序章・第十八話
「ええ、良いわよ」
恐る恐る聞いたのだが、案外軽く了承の返事がもらえて良かった。手伝ってくれると分かったのが良かったのか、少し体から力が抜ける。
「それで、どうやるの?」
が、また災難はやってくる。協力する以上、あのヤバい二人をどう止めるかの方法を当然聞かれるのだが、今のところまだ決まっていない。つまり……ヤバいのだ。いくら手伝うからといって待ってくれるわけではないし、待たせて手伝わないとかいわれたらもう詰みである。早く考えなくては………!
「う、あぁ……ええっと……ちょっと待って下さい」
とはいえそんな急に考えても、良い考えなどすぐに出る筈もなく、ただ焦って情けない返事しか出てこなかった。
「焦らないでゆっくり考えなさい。待っててあげるから」
「すみません……」
よ、良かった……待っていてくれるみたいだ。でも、どちらにせよ急がなくては。長い時間待たせるわけにもいかないし、何より早くしないと道場が穴だらけになってしまう。先ほどからあの二人が更に加速したのか、肉眼でも確認出来るぐらいの衝撃波が道場内を点々としていて、壁や床が所々穴が空いている。
………あれ?二人が持ってたの竹刀だけだったよね?それにここの壁って結界張ってるんじゃなかったっけな?まあ、あの二人が自分の常識では説明しようがないので置いておこう。気にしてたら頭が痛くなる。とにかく早くしないとこのまま道場は穴だらけ、最悪倒壊まで逝きそうだ。急がなくては。
さて、自分の持っているあの二人を止められそうなものはあるだろうか?取り敢えず整理をしよう。
能力は、波長を操る程度の能力。大体の波長を操れる。いま現状操れるのは精神の波長、通信の波長の2つ。通信の波長は二人が早すぎて、波長が追い付かないので使い物にならないから却下だ。波長を飛ばして使うレーダーも意味がない。
………あの二人が早すぎて。
そうすると使えるのは精神の波長ぐらいだろう。そうなのだが、正直あんまりこの波長は《《見る》》ということにはよく使うが、《《操る》》ということはしない。
精神の波長を操る……つまり感情を操るということ。感情が操れたら、話し合いに置いて自分に有利に話を進められたり、今のような打ち合いであれば、相手を怒らせて太刀筋を崩したり。人の精神を《《操る》》ということは非常に便利ではあるが、その時出てきている感情は自分に操られて出てきた偽物。そういうのは自分は嫌だし、やられる方も嫌であろう。だから《《操ること》》事態試したこともなかった。おかげで操ったことのあるのは自分のだけである。
波長が使えないとなるとあの二人を止めるのに使えそうなのはただ1つ、豊姫様の能力だけである。あのワープする能力、条件が自分の思っている通りなら、かなり有用だ。他に手が無くても、これだけで何とかなってしまいそうな位に。
取り敢えず豊姫様の能力の詳細が分かれば良いのだが、これがまた聞きづらい。能力と言うのは強いていえば前世でいう住所だったり、電話番号。その他諸々の個人情報みたいなもので、人に簡単に教えてしまえるようなものではないと自分は考えている。そんな大事な物の詳細など聞いて答えてくれるとも思わない。しかも、階級がめっちゃ下の俺からなど……普通教えないだろう。
「能力って教えてもらうことってできますか?」
とはいえ、聞かないことには始まらない。自らの気が怯まないうちに覚悟を決めて聞いてみた。
「教えても良いけれど…理由を聞いても良いかしら?」
やっぱり聞かれるか。そりゃ部下から「あなたの個人情報教えて!!」なんて言われたら戸惑ったり理由を求めたり……とはいえ今はちゃんとした理由があるので正直に答えたら良いだけだ。
「豊姫様が急に現れたり消えたりと不思議な動きをしていたので、転移系の能力かと予想しました。もしそうなら、あのお二人を止めるのに役にたつかと思いまして。」
「そう、なら構わないわ」
良かった。ちゃんとオッケーしてくれた。
「にしても気付いてたのね、私がちょくちょく移動してたこと」
「見てましたから」
「貴方みたいな玉兎は珍しいわね。良く観察できているわ。本当、あの子たちに見習わせてやりたい位だわ」
あの子たち?ああ、イーグルラビィのことかな?月の使者だし、指導位しているのだろう。
「それで、私の能力のこと、教えてあげる代わりにあなたの能力を教えて貰える?交換条件よ」
自分の能力?何故そんなことを聞くのだろうか。意味がわからない。玉兎は『波長を操る程度の能力』をもち優劣はあれど、自分以外の玉兎も持っている。それに玉兎はこの能力以外は持たず、なにか他の能力を持ったこともない。だから聞く意味がよくわからない。
あ、もしかしたら能力の有無を聞いているのかも。ここは無難に答えよう。
「波長を操る程度の能力です」
「そう、それなら良いわ」
少し残念そうに答える。結局、特に詳しくなど聞かれることは無かったのだが、いったい何だったのだろうか?深く問い詰められるようなこともなかったし……まあいいや、今は目の前の問題に当たろう。
「それで、どのような能力なんですか?」
「『山と海を繋ぐ程度の能力』よ」
山と海を……繋ぐ?自分が考えていた能力とは全く違うように思える。自分が予想していたのはもっとそれっぽい、いかにもワープしそうな能力……つまりそのままで『瞬間移動する程度の能力』とかそんな感じだと思っていたが、甘かった。能力名を聞く限り、転移したりとかいう能力でないことがわかる。だって山と海を繋いだところでワープとかはできるはずないだろう。
しかし、実際には消えたり現れたりとワープをしているような動きをしているので、この能力を使っていると思われる。だとすると能力の応用だろうか?どうやっているのかは分からないが。まあ、聞けば良いだろう。
「この能力、どう使うんですか?」
「そうねぇ……分かりやすく言ったら点と点を繋ぐみたいな感じかしら。点を自分の知ってる場所と場所に置き換えて繋げる、みたいな感じね」
ヨシッ自分の予想してた通りだ。これで、あの二人を止められる!にしても、知っている場所と言うことは、あの二人のところにも移動させることは出来るだろう。
そうと決まれば、早速やって……
ドゴォドゴォドゴォ
あぁ……道場が壊れてく。
やはり、某月姫はチート




