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魔法少女の光と影  作者: 生姜焼き
陰陽コミュニケーション

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21/29

逃走夜行

おまたせ


「じゃあマジルガを追い詰めて行きますよ、しっかり掴まってください。」


 そうして会話を切り上げて視界に入るマジルガに追い縋る光さんは、そのまま新たに魔法を行使する。

レーザーを放つ魔方陣が十六枚、周囲に展開されると光さんの円周上をくるくると回る、色環のようにカラフルに彩り、幾何学的な魔法陣が光のラインをなぞるように軌道を描く。


「私はちょっと遠距離が苦手何ですが追い詰めるぐらいなら出来るでしょう!」


 光さんのバトルスタイルはド近距離格闘だ、二級の強敵の壊廃のマジルガ相手に無傷で殴り会う程に強く早い光さんではあるが遠距離はレーザーくらいしかないようだ。


「『閃行連虹』」


 それでも遠距離の技の一つはあるもので、魔方陣は回転速度を上げ、目で追えない程に加速する、ただ煌々と光跡を残しレーザーが放たれてゆく。

今までのレーザーと違い白ではなく色とりどりの彩りを持つ極光のレーザーが傀儡のマジルガに襲いかかる。


「これならば対処出来ないでしょう!」


 一瞬のレーザーでも重ね連なるほどの連射される光線は虹色七変化しながら的確にマジルガを撃ち抜く、逸らす余地もなく着実にダメージを与えていく。


「効いてます光さん!」


「手応えはありますね!攻撃を続けましょうか!」


 嫌がるように体を折り曲げ、畳み、転がりながらも駆けてゆくマジルガ、路側帯しかない住宅街の細道をただひたすらに鬼ごっこだ。


「ちゃんと嫌がらせにはなってます、ダメージもいいペースです!」


「それでも攻撃力が足りないですね!一発で消し飛ばすべきですが……無いものねだりしてもしょうが無いです。」


 苦い顔でぼやきながら射程内に収めるように動き続ける光さん。

傀儡のマジルガの攻略法、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()

正直それができれば苦労はしないがこれが一番楽な攻略法だ、相性のいい四等星か、三等星ならばとれる方法だろう。でもおれ達はそんな手もないので一つづつ要素を潰して攻略する。


「十分ですよぉ!光さん、頑張ってますからあ!」


 直線のレーザーを避けんと道角を曲がり、障害物を駆使しどうにか射線をきり逃げるマジルガに対して付かず離れずと射線を通す様に動く光さん、そんななか背負われているだけのおれは応援のような言葉を投げ掛けるしかできなかった。

光さんも余裕があるわけでもないからおんぶの状態で急加速、急停止、急回転とジェットコースターなみに激しく駆ける鬼ごっこにおれは必死にしがみつく。


「……ありがとうございます、泣き言も言ってられないですね。エイナさんの応援に応えられるように気合い入れていきましょう!」


 そう感謝を述べマジルガにより一層向き合う光さん。

光さんはよくやっている、四等星の魔法少女でもここまで食らいつける人は少ない。

そもそも傀儡のマジルガの討伐報告は三等星より上の魔法少女の撃破が八割以上なのだ。

相性の良い遠距離の必殺技を持つ四等星の魔法少女もいるが、どうしても四等星以下の討伐報告が少なくなるのがこの傀儡のマジルガだ。


「苦手な遠距離の克服をしなければいけないですね、これが終わったら修行の日々です!」


 戦闘力はそんなにないがそれ以外が厄介過ぎるので格上でもなければすぐに討伐出来ないのが嫌らしい。

迂闊に近づけば傀儡の餌食になってしまう、だから光さんも警戒して近づけない、どれほど強くても食らえば一発アウトというとんでもない魔法だが、幸いにも距離を取れば当たらないのが救いだ。


「その時はご一緒にします光さん。」


 傀儡の魔法そのものの傀儡のマジルガに接触したら駄目なので近接攻撃は無理が故に遠距離攻撃が必須だが、遠距離攻撃くらいなら大抵の魔法少女がある、それでも四等星以下の討伐が少なくなる要因がこの逃げ足だ。

おれの影縛りなど掠りもしないレベルで逃げわまるマジルガに通用する魔法を習得すると決めた。


「っと、そろそろトップギアですか、最高速はこちらの方が上です、油断なく行きましょう。」


 過熱していくこの追走劇も最高潮の苛烈さを見せる。

体感だともう時速60kmは超えているだろう、普通の人間の限界を突破しているが魔法少女というのはそんな非科学的な人知を超えた存在だ。

まあ魔法少女という半分魔法(非現実)的存在に片足突っ込んでるものなので今更だが。


「自分だと何も出来なかったのでここにいるのが光さんでよかったです。ありがとうございます。」


 手伝えないので感謝だけでも伝える、光さんでなければここまで追えていないだろう。

体がぐしゃぐしゃな丸めた糸の塊と化した傀儡のマジルガは速度を落とさずに跳んで弾んで転がって縦横無尽に進んでいく。

おれならばもう五秒で置いていかれただろう、本気で逃げる二級のマジルガは車でも追いつけない。とういうかおれというお荷物背負って追いつけている光さんがすごい、ほぼ魔法少女としてのフィジカルのみで追いついている。


「そう言われると照れますね、私とエイナさんが此処にいる運命でよかったです!」


 なんだか光さんのテンションが二段階くらい上がった気がする。

塀を越え、壁を当たり、柵をくぐるマジルガに追従する内によりアクロバティックに、そして軽やかに洗練されていく。


「ああ、気分がいいです。ここまで動くと昂ってきます!」


 爆発的に踏み込んで一気に加速、三角飛びで先回りして逃げ道を防ぐ。

激しく、冷静に追い詰めていく光さんはいつになくハイだ、心なしか輝いて見える。

いや気のせいじゃないな、キラキラしたオーラを纏っている、何これ?


「ピカピカしてます光さん!」


 物理的に輝く様相に驚きを隠せないおれに光のオーラが染み渡る。

冷たい夜の空気もじわじわと暖かい光に当てられて温まる、それに気分がだんだんあがっていく、良いも知れぬ高揚感が全身を支配する。


「これはですね、魔法命動と言うものです、長時間の魔法の使用による影響で身体能力もつられて高まりいつも以上に力を発揮できるんですよ!」


 深い笑みを溢してこちらに向く光さん、いつにもまして顔がいい。

興奮している今、光さんの横顔が心臓に悪い。昂ったふわふわな頭がただでさえ美人な光さんの玉貌がこの世の最上の美しさであると評する。


「そんなにはっちゃけて大丈夫ですか?」


 激しい動悸、ドクドクとうるさい鼓動を落ち着かせようと話しかける、意識すると戻れないとこまで魅了されてしまいそうで話を変えるため話題を振った。


「一時的に起こるランナーズハイみたいなものですし大丈夫ですよ、それと魔法命動は他者にも影響があります、エイナさんもこの胸の高鳴りを感じるでしょう?」


 くすりと小気味よく返され心臓は一層脈拍を強める、このドキドキは魔法命動のせいというけれども、だけれども、それだけじゃなく光さんがイケメンすぎるのが五割くらい悪いのではないかと思うのだ。


「魔法命動は人によって興奮状態は違います、エイナさんはどう感じますか?嬉しいですか?楽しいですか?哀しいですか?怒ってますか?」


 おれの、この気持ちは喜怒哀楽でもなくて、すべてが愛おしく想える恋情がひたすら心を支配している。よりにもよってこんな恋愛脳になるとは……!

理性と感情がぐちゃぐちゃになるなかまだ理性が効いているぶん自分の状態は把握出来てると思いたい!


「……普通にドキドキしてるだけですよ?だから顔を見ないで下さい……」


 見られているだけで顔が熱くなる、茹であがった脳がもうオーバーヒートしてしまう、面を向かって会話が出来ない!


「耳まで真っ赤ですね、恥ずかしがり屋になるとは予想してませんでした。」


 光さんが感心しているように頷いている、恥ずかしくもあるけどそうじゃないんだよ、光さん相手だからおれの心臓が爆発しそうなんだ。

いややっぱり他の魔法少女でも同じかもしれない、魔法少女みんな好きです。


「ううう」


 恥ずか死しそうで光さんの背中に顔を埋める、湯気が出そうなほど赤面した顔を隠すのに必死だ。

誰かに見られたくない一面を隠すのに光さんの背中が頼もしすぎる、好き。

いやそんなに軽々しく好きになったら駄目だって!おれちょろすぎるぞ!


「そういう可愛いとこありますよねエイナさん。」


 かわっ、かわいいなんて言われても困るんですけども、おれは男……じゃないけど、もう性別は女の子だけど譲れないものとかプライドとか残っているのですけど!


「ほ、ほら目の前のマジルガ集中しましょう?」


 もう完全に蚊帳の外となった傀儡のマジルガを意識の内に戻して矛先をマジルガに向ける。

この世界にはおれと光さんしかいないわけじゃないし当然マジルガもいたがあまりに自分の恋愛脳に没頭しすぎていた。


「露骨に話そらしましたね、まあこのマジルガを倒す頃には魔法命動も落ち着いてくるでしょう。それまで辛抱していてくださいね、エイナさん。」


 背中からひょこりと顔を出し、レーザーが捉えるマジルガを見ればはっきりと優位性を取れていた。

随分ボロボロに千切れ、解れ、未だスピードは落とさないがダメージが目立つようになってきている。

マジルガが光速のレーザーを避けられず、その逃げ足で光さんを振り切ることが出来なかった時点で命運は決まっていたのかも知れないが、ここまで粘るのはさすが二級のマジルガである。


「余裕が出てきてないですか光さん?」


 おれと違って会話だけでなく追跡もこなしている光さんはもう、片手間に追っている程にゆとりがある。

たまにちらちらとマジルガの方を確認するだけで追いかけている、これはもう圧倒的な力関係からなる狩りである。


「魔法命動の効果もありますが、それよりも慣れましたね、初めてのマジルガと対峙するのは成長できるいい機会です。」


 軽く言っているが普通はそんなすぐに成長しない、光さんが四等星になったのは魔法少女を始めて一ヶ月だ、一年足らずで上がるのは凄い成長速度である。

そんな滅茶苦茶才能溢れる光さんは戦いの中で強くなるが強くなりすぎではなかろうか。


「何かしようとしてますよ光さん!」


 束ねられた糸がマジルガから伸び電柱の頂点に絡められた、そして引ききった糸を一気に縮める、日の沈みきった夜の暗闇に紛れるようにマジルガは宙に飛ぶ。

そんなことできるのか!?予想だにしない行動にびっくりする、パチンコの要領でぶっとんたマジルガを見失う。


「起死回生の一手ですか、ですが目視出来ずとも見えていますよ!」


 レーザーが途切れ魔方陣が停止したと思ったら十六枚の魔方陣が重なり、新たな魔方陣を形成しだす、色が入り交じり複雑に描き出した大魔方陣が夜空に輝く。


「『閃虹彩条』」


 決して闇雲に撃っても当たりやしないが光さんはおれには見えない闇の先を見据えて狙い澄まして新しい魔法を空に書き、強く輝く魔方陣から魔法を放つ。

ただ一筋、極彩色の閃光が闇夜を照らし、飛び出したマジルガを正確に撃ち抜く。


「綺麗に当たりました!」


「一撃です!これでまた成長出来ましたね!」


 キラキラ輝く光さんがレーザーに散りゆくマジルガを見て勝利宣言をする。

二級では相手にならなくなってきたくらいには強い、連戦しても傷一つ付いていないことが戦闘力が二級のマジルガを逸脱しつつある証だった。

これが四等星筆頭、最も三等星に近い光の魔法少女だ。


元から女々しいチョロ厄介オタクなエイナくんちゃん、割とそういうとこある。

次の更新は明日だあよ


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