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玉兎の憂鬱  作者: 残解
序章・月の裏の月
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序章・第五話




昔、地上には大きな都市があった。

そこには沢山の人間たちが平和にくらしていた。

そこは神々の支配する都市で、周りにはとても高い壁があり、

人間を襲う妖怪達から守っていた。



妖怪は生き物に寿命を与える穢れを持ち、人間はそれに恐怖していた。人間は穢れから逃げようと、穢れのない月に行こうとした。



月に行く当日、妖怪達が都市に攻撃を仕掛けた。

何故か、理由は簡単。

妖怪達の力の源は人間の感情から出ている。

人間が地上から居なくなると、妖怪も消えてしまう。

それを防ぐために妖怪は全力で止めようとした。

これを、人妖大戦という。



人間達は必死で攻撃を防ぎ切り、月に行くことができた。



しかし、月に着くと沢山の兎がいて、月で暮らしていた。

持ち前の科学力を武器にして、兎を従えた。

この兎達が今の玉兎だ。



そして、兎達と協力し………………










今の都市を作り上げたというわけだよ。」




「おー」




今、月詠様の月の都の歴史を簡単に聞いている。まさか、月に生物が住んでいたとは思わなかった。しかも、地上にはたくさんの妖怪がいて人間を襲っていたなて、俺が住んでいた世界では全く信じられない話だろう。まあ、俺も兎耳あるし、今ならば理解できるが。



「いやー誰かこの話をするのは初めてだよ。」



「そうなんですか?」



「うん、みんな知っているし、産まれた玉兎には他のヤツが教えているからね」



今さらだけど、月のトップと普通に会話できるのは何気にすごいことではないだろうか。他の玉兎たちは他の人に教えて貰ったりしていると言うし。



「とりあえず、目は覚めたかい?」



「はい………すみませんでした。」



ここは俺の部屋で、ベッドの上である。気付けのために話をしてくれたのだ。



………まあ、要するに起こして貰ったということだ。



俺は昨日、魔のベッドの誘惑に勝てず寝てしまった。しかも、朝の9時まで!これが普段の朝なら大学の講義をサボるのだが、今回は人を待たせていたので早く起きなくてはならないのに、寝坊してしまったのだ。本当に申し訳ない。 



急いでベッドから出て、シャワーを浴び、置かれていた服を着る。これは月詠様が用意してくれていた服で、サイズもピッタリのこと。いつ測ったんだか。さて、今気付いたんだが兎耳めっちゃ邪魔である。服にも引っ掛かるわ、頭洗う時に顔にガンガンあたる。まあ、慣れていくしかないか………



さて、月詠様が用意してくれていた服は洋装で昨日までの浴衣とは違い、まさに今から運動するぞ!という意気込みが感じられる服だ。体操服みたいなもので、動きやすい。今日から訓練が始まるのだろうか?



「おー似合ってるね。」



「ありがとうございます。」




「玉兎の体操服余っていて良かったよ。」



あっやっぱり体操服なんだ………



「それじゃ行くよ。」
















~玉兎移動中~

















着いたのは大きな剣道場のような場所でとても広い。 普通に天井が見えない。剣振ったりするならば、もう少し狭くていいと思うのだが。そんな感じでボーッとしていると、



「レイ、こっちだ。」



月詠様に呼ばれたので少し駆け足で月詠様の後へついて行く。

何やら倉庫みたいなところに入っていき、中には大量の刀、槍、銃、薙刀など、沢山の武器や武具が置いてあった。

おそらくだが、これらで鍛えるのだろう。



「この中からレイが好きなものを持っていってくれ。」



「この中からですか………」



こんな沢山ある中から1つ選ぶのか…………

カッコいいとか見た目から決めるのはよくないだろう。まあ、どうせ使うなら刀がいいかな。アニメとかでもよく使われているのがカッコいいと思ったからだろう。



とにかく、実用的な物がいいだろう。そう思って、目の前の短刀を手に取る。



「うわ」



思いの他重たく、落としそうになってしまった。

短刀でこれなのだから普通の刀なんて、持てないだろう。

何か軽い武器はないかな?


























三時間ぐらい迷っても未だに自分に合った武器がない。

全部が重たかったり、大きかったり。

実際に使ってみたがなんかしっくりこない。

月詠様を待たせているので、早く決めたいところだが。



そんなこんなで全く見つからないので唸っていたところふと、視界に入った刀があった。黒い鞘で特にこれといった特徴はない。あるとすれば、普通の刀より少し長い位だろう。刀は重たいので諦めていたのだが、気になったので手に取ってみる。








しっくりくる。









試しに鞘を付けたまま一振してみる。

ブンと、大きな音を立てて、刀が動く。

重たいので、反動でこけそうにになったが。



























倉庫を出ると月詠様が刀を振っていた。

何とも綺麗な太刀筋で、素人の俺でも綺麗だとわかる。流れるように繰り出される剣技。さすが神様、とんでもない早さの剣速だ。



そんな圧倒的な剣術に見惚れでいると、月詠様がこちらに気付き、一瞬で俺の目の前にくる。



「わっ」



「おっと、すまないね。」



びっくりした、いきなり目の前に来られる物だからせっかく選んだ刀を、落としてしまうところだった。



「それが、レイの選んだものかい?」



「はい。」



持ってきた刀を月詠様に渡す。

その刀を鞘から出すと、真っ黒い鞘とは対象的に白い刀身が姿を現す。先から根元まで真っ白だ。曇り1つもなく、美しい刀身。



「ふむ、良いものに選ばれたね。」



「選ばれたとは?」



なんで選ばれたという表現をしたのか。なにか意図はあるだろうか。



「刀とかの道具たちにはね、意志があるんだよ。特に刀とかの刃物には強い意志があるんだ。だから、『選ばれる』って言ったんだ。」



意志となると、付喪神とかそう言うものの類いかな。

そんな風に納得していると、



「たまに、人の姿になるものもいるけどね。」



まじですか………

もうなんでもアリだなこの世界。神だったり、月人だったり、瞬間移動だったり。うん、もう気にしてはいけない。うん。



「とりあえず戻ろうか、もうお昼だしね。」



「わかりました。」



月詠様が急に立ち止まってレイの方をむいて、



「あ、これ渡しておくね。」




そう言って、あの充電の無かったスマホを渡してくる。ためしに電源をつけてみると、付いた。しかも、100%である。



「レイにはまだ力の移動は出来ないのに、それ渡してごめんね。」



「え?それはどういう………………」



「ああ、力というのはどんな生物にもある力だよ。」



うん、会話が成り立っていない。

























そのあと、食堂みたいなところに着くまで『力』と言うものを説明してくれた。



なんでも、その『力』というのは生物には必ずと言っていいほど誰でも持っているらしい。月詠様は神力、月人たちは霊力。

俺みたいな玉兎は妖力と言うものをもっている。

他にも魔力とか呪力などがあり、まだまだ有るかもしれないらしく、詳しくはわからないそうだ。



昼食を食べ終わったあと、また道場に戻ってきて俺の力、妖力の出し方を練習した。案外簡単で、その日の夜までにはスマホを充電できるようになった。電気じゃないけど…………

出し方としては、ぐっと力を入れると体の中に流れのようなものができるから、それを頭の中でそれを操る感じだ。



ちなみに、出てきた料理はカレーだった。スパイスがきいていて、おいしかった。そして、当然のごとく置いてあったのが桃であった。



明日から本格的に訓練をやるそうだ。刀振ったり、妖力の扱い方を練習したり、刀の方は不安しかないが、大学に受かったときみたいに頑張ればなんとかなる気がする。





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