ルカナ過去編
その日は随分と平凡で。
当たり障りのない、まるっきりいつもの日常だった。
そう、日常の……ハズだった。
『地球は終わります……さよならァ』
などと笑いながら生放送のテレビのカメラ目線で笑いかける男が突如現れ。同時に、何かを察したのか、大量の鳥達がバサバサと飛び去っていく。三日月を飲み込んで。
「どうゆう…ことなの」
訳が分からない、テレビの生放送なんだから……何かのドラマ、寸劇じゃないのだろうか…分からない…。分からないことは恐ろしい。知らなければ。この生放送のテレビ局は、近い。だから、私はそこに走って向かう事にした。
やりかけていたゲームはノーセーブ、机にはほぼ手付かずの参考書。拭い切れない不安に身体が震える。その震えをいなすかのようにヘッドフォンをした。何か、歌でも聴こう…途端に、耳元を劈く悲鳴じみた言葉。
「妾は、生き残りたいのだろう?」
やっと現実を理解したかのように動き始めた人間達。不安に駆られ、何処へ行くとも分からず逃げ始める人々。テレビは付いたまま。そこには…爆弾が仕掛けられていた。その爆弾に対し、どうしようもないほどの怖気を感じ、より一層走り出す。
「はぁ……はぁ…はぁ」
疲れた、走るなんて久々だ。去年の高校の夏、友人と共に海へ駆け出した日の事を思い出しながら。
「も……だめ」
そして思い出した。私には完全に体力が無いということも…。物凄くしんどい……。けれど…もうすぐで…………いや、なんだ、爆弾が出たところで。テレビ局で爆発すれば。意味が無いのではないか?それが全部をぶち壊す訳では無いのだろう?不意に声が聞こえる。
『おかしいと思ったこと全てを…』
「『疑え』」
猜疑し、考察し、私、妾……とにかく、その元に……。
『妾に……浸食されたか』
「はぁ……?」
引き込まれる。嘘だ、嘘じゃない、嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘……、
『助けて……』
「ふふ、これが妾の身体だ……すばらしい……連れて行け、妾を」
「良いだろう」
不意に、声が届き、現れる青髪の青年。そいつが創り出した世界なのだ。ここは……。だからこそ。即座に、あの爆弾が起爆する。瞬時に火が燃え広がる。
『パパ!ママ!お兄ちゃん!!……なんでぇ!』
頭に劈く悲鳴。五月蝿い、黙っていろ。
『……救ける……絶対に…もう少し待ってて…』
『ごめんね』
頭に響く声が消えると同時に、私は異世界に来ていた。