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転生しても嫁が好き  作者: RAY'S
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それでもなお、愛する者と共に

はじめまして、RAY'Sと申します。

何の気なしに書いてみた異世界転生物語です。

まーた異世界ものかよと、期待せず適当に見ていただけると嬉しいです。

―被害者の男性は重症。現在救助を…―

鳴り響くサイレンの音と救急隊員と思しき男の声、そして口の中に広がる鉄の味。

(あぁ、俺…死ぬのか…)


「今日は晴れたねー!絶好のドライブ日和だ!」

と言いながら晴天の元、高速道路を爽快に運転しているのはこの俺、田中京(タナカキョウ)。どこにでもいる普通のサラリーマン…ではなく、漫画家だ。

一流の漫画家を目指していた俺は断られる前提で自分の書いた漫画を出版社へ持ち込んだ。すると、数日後に出版社から電話がありまさかの1発合格、あれよあれよというまに書籍化、更にはにアニメ化、来年には映画化までと俺の人生は一転した。一緒に一流漫画家を目指していた友人からは「あの、なんだろう…簡単に夢叶えるのやめてもらっていいですかね?」と、どこかの論破王如き言葉を懇親の右ストレートと共に食らった事もあった。そんなこんなで休みなく働いていた俺はたまの休みは必要だろうと久しぶりの休みを満喫しているのであった。

「そうだな、最近忙しかったしこういう晴れた日に出かけるのはいつぶりだ?久しぶりなんだから美味しいもの奢れよな!」

と、助手席から人の肩をバシバシ叩くのは俺の嫁である理紗(リサ)だ。普段は俺がお世話になっている出版社の受付をしていて人前ではおしとやかさを演じているが、自宅など2人きりになった途端、男勝りなゲームヲタクに変貌するのだ。まぁなんというか、そういうギャップがあるところも含めて好きなのだが…

「何人の顔ジロジロ見てにやけてんだよ!きもちわりぃな!」

などと見つめられて恥ずかしいのか照れ隠しのつもりで肩を更に叩いてくる。嫁さんや、可愛いのはわかったんですけどそろそろ俺の方がミンチになりそうなので叩くのはやめて頂きたい。いやほんとマジで!

「な、なんでもないよ!それよりほら見えてきたぞ!赤城山だ!」

そう言いつつ彼女からの攻撃を回避し、目的地である群馬の山々が見えてきたのを伝える。

「おぉ、今日はあそこに登って夜は温泉に入るんだよな!」

「あぁ、まぁ登ると言っても赤城山は車で行ける範囲で登るだけだし、温泉街は赤城山とは反対の榛名山の下の伊香保だからほとんど車移動になるけど大丈夫かい?」

「気にしないって!それより長々と運転してるけど大丈夫?疲れたら変わるよ?」

「大丈夫大丈夫。運転してる方が楽しいし、気分転換にもなるからさ!」

気を使ってくれるところも夫的には高得点だぜ嫁さんよ。そんな話で盛り上がりつつ目的地へと向かった。

しかしなぜ、俺がこんなに美人でスタイルも良くて俺好みの女性と結婚できたかと言うと、それは遡ること数年前…とは言っても俺が出版社へ漫画を持ち込んだ時のことだ。受付にいた理沙に一目惚れして持ち込んだ帰りに好きです!と告白すると彼女は「漫画家デビューしたら考えてあげます。」と言われ見事漫画家デビュー。それを彼女に伝えるとあっさりOK。そのまま2人でゴールインというのが俺と彼女の馴れ初めである。理沙の方も、もしかしたらこの人は将来大物になるかもという自分のカンを信じた結果、それが見事に的中。天性のカンでもあるのだろうかと当時聞いた時は驚いた。

「ふふふ〜ん♪」

ま、経緯はどうあれ結果的に今は幸せな結婚生活を楽しんでいるという訳である。

「さて、そろそろ目的地に…ん?」(前の車が急に車線変更したぞ?なんだ?)

0.5秒ほど疑問に思ったが、その一秒後には全てを理解したのである。

「京!前から車が!!!」

と、彼女が言い終わる前に俺はハンドルを切り回避行動を取っていた。

「クソ!!!」

ガシャンという大きな音と共に俺の意識は遠のいて行った。


―何がどうなった?

意識が朦朧とする中、状況を把握しようとするが上手く頭が回らない。

(確か、車が逆走してきて…咄嗟に回避したけど…理沙は?無事か?)

助手席にいた嫁の方に目をやると、頭から血を流しているが呼吸はしているようだ。

(良かった、とりあえずは生きてるな…。俺の方は…くそ、下半身の感覚がない…こりゃ助からんかもな…)

どうやら運転席側だけ潰されて完全に下半身が動かないようだ。

(体のあっちこっちが痛い…口の中血の味で今にも吐き出しそうだ…くそったれめ…あぁ、俺は…死ぬのか…まだまだこれから理沙と2人で楽しい人生が待っているって言うのに…漫画もまだ、完結させてねぇってのに…ちくしょう…生まれ変わっても、また…理沙と会いたいな…)

今にも途切れそうな意識の中、どこからか声が聞こえた。


その願い、叶えてやろうか?


(…え?)

次の瞬間白い光に包まれ、俺は1度目の死を味わった。

それは、痛みと未練が混ざりあった死であった。



目を開けると、俺は何も無い真っ白な空間に1人椅子に座っていた。

「…あぁ、死んだのか。」

状況を理解するのにそれほど時間は要らなかった。さっきまで瀕死の状態だったのに、今は痛みも無いし苦痛も無い。

『やぁ、はじめまして京くん!』

不意に声をかけられ頭をあげると、そこには見知った顔があった。

「り…さ…??」

『あぁ、君に私の姿はそう映るのか!』

目の前にいるヤツは見た目は理沙なのだが喋り方や仕草はまるで違うものだ。

「誰だ、あんた…」

死んでも尚、自分の愛した人の姿で幻を見せようとしてくるそいつに少し怒り混じりで話しかけた。

『やだなぁ、そんな怖い顔しないでよー(笑)僕は君達の世界で言うところの神様だよー!その人によって僕の見え方は違うらしいけど、君にはそう見えるんだねー(笑)』

この胡散臭い喋り方で神様を名乗るとはますます怪しいし、理沙の顔と声でそんな喋り方をする事に腸が煮えくり返る思いだった。

「はん?神様?じゃあ何ですか?俺は死んだのでこれから天国に連れて行って上げますってか?しかもせめてもの情けであなたが愛した人の姿で送ってあげましょうってか?冗談じゃねぇぜ!失せやがれってんだ!」

俺は目の前にいる自称神様に怒りをぶつけた。

『あらら〜かなりご立腹の様子だねぇ〜(焦り)せっかく君にチャンスを上げようと思ったのにさぁ〜!』

チャンスだ?ふざけやがってと思いつつも俺は自分の書いていた漫画のことを思い出した。

「あ、さてはお前あれだろ?最近よくある異世界に転生させてあげますよーというやつ!俺も漫画で描いてたから分かるんだよ!どうせチート武器や防具、チート能力をあげるから魔王倒してこいとか、世界救ってこいとか言うやつだろ?」

『おやおや、説明が省けて助かるよ〜♪』

よく言うぜ、このペテン師野郎め、誰が魔王倒したり世界救ったりするもんか。どうせ異世界に転生するか、天国でつまらない日々を送るかとか選ばされるんだろ?

『では、君に2択の選択肢を与えよう!異世界に転生するか、天国でのんびり暮らすかの二択だ!』

ほーらきた、漫画や小説なんかでは異世界に転生して可愛い女の子たちとハーレム生活や勇者になって冒険したりとかするだろうけど、俺は違うね!ハーレムになんて興味無いし魔王退治や世界救うなんてこれっぽっちも興味ないから俺は天国に行かせてもらうよ!

「異世界転生なんて興味無いし魔王退治なんてくっそダルそうなこと絶対に嫌だね、俺は天国でのんびりさせてもらう!」

『あらら〜、異世界に興味無いなんてホントに漫画家だったのー?まぁ、君が望むならそれもいいけど…異世界に行くなら君の大好きな理沙にもう一度合わせてあげるって言っても、興味無いかい?』

…は?なんだと?こいつ今、なんて言った?

「…どういうことだ?」

『あぁ、君はあそこですぐ死んじゃったから知らないだろうけど、君の妻理沙は今生死の境をさまよって病院の集中治療室にいるんだよー(泣)』

「理沙は助かるのか?」

俺は震える声で神に尋ねた。

ニヤリと笑ったかのように見えたと同時にヤツは話し始めた。

『さぁ?それは君の選択次第さ!天国で理沙ちゃんの事を見守るもよし、異世界に2人で転生して暮らすもよし!選択権は今、君にあると言っても過言ではないよ〜!』

くそ、この野郎完全に俺の反応を見て楽しんでやがる。理沙の顔じゃなかったら1発ぶん殴っているところだ。

『因みに言っておくけど〜、もし二人で転生するって事になったら…今生死の境をさまよっている理沙ちゃんを1度殺すことになる。それは君の選択した結果で、君が望んだことで、君が彼女を殺したことでもあるからね?』

ヤツは先程のおちゃらけた喋り方と真逆の重みのある言葉で俺に言ってきた。

つまり…俺が彼女と異世界でも一緒に居たいと言うわがままを通すには1度彼女を殺さないと行けないという事…それは俺が殺したも同然だ。そんな事をして彼女は喜ぶだろうか?どことも分からない異世界に2人放り出されてやって行けるだろうかと色んな事が頭を過ぎった。

だが、

「構わない。俺のわがままで1度彼女を殺すことになっても、俺はその業を背負って永遠に彼女だけを愛し続けると誓ってやる!」

『ふふ、あはははは!』

神は笑った。

『最高だよ君!愛する人と共にに過ごすために愛する人を1度殺すとは!…これだから人間は見ていて飽きないな…!』

そう言うと俺の決意に満ちた顔を見て神は手を叩きこう続けた。

『素晴らしい!では、そんな君に僕から贈り物をしようではないか!本当は転生者には3つ願いを叶えて上げるんだけど、君は嫁と転生したいという願いを言ったからあと2つね!さぁ、なにか2つ願いを言いたまえ!なんでも叶えてあげよう!…あ、何でもとは言ったけど願いを叶えられる能力とかは無しね?それは今後の展開がつまらなくなっちゃうからね!』

メタい!でもまぁ、嫁と一緒に転生させてもらえて2つも願いを叶えてくれるならいいほうだろう。

「ちなみに、一緒に転生してくる理沙には同じく願いを3つ叶えさせてくれるのか?」

『それは無理だね!願いで蘇らせた人間の願いまで聞いていたら、さらにその蘇らせた人が願いで別の人を蘇らせたいとか、そう言う無限ループみたいになっちゃうからそういうのはなしなのよ〜』

ですよねー、まぁ分かりきっていたことだ。

「じゃあ転生してくる理沙に魔法や剣の技術など、ベテラン冒険者以上強くなれる能力を付けてくれ。それが1つ。あと1つは.俺にもある程度魔法や剣の技術などの素質を普通の冒険者レベルぐらいで身につけられるようにして欲しい。別に勇者レベルとかにしなくていいから。」

『ふむふむ、君は賢いね。いいよ!それぐらいならお安い御用さ!』

ふぅ、これで何とか向こうの世界に行っても生活には困らなそうだ。

『ただし、願いにはペナルティも存在する』

「はい?」

ちょっと待て、そんな話聞いてないぞ?

『当たり前じゃないか、そんな簡単に願いが叶ったら神様なんて要らないでしょうが!』

このクソ神様は…

「そういうのは最初にだな!」

『もう願い受理したので無理ですー!はいざんねーん!』

くっそ、小学生みたいなこと言いやがってこのペテン(しん)め!


『因みにペナルティの内容だけど、君は嫁を永遠に愛すと言ったね?だから永遠の愛が本物かどうか試させてもらう為に、君たち2人は死なない体、つまり不死として転生させることにしたよ!まぁ、不死とは言っても体は傷つくし、痛みもある。死なないってだけだからそこは勘違いしないでね!あと、もし君が嫁を裏切って他の女に手を出したり浮気したら、死よりも恐ろしい苦痛を2人に与えなきゃならなくなっちゃうから気をつけてね(灬ºωº灬)てへっ♡』

「てへっ♡じゃねぇよ!なんだよ、死よりも恐ろしい苦痛って!怖ぇよ!」

『まぁまぁ、君たち二人の愛は本物なんだろ?なら、大丈夫だよねー?』

上等だコノヤロウ、やって野郎じゃねぇか!どんなに可愛い美少女が擦り寄ってきてもぜってぇ浮気なんてするもんか!

『次に2つ目の願いのペナルティなんだけど、それなりの力や魔法を欲するんだからそれなりのモンスター達には襲われて撃退とかしてもらうよ?強敵と呼ばれるモンスターが月に1回は来るから覚悟しておいてねー!』

まぁ、月一程度なら大丈夫か…大丈夫だよね?

『最後に3つ目の願いのペナルティは、最低でも1日一体はモンスターを狩ってね!因みに病気や怪我、事故等で狩れない時はペナルティ発生しないから御安心!』

わお、なんて優しい神様なんでしょう!

『それじゃあ最後に…』

「まだなんかあるのかよ!いい加減早く嫁に会わせろ!」

『まぁまぁ、これが最後だからさ!』

と言ってコホンと咳払いの後に自称神様はこう言った。

『それではキョウくん、良い人生を!』

うるせぇ、そこで一生高みの見物してろ!

と、思ったのもつかの間。また白い光に包まれ俺は意識を失った。

この度は読んでいただきありがとうございました。

至らない点、読みにくい点などあると思いますが、どうぞ最後まで付き合ってくれると嬉しいです。

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