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玉兎の憂鬱  作者: 残解
序章・月の裏の月
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序章・第一話

投稿頻度は大体一週間か二週間に一回位で行わさせていただきます。

ほかのサイトで投稿済みの分は早めに出したいと思っています。


「ふわぁ…」



ベッドから起き上がり、身体をほぐす。かなり長い時間寝る事がなかったからか、少し体がダルい。まあ、なにも感じなかった時よりましだろうが。



俺が今いるところは病院の一室のようだ。赤ちゃんボディなのであまり動くことはできなさそうだが。ベッドから落ちないようにゆっくり立ち上がる。



うん、背が低い。まあ予想通りだが



やはり元が大学生なので、自分の背が低いと少し落ち込んでしまう。110センチ無いくらいだろうか。成長していくだろうが、170センチぐらいはいきたいものだ。そういえばこの身体になってから何か違和感を感じる。性別は前世と同じで男だ。流石に女性だと、違和感マシマシなので助かった。



コツ…コツ…



足音がいくつかこちらに近付いてくる。誰か来たのだろうか。俺は今産まれたばっかりなのにいきなり起き上がっているので、変な誤解を避ける為に、ベッドの中に戻る。



急いで戻ったので顔の前に白い何かが落ちてきた。何かと思い、引っ張って見ると今度は自分の頭が引っ張られた。



これは………



「ここかしら?」



「はい、八意様。」



「こちらに問題になっている玉兎がいます。」



三人部屋に入って来た。二人は男の人で、後、一人は女性だろうか。たしか今、八意と呼ばれていた人だ。そして、今の会話で確信がついた。俺の頭の上に付いているのは……








兎の耳だ。








うさみみとは思いもよらないものが頭の上に付いていたのに、全く気が付かなかった………



それにしても何で兎なのか。先ほどの会話を聞く限り、「玉兎」という単語がでてきた。玉兎とは、月に見える餅を付いているように見える兎のことだ。じゃあここはもしかしてだけど、、、、









月!?







流石に声は出さなかったが内心すごく驚いている。まだ、確実とは言えないが、、、、



「あら、綺麗なオッドアイじゃない。珍しいわね。」



「はい、赤と青の濃い色は初めて見ます。」



こちらの顔を覗いてきて、八意と呼ばれる人がそう言った。それにしても珍しい服装だ、赤と青のツートーンカラーの服って………………

月では普通なのだろうか?


そういえば、オッドアイってカラコンでもいれなきゃできないんじゃあないのか?デフォルトでオッドアイ何て珍しいどころじゃないだろう。






「それで、何故私を呼んだのかしら。わざわざ一匹の玉兎の目を見せる為だけに呼んだ訳ではないでしょう?」



「実は…………」



「この玉兎の能力が、わからないのです。」








八意さんの質問に対し、二人の男の人が答える。

能力て…

これは明らかに、自分の暮らしていた世界ではないだろう。月の兎だったり、オッドアイだったり、まさにファンタジーだ。まさかのファンタジー世界に転生なんて、笑えない話である。



「何故かしら、玉兎の能力は全て同じなはずよ?」



「はい、この玉兎は普通の玉兎と同じ能力を持っているはずです。」



「しかし、玉兎から本来出ている波長がないのです。」



「波長が?」



「「はい」」



男の人二人がそう答える。

………今分かっていることを整理しよう。俺は玉兎に転生し、オッドアイで、ここでの普通の玉兎とは違う波長を持っているらしい。









…………は?








よく分からないのだが…………



玉兎に転生したのはいいとして、波長?能力?なんだそりゃ!!あーもう!誰か説明してくれ…………

そんなふうに言っても誰か教えてくれるわけもなく、ただ頭を抱えるしかない。




「………」



「どうでしょうか?」



「………私でも分からないわ。」



「これは………」

















「月詠様のところに連れていくしかないわね。」


















今、俺は八意さんにベッドごとどこかに運ばれている。



おそらくは先ほどの会話に出てきた、月詠様なる方のところに行くのだろう。「月詠」というのは、確か、古事記にでてくるイザナギが御祓を行った時に産まれたとされるツクヨミのことを指しているのだろうか。



ちなみに御禊とは、イザナギが黄泉の国から帰って来たときに、黄泉の国の穢れを払うために行った行為で、普通はきれいな水で身体を流すことを指す。その時産まれたのが、天照大御神、須佐之男命、月夜見尊と言われている。



おそらくその月夜見尊のことを指していると思われる。月に兎がいる世界なのだ、日本神話に出てくる神様がいてもおかしくない。



乳母車。俗に言うベビーカーが止まり目の前には馬鹿みたいにでかい扉が鎮座している。



ウィーン



扉が開く。

もっと重厚な扉でゴゴゴゴゴと大きな音を立てて開くと思っていたが、案外軽い音で開いたので驚いた。大きさを例えれば、三階建てのビルぐらいあるだろうか?かなり大きい扉がウィーンと開く様子は違和感がすごい。



「失礼します、月詠様。」



「ん、来たか。」



八意さんが真ん中の椅子に座っている人に礼をする。あれが、月詠様だろうか?

ただ若い男性にしか見えない。髪の毛の色以外は。



「こちらが先ほど連絡した玉兎です。」



「ふむ」



こちらをじっと見てくる。あれだけで能力のこととかがわかるのだろうか?いや、名前からして凄い力を持っているのはわかるので出来るのではないだろうか。
















月詠様の表情が変わった。普段、私たちに対して感情を見せることなどない。常に冷静で無表情だ。しかし、この玉兎を見始めたとたん厳しい表情を浮かべる。そんなにこの玉兎は強い能力を持っているのか。はたまた、能力がみえないのかはわからない。



しばらく、静寂が走る。これをどうにか終わらそうと、私が声を出す前に、月詠様が声を出す。



「部屋に戻ってもいいよ。」



そう言われて少し驚いた。今、戻れということは私にこの玉兎の能力を言えない、ということであろう。月の賢者である私にも言えないことなのだろうか。だけれど、気になるか気にはならないかで言えば、気になる。



「わかりました。」



だから、聞いてみる事にした。



「ですが、後で教えて貰ってもよろしいですか?」



「ああ、言える時になったらね。」



また、驚いてしまった。



駄目元で聞いてみたのだが、まさか了承されるとは思いもしなかった。まあ、言える時というのがいつかはわからないけれど。



「では、失礼します。」



そう言って、月詠様の部屋から出た。










どうしよう。月詠様なる方と二人きりなんだが!八意さんが出ていったせいで俺の中では1対1の生徒指導みたいな雰囲気になってしまっている。ここからどうなるのかが、全く読めない………逃げようにも、逃げる場所もなく、ただ向こうの行動に従うまでである。



そんなことを考えていると、急に質問が来た。



「なあ、私以外はいないから喋ってもいいぞ。」




んんん?




まさかこればれていらっしゃる?神の能力とかそういうのでわかったのだろうか?俺は一言も喋っていないし、バレてしまうような証拠を残した覚えもない。しかも、目を俺から離すことなくじーっとこちらを見てきている。目を話すような素振りも見せない故、これに対してはこう答えるしかなかった。









「は…はい。」







ただの返事である。



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