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玉兎の憂鬱  作者: 残解
序章・月の裏の月
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序章・第七話


私の名前は綿月依姫。月を様々な脅威から守ったり、色々なところに派遣されたりする『月の使者』の任についている。脅威という脅威はこれと言ってないのだけれど、一応ある部隊と言ったものなので、実質暇なのだ。



そんなところに所属しているので暇を持て余して、いるはずもない侵入者を見つけるために月読様の屋敷を巡回している。この前、一匹の玉兎が迷い込んでいたときは『やっと、それらしい仕事ができる……………!!!』と思い突発的に行動してしまったせいでお姉さまに怒られてしまった。あの玉兎にもしっかり謝罪ができていないので会えたらいいのだけれど、生憎だけれどまだ会えていない。ちなみに、月の使者たちは月の神、月読様が遣わす部隊であるためかなり強い。



今日は月詠様に何故か分からないが部屋にお呼ばれしている。呼ばれる心当たりは……あるけれど。



例の玉兎のことだろう。あの時の私の行動を悔やむ。なんで誰かいると思って、いきなり斬りかかるなんてことをしてしまったのか。



あの玉兎が止めてくれて良かったと思う。しかし、あの玉兎が私の攻撃を身体を動かさずに止めたときは驚いた。しかもその止まり方が不自然で、空中にピッタッと止まったのだ。謝った後でどうやって止めたのかを教えて貰うのが実は言うとあの玉兎に会いたいという本当の理由だ。



なにか『波長を操る程度の能力』以外の能力を持っていると考えていいだろう。だとしたらどんな能力だろうか。まあ、会ったときに本人から聞けばいい。



そんな風に考えていると、もう月詠様の部屋の前に来てしまった。そういえば月詠様の部屋に入るのは初めてだ。月詠様に呼ばれない限りは中に入ることはない。それに、私は月詠様に何か用事があってよばれたことがない。



もちろん月詠様と仲が悪いだとか、会ったことが無いとかそう言うことではない。恐縮だが、むしろ仲は良いと言ってもいいだろう。道場で素振りをしていると向こうから話しかけて来てくれる。それに、刀の振り方についてもアドバイスしてくれる。だから決して中が悪いというわけではないが。



しかし、私の師匠でも滅多に入ったことがないといっていたのでかなり緊張している。それに加えて自分が悪いことをしてしまった心当たりがあるので余計に緊張してしまう。が、呼ばれている以上行かないわけにわけにはいかない。



覚悟を決めてとてつもなく大きい月読様の部屋のドアに付いているカードリーダーにカードをかざす。




ウィーン




ピッと音がして扉が開く。『開いたんだこれ…』と思いながら中に入るとそこには、
























かごの中に大量に入っている桃を貪る姉と、優雅に緑茶をすする月読様がいた。





「えぇ!?」



驚きのあまり声を漏らしてしまった。そりゃそうだろう。いないと思っていた姉がいたというのもあるが、それよりも月のトップである月読様の目の前で堂々と桃を貪る姉がいたのだから驚くしかない。



どうしてそんな堂々と月詠様の目の前で、桃を食べられるのだろうか。普通は緊張するはずだろう。いくら考えてもなんでかがわからない。それに、桃を食べるのに夢中になって私が来たことにきずいていない。



そんな風にこの状況(主にお姉様)に困惑していると、



「やあ依姫、よく来たね。まあ座りなよ。」



そう言って月詠様が二人が座っている丸型のテーブルの椅子を引く。


「は、はい。」



とりあえず、月詠様が引いてくれた椅子に座る。私の姉であり私と同じ『月の使者』でもある綿月豊姫はまだこちらに気付かない。桃の山のせいでこちらからは全くと言っていいほど見えない。が、幸せそうな顔を浮かべているのが、めに浮かぶ。 



そんな桃中毒のお姉様はほっといて、月詠様に聞きたいことを話す。まあ、なんでお姉様までいるのかも聞きたいのだが、それよりも先になんで呼ばれたかが聞きたい。例の玉兎の件だろうか。もしくはほかのことか。



「それで、ご要件は何でしょうか。」



どちらにせよ、いままで一度もよばれたことがないのに今日呼ばれたのには何か特別な理由があるはずだ。



「いやー実はね、ある玉兎を訓練しているのだけれど……………」



「えぇ!?」



「…………どうしたんだい?」



「へ、あ。す、すみません。失礼しました。」



「そうかい?」



私はなんで大声を出してしまったのか。頭の中で項垂れっる。頭で考えるより先に体が動いてしまうという私の悪い癖が出てしまった。そのせいで月読様を驚かせてしまった。申し訳ない。そんな妹の危機に全く気付かず桃を食べ続ける姉とはこれいかに。もうお姉様には桃禁止令を出してやろうか。



それで、月読様が1匹の玉兎を訓練しているらしい。………………なにそれ羨ましい。こう思うのには訳がある。昔、月読様にお手合わせ頂いた事があった。結果は惨敗だった。その時結構自分の剣術には少なからず、自信があったので、負けたときはかなり悔しかった。



その時から、月読様の剣術に少しでも近づこうと指導してほしいと何度か頼んでみたのだが、いつも返事は否。理由は『私から教えられることはもうない。』の一点張りで、結局、教えてもらったり、手合わせをしてもらったりしたことがない。故に羨ましいと思ってしまう。



それにしても玉兔か…………







ん?玉兎?






「…………………………」



「どうかしたかい?」



嫌な予感が頭をよぎる。もしかして、私が切りつけかけた玉兎って……………



月読様の訓練している玉兎!?



いやいや、まだそうと決まったわけじゃない。もしかしたら私が切りつけかけた玉兎じゃないかもしれない。その希望にかけてあの玉兎の特徴を思い出す。たしか左右の目の色が違がっていた。色は赤と青だった気がする。



「もしかして、その玉兎の目って左右違っていましたか?」



望みをかけて聞いてみる。が、帰ってきたのは……………



「うん、そうだよ。」



肯定の意であった。つまり、私が月読様の訓練している玉兎を攻撃したことが確定してしまった。



「……………その玉兎を侵入者だと思って、攻撃してしまいました。」



「「ははははははは!!!」」



「え?」



二人が笑って来る。いつの間にか大量にあった桃が籠ごと消えていて、満足した顔でお姉様がこちらを見てニヤニヤしていた。桃はおそらくだかお姉様の能力『海と山を繋ぐ程度の能力』で移動させたのだろう。この能力は実際に海と山を繋ぐわけではなく、海と山を繋ぐことも出来るということを表している。つまり、大体のものは繋ぐことが出来るのだ。さっきのは桃の山と、お姉様の部屋につないだのだろう。



それよりもなんで二人が笑っているのかがわからない。私は笑われるようなことをしたのだろうか?断じてない。私は笑われることではなく、一匹の玉兎を攻撃してしまったのだ。しかも、月読様の鍛えている玉兔を。むしろ、怒られるべきではないか?いくら考えても私が笑われるようなことはしていない。なので、率直に聞いてみた。



「なんで、私は笑われているんですか?」



「あら、わからないかしら?」



お姉さまが答える。いや、そう言われてもわからないものは分からない。



「いや実はね……………

















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