一人飲み会(上)
初投稿。宜しくお願い致します。
居酒屋。今日はバイト先のメンバーと懇親会を兼ねた飲み会の日。小さなスーパーのオープニングスタッフとして採用されてはや一ヶ月。オープン前日というこの日に、ノリのいい学生連中が企画し今日に至った。
私はあまり大勢でいるのは得意ではなく、話すことも上手でない。故に会話にいまいち馴染めておらず、時々口を挟む程度だ。しかし、強制参加だから仕方なく来ているとかそういうことでもない。
ではなぜ参加しているのか。それはひとえに、断りづらかったからだ。特別な理由では決してないのである。
小学生の頃から人に合わせたりすることが苦手で、休み時間も一人でいると体育の時間は先生がパートナーだったし、中学校の林間合宿ではいつの間にかの班長にされた挙句、一人でスタンプラリーに回る羽目になった。
極めつけは高校の文化祭。クラス内のSNSに誘われず、その中で出し物の会議が夏休み中に行われたため、気がついたらなんの役割もなくただ空き教室で3年間を過ごしていた。因みに、高校の文化祭の出し物が挙手性ではなく、クラス単位で強制だということを知ったのは、怠惰な教師の助けもあり卒業したあとだった。
閑話休題。とにかく今までの学校生活で紆余曲折あったおかげで、人付き合いが乏しい私はそのようなインフォーマルな社交会に呼ばれた覚えも、断った経験もないのだ。少しカッコつけたがちなみにフォーマルなそれも無いのだが・・・。
誘いのメッセージを見たときの顔は自分ではわからないが、嫌いな食べ物を食べながら舌を噛んだような形相をしていたのではないだろうか。必死で断ろうと返事を考えたが言葉が出てこず、既読をつけた焦りも相まって
「No Problem」と答えた。因みに返事は「草」だった。家族以外とは久しぶりなんだよ変な返ししかできなくて悪かったなチクショウ。
今は乾杯の音頭も程々に、各々が好きな飲み物を片手に、食事を分け合い談笑に勤しんでいる。
そんな片隅でひっそりとウーロン茶を飲みながら、うんとへーを連発しながら、たまに会話に混ざる程度で、どうにか馴染めているような雰囲気を取り敢えず醸し出している。
「佐藤さん、お酒飲めないのですか?」
「そうなんですよ。だから正直今日も来ていいものか迷ったんですよね」
隣に座った子はビールを片手に聞いてくる。話を振らない私にも、斜め前に座る女の子にも食事を取り分けたりの気配りができるとてもいい人だ。
「そんなそんな、誰も気にしないですよ。一回も飲んだことないのですか?」
「いや、何度かありますよ。ただ、缶チューハイ半分くらいで頭が痛くなるほどの下戸なもんでして・・・」
「そうなんですか。とりあえず、何頼みますか?日本酒とか飲んでみます?」
「話聞いてましたかねぇ!」
笑いが起こる。こういった弄りは嫌いではない。あまり度が過ぎたり、尊厳を攻撃するようなものでないものに限るが。私を包む雰囲気が弛緩し、とても心地がいいからだ。
次々流れてくるコース料理に、これは美味しい、これは嫌いだなどと失礼にも批評をしながら、緩やかに時間は過ぎていき、やがて話の種も尽き始める。酔いが回ったみんなの顔を眺めながら、一人蚊帳の外に静かに離れる。
ここから私の本当の楽しみは始まるのだ。