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玉兎の憂鬱  作者: 残解
序章・月の裏の月
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序章・第二話




八意から急に連絡が来た。

珍しい、あの娘が私に対して連絡をしてくるなんて。



八意は、基本的に自分でだいたい何でもすることができる。それ故、誰かに頼ったりすることがない。が、今回はあの娘でも解決出来ない問題が出てきたようだ。



その問題とは、ある玉兎の能力がわからない。とのことだ。玉兎は基本、皆同じ能力を持っている。




『波長を操る程度の能力』




それが玉兎の能力だ。



我々が月に来る前からいた玉兔たちは集団で暮らしていて、集団で暮らす以上は意志疎通が出来ないといけない。しかし、月に酸素がなかったので音が伝わらない。つまりは音による会話ができなかった。その代わりに玉兎たちは兎の耳から電気の波長を操り、テレパシーとしてつかったのだ。



希に通信以外のものも操る者もいるので『通信をする程度の能力』とか、『電波を飛ばす程度の能力』ではなく『波長を操る程度の能力』と呼ばれる。



その玉兎たちが操る波長というのは自然界においてありふれたもの。例を挙げるなら、音の波長、精神の波長など、数え切れないほどある。その中で玉兎が扱うのは『通信の波長』これを操り、通信機無しでも、仲間の玉兎と連絡を取り合うことができる。



しかし、報告を聞く限り、その玉兎には玉兎の特徴でもある、『波長を操る程度の能力』どころか、自然界、特に生物は必ずといっていいほど何かしらの波長を、出しているはずなのに、

その波長がない。






『波長』、それ事態が全く無いのだ。一度、その玉兎は死んでいるのだと思った。だが、診たのは月の賢者であり、月の頭脳であり、薬師でもある、八意だ。そんなミスをするとは思えない。



だから、自分で見て見てみることにした。



普段、私は部屋に誰かを呼ぶことはない。唯一、呼ぶことがあるとすれば、私の姉と弟ぐらいだろう。それだけ、私が部屋に誰かを呼ぶことはない。電話の向こうで八意が驚いているのが良くわかった。『えっ、よろしいので?』と驚いている声を聞けたのは面白かった。












しばらくすると、例の玉兎を八意がつれてきた。一目見ても、見た目はただの生まれたての玉兎で、何かおかしなところはない。しかし、何かはわからないが、違和感を感じる。



その違和感を突き止めるため、私の『神』としての力を開放する。



『 神眼 』



これは、上位の神が扱うことが出来る術で、見たものの能力や持っている力を見ることができるものだ。この術のルーツは神通力から来ていて、大体のことはわかる。



それで目の前の玉兎を見る。



………なるほど、これはわからないわけだ。



この玉兎の能力を見てこう思った。

特に変な輩が持っていたら、危険だと。

八意が少し驚いているが、気にせず、集中して見る。










その能力は……………

















さて、どうしたらこの視線から逃げることが出来るか………



俺は先ほどから身体をなめまわすように、ジロジロと見られている。何故こうなったか。



早速、月詠様という人に正体がばれた。たぶん。

神の力とでもいうのだろうか、自分の見た目は赤ちゃんに対して、「喋ってもいいぞ。」などと、言えるということは何かしらの確信を持って、言っている以外考ええられない。

神かどうかは、しらないが。




「ふむ」



「君は、何者だい?」



え…………?



「あ、あの、」



「なんだい?」



「てっきり、全部分かっているのかと…」



「いやいや、君の存在自体がよくわからないから、聞いているんだ。」



えぇ……………



分かっていると思って聞いて見たのに、まさか、わからないとは………

身構えて損した気がする。

今は、自分の身に起きたことを話した方が良さそうだ。



「どうだい?答えられるかい?」



「はい。実は…………」









~玉兎説明中~










「ほうほう、それで起きたらそんな姿になっていたと。」



「はい…………」



とりあえず一通り説明し終わった。月詠様も納得してくれたようだ。



「それで、能力とかは、まったくわからないと。」



そりゃそうだ。こちとら元はただの人間である。そんなものがわかるわけない。



「……………」



「なに。そう落ち込まなくても大丈夫さ。」



不安という感情が、顔に出ていただろうか。だが、心配とは違う、不適な笑みを浮かべる月詠様。それに背筋が凍り、無意識に身構える。その一言に、








己の不安が、杞憂だったことを覚った。







「君を私が鍛えてあげよう!」




「へっ?」




堂々と胸を張って高らかに宣言したからだ。























「という訳で今日から私が君を鍛えていくよ。」



俺は月詠様に鍛えられることになった。



もちろん、理由はある。

能力のわからない危険な存在である俺を、この『月の都』にほったらかしにするわけもいかない。よって、誰が管理しなくてはならない。そこで、月の都でトップだが、比較的暇な月詠様がその管理をすることになったのだ。



俺からしたら凄くありがたい。

わからない能力で周りに迷惑をかけてしまってはいけないからだ。それに、この世界のことを知ることができるかもしれない。そんなことを考えていると、月詠様が質問してきた。



「君に名前はあるのかい?」



「ずっと君呼ばわりじゃあ、悪いからね。」



名前か、俺の名前は………



あれ?何だっけ?



「どうした?」



「いえ、名前が………」



「思い出せないんだろう?」



「…………はい」



何故だろうか?全く、思い出せない。20年間以上、使ってきた名前だ、そう忘れるものでもないと思うのだが?



「君が君の名前を覚えてないのはね、実は言うと必然なんだよ。」



「というと?」



「名前と言う物は魂ではなく、肉体に刻まれるものだからね。」



肉体、つまり身体のことだ。俺は自分の名前が刻まれている身体から、魂が抜け、転生した。つまり、俺は今、名前がないのだ。月詠様の言うことが正しいのであれば、そういうことになる。



「だからね、私はしっかり考えてきたんだ。」





「君の名前をね。」







「君の名前は…………」












レイだ。











「レイ、、、ですか?」



「そう。」



「意味は、何もないということ。」



「何もないと言うことは、何にでもなれるということ。」



「レイはこれからある意味、第二の人生、いや、兎生か。」



「それを始めるんだから、前世何ていう余計な物をは、必要ないと思うんだ。」



「だからね、気にしなくて良いよ。」



そう言って月詠様は、俺にハンカチを渡してきた。

渡されて、気が付いた。

赤と、青の二つの色を持つ目から、水滴が流れていたことに。












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