己の価値
短い接続話
「大丈夫です……」
血まみれなれど優雅に歩を進める光さんが優しく手を差し伸べてくる。
優しくて、明るくて、よく笑うおれの知っている光さんの顔で、苛烈で、冷徹で、無情なあの顔は幻なのかと疑ってしまう。
「怪我してるのですから無理せず手当てしましょう。」
血みどろの手のひらを見ておれは手を取れなかった、おれよりもずっと傷が深いのに何も気にせずにただおれのことをじっと見ている。
「光さんの方が重症ですよね!?なんでそんな平気な顔するんですか!」
全身に滲む血の跡に見るだけで痛ましい腹に空いた刺し傷があるというのに聖女ように変わりなくただ在るが儘に立つ姿は、人がしていい在り方ではないだろう。
今まで見えて来なかった光さんの異常性が際立つ、日常では分からないこの一面ははたして本性なのか。
「この程度なら致命傷ではないです、ほっとけば治りますよ。」
「そんなことはないです!普通の人は死ねますよソレ!」
絶対に笑っていられてる状態ではないのに何かおかしいのかずっと笑う光さん。
「しかし私は魔法少女です、生物として根本的に違いますよ。」
そんなことは知っている、物理法則だけでなく体に魔法が根付いたおれたちは物理を無視して強くなっているのだから。
「それでも痛むでしょうが、その痛みは感じないんですか?」
おれには問いかけることしか出来ないが光さんには自分を軽視しないで欲しい。
「痛みますよ、ですがエイナさんの心配に勝るものではないです。」
危険を訴える痛みより他人を優先出来る異常な理性がある、それだけなのにそこだけが普通の人と決定的に違う。
「良いですか光さん、自分より軽症の人を心配してどうするんですか。命あっての賜物ですよ、まず自分をどうにかして下さい!」
声がどんどん荒くなる、おれと光さんの価値観が違うことが全てだ。
おれはマジルガに殺されてなんの因果か生き返った、だからおれは生きることが最優先だ。生きなければ全てが無価値になってしまう、それだけは避けなければならない。
「エイナさんに万が一があったら困るから心配しますよ。」
困ったように笑う光さんはおれには理解出来ない。
「それは自分より大事なものですか?」
「ええ、エイナさんは特別ですよ?」
聞きたくないと分かっていながら問いかけた答えるはおれの心に突き刺さる。
おれのどこが特別なんだ、なんの価値があるというんだ、おれには何も分からない。
「そんなに特別なら自分が居ない方がましです!」
おれがいるから優先するなら光さんと関わらないべきだ、心の整理もつかぬまま気づけば光さんの前から逃げ出した。
光ちゃんとの喧嘩別れ
明日も更新します




