消失まで考えて……最悪の過程は無駄と思い希望のある予想を立てる。
「瞬間移動ですね……」
最もあり得る過程として自身も良く知る魔法現象に当たりをつける、根拠自体は少しある推測だ。強力な魔法はそれだけで嫌な予感がする、魔法で物理的な存在の消去というのはあり得るがここまで魔法の存在を感知出来ないなら可能性は低い、だが物体の移動させる魔法はポピュラーで基本的な魔法の一つで感知し辛いことを根拠にそう結論付けた。
「にしてもですが。」
冷静さを取り戻し一気に思考を加速させるヒカリ、突出過ぎる展開に理由を探り始めて気付く、エイナのいた場所に一つ手紙が落ちている。
「これは……」
無地の紙に簡素な封がしてあるとてつもなく怪しげな手紙を躊躇なく取り封をきるヒカリ、そこに書かれていたものは短いメッセージだった。
[すごい魔法をみせます 招待のマジルガより]
都合の考えない身勝手な置き手紙に無言でヒカリは手紙を消し去り小さく息を吐く。
「嫌なことしてくれますね。」
苦虫を噛み潰したような顔をして愚痴る。
「よりによって招待のマジルガとは。」
エイナをこの場から拐った犯人、招待のマジルガ。
マジルガの中でも希少な、等級未区分という特殊なマジルガである。
通常マジルガは危険性で等級が分けられているが稀に等級に振りわけられていないマジルガがいる。
理由は詳細データ不足だったり、状況によって被害規模がまるで違いすぎるなどあるが招待のマジルガ純粋な運による被害の決定ゆえに未区分だ。
招待のマジルガ本体はヒカリが手に取った手紙そのものであり、少し魔法を込めれば消えるほど脆弱な存在であるが本領はそこではない。
本体が出てきた時点で招待のマジルガは行動を終えている。
招待のマジルガは選んだ人を一定の範囲内で一番強力な魔法に飛ばす、それだけが本懐だ。
それでどこが運によって被害が決まるというと問答無用で転移させるが、行き先は魔法少女かマジルガか、あるいは別の魔法かに飛ばされるかが不明瞭だからだ。
「無事だと良いですが……」
エイナの行先が何処かの魔法少女の元であることを願うヒカリは少し思案してある方向へ目をやる。
ヒカリは魔法少女として人並み外れた直感が備わっている、魔法少女となる前は普通だったのに魔法少女になると超人的な感覚がついてくることは珍しくないがヒカリのソレは群を抜いている。
「……でかいですね。」
しっかりと眉をひそめヒカリが予感したのは強大な魔法だった。
任意で発動できるとまでは言わないがここぞという時に働く頼もしい直感に身を任せ走り出す。
たとえ本能が危険だと報せる程の悪寒がしようとも。
「悪い予感というものは、どうしてこうも当たることが多いのでしょうかね……?」
魔法少女になって日が浅いものの外れたためしのない悪い予感にどうか外れていますようにと祈る。
「っ本当にこういうのは当たってほしくないですね!」
だが無常にも祈りは届かず、遥か先に薄暗い夜を塗りつぶすように輝くように反転した宙を思わせる混沌とした魔法が天へ立ち昇り、遅れて轟音が響き渡る。
この先待ち受けているのは特殊魔法案件と呼ばれる一般的なマジルガを逸脱した魔法による事件、後に魔法氾濫と称される案件にヒカリはその危険性を理解しながら足を加速させる。
「エイナさんがあそこに居て大丈夫かは……信じるしかないですか。」
エイナが辺りで一番強力な魔法に招待されたのなら間違いなくあそこだという苦しい現実。
ヒカリは自分と同じ以上の実力があるとエイナのことを評価しているが、それでもあの暴発したら魔法をまともに食らえば致命傷だと思う。
何もわからないが今は無事で有ることを信じるのみ。
「私は、魔法少女の不屈さを誰より知っているはずです。」
自分に言い聞かせるようにじわじわと塞がっている腹の傷を撫で血に触る。
ズキズキと響く痛みが生きていることを感じさせてくれる、普通の人間ならば致命傷だが、魔法少女なら自然治癒の範囲だ。
「それでも!怪我の一つもしてほしくはないですが!」
傷も、痛みも、すべてを糧にしてヒカリはキラキラと輝く脚でズドンとコンクリートを踏み抜き街を跳ぶ。
無意識的な、セーフティーを外した魔法の行使、反動で肉が裂け骨にひびが入ろうとも構わずにエイナがいるであろう場所に向かう。
「最悪の結果だけは避けなければいけません!」
一人では解決出来ないであろう待ち受ける困難に、せめてエイナを助けることを選んだヒカリは一刻も早く着くために全て振り絞る。
本気の跳躍は十階建てのマンションの高さに到達した辺りで高度が落ち着き、魔法を一つ行使する。
一瞬、それで景色が塗り変わる。
ヒカリお得意の光速移動、移動出来るのは一つだけ設定されたウェイポイントか視界の範囲内と制約はあるが高さを稼げば十数キロは移動が可能だ。
「どうか謝るチャンスを下さいエイナさん。」
エイナに不用意な事を言ってしまったことを恥じるヒカリは謝罪を望む。
エイナは魔法少女になったばかりで死にかけたことが無いからまだ魔法少女が怪我をするという軽さを知らない事をヒカリは考えつかなかった。
魔法少女は骨折も、外傷も再生しやすい怪我なのだ。
腹に風穴空いたり、四肢の欠損でも無ければ自然治癒の範囲という事が実感しているとどうも自分の怪我を軽んじる魔法少女は多い。
エイナを抱えて傀儡のマジルガを追っていた時より数段速いスピードで、夜空に閃光の軌跡を描きながら自傷覚悟でヒカリは未曾有の危機へと加速して行く。
書いたことのない地の文書くのに一日でできる訳ないんだよね
地の文と光ちゃんのセリフバランス分からない
ちなみに二等星の認定条件は特殊魔法案件の単独解決です
一等星の認定条件はおいおい
更新はなるはや
次はエイナ視点




