異常と作戦開始
「zyiigaaaa」
「やっぱり硬いですね……!」
倒れ伏すマジルガが天に向かって唸り、がむしゃらに手足を回しあたり全てを壊しながら暴れ立つ、ダメージ自体は入っているがあまり有効ではなさそうだ。
「長引くとあたりが不味いですが……事を焦って仕掛けるには決定打がありません、長い戦闘を覚悟してください。エイナさん。」
もはや小石ほどにバラバラになった瓦礫の中心でマジルガと光さんは相対する。
おれも精一杯の援護をするために固唾を飲んで見守りつついつでもマジルガには魔法を放てる位置に移動しておく。
互いにじっと向き合っている。
「あと異相変装で魔法少女の服に着替えてください!それで魔法が使いやすくなると思います!」
「わ、わかりました。【異相変装】」
直ちに光さんの言うことに従い魔法少女服へと着替える、一日ぶりだが全てが体にしっかり当てはまる感覚の、フリフリが多くついていること以外は最高の衣装だ。
それでいて体に力を感じる、魔法の存在をよりしっかり感じ取れるのだ。
服にこんな効果あったのか、魔法少女のことをおれはまだまだ知らない。有名な魔法少女の実績とか人となりなら詳しいのに。
「このあたりにはまだ人は残っていますか?」
「いえ、感じません、皆さん避難されています。」
おれにはわかる、影を操るおれならば、人影を探る事など余裕なのだ。
そんなことを今知った、なんというか出来ることがすぐにわかる、いつの間にか頭に知識として入っている。
誰かが何か、答えをそっと教えてくれている。そんな気がした。
「エイナさんは便利な魔法を使えますね、影を操る魔法は応用がかなり効きいて良いですね。」
「わかる物ですか?」
どうやらおれが何か魔法を使ったのは把握しているようで、光さんは感心していた。
おれは光さんの使っている魔法何一つ分からないのに光さんはわかるのか。
「魔法を使うということは思ったよりも影響する範囲が広いです。容姿、身体能力、感覚さえも魔法が影響を及ぼすものです、魔法を使う理解を今一度考えて見て下さい、魔法を使う感覚を正しく理解できれば他の魔法の行使を感じることも出来ます、高等技術ですが……」
やたらと説明されてもちんぷんかんぷんなもので頭がはてなで埋め尽くされる、高度な技術を駆使しているようだ、凄い。
「よく分からないですが凄いことしてるんですね……」
「こんな口頭で説明するものではありませんし魔法少女として成長するなら自然と分かります。今は頭の片隅にでも置いていて下さい。」
喋りをやめ現状まで光さんの背で機をうかがっているがマジルガは何か警戒するようでピクリとも動かない。
光さんも待ち構える形で膠着状態だ。
「いいですかエイナさん、分からないと思うので今から状況を説明します。」
「お、お願いします。」
マジルガも光さんも微動だにしない緊迫状況で光さんが口を開く。
「マジルガが逃げようとしています。」
「えっ?」
そんなことがあるのだろうか、マジルガは欲望を満たすように動く魔法だ、知能があるわけじゃない。
だが壊廃のマジルガがじっと何か待つなんてするだろうか、それが証拠だった。
「思ったより賢いです、魔法にここまで過敏だと異常ですね。」
「まずい事態ですか?」
「いえ、恐らく問題ないですが気がかりにはなります、早く討伐してしまいましょう。」
それが事態は問題ないと首を振る光さん、さっさと終わらせるとマジルガを睨みつける。
「マジルガはエイナさんの影縛りを警戒しています。だからそれを逆手に取って策に賭けます、普通のマジルガでは警戒が薄いですがここまで警戒するならやる価値があります。」
しかし策があると光さんは言う、おれは黙って言うことに頷いた。
「まずエイナさんが影縛りをしてください。」
「それだと逃げるのでは……?」
こちらの事を警戒しているならまず避けられると思うだが光さんはそれだけじゃないと言う。
「エイナさんの魔法は避けられてもいいです、私が逃しません。」
光さんは自信あるようにこちらに向く。
「光速移動で避けようとする場面に出来る限り最大の一撃を叩き込みます。」
それはおれが光さんの家に向かった時に使った魔法のあれだ、文字通り光速で移動出来る強力無比の魔法。
「制約も色々あるのでポンポンと使えないですが、エイナさんに気を取られているなら使えます。初見で避けることは無理な一撃をお見舞いしてその間にまたエイナさんに縛ってもらってタコ殴りにします、多分それが最善手です。」
さすがに無制限に行使出来るようではないが強力な魔法で初見殺しでボコボコにする真っ当な脳筋戦法だった。
「ここからギア上げて行きますよ!」
「はい!」
さあ作戦開始だ。
誰かが影の魔法をレクチャーしているみたい、誰なんでしょうね
明日更新