第9話 「それぞれの思惑の元で」
「…ここが俺達の村だ。」
そこは寒村と言うに相応しい寂れた村だった
「ひぃぃ~っ⁉」
「何で骸骨と一緒に!?」
村にいた男達は農具を持って俺の前に立ち塞がった
「あぁ、こいつは平気だ。俺達の味方をしてくれるらしい」
「…初めまして、カズヤと言います」
「なっ⁉こいつ喋ったぞ?」
「きゃっ⁉」
カズヤは苦笑する
「そんなに喋るのは珍しいですか?」
「ああ…骸骨共が喋るなんて聞いた事がない、それどころか感情も感じた事もねぇよ」
そうなんだ?
となると何で人を襲ってるんだ?
「あの…1つ聞いて良いですか?」
「…何だ?」
「その骸骨達は村を襲って何を奪うんですか?」
「いや?ただ破壊を繰り返すだけだが…おかしいのか?」
「えぇ、人を…村を襲う理由がないから不思議なんです」
「…成る程、そう言えばそうだな」
村を襲うのであればそれは「食欲」か「征服欲」を満たす為にとか何らかの理由があって当たり前なのだ
「では何故…」
村の男がこう呟くと皆黙り込んでしまっていた
「とにかくせめて理由位は聞き出したいと思います。話が通じるのであれば止める様に説得します」
「…あぁ、頼む…」
村の男は神妙な面持ちでそう答えた
「それから骸骨共にはどう対処するんだ?ここで待って襲って来るのを待つか?
それとも骸骨共の住処に乗り込んでみるか?」
「…襲ってきてからでは被害を抑え込む自信はありません。今から出向いて説得しようと思います
…俺がここにいては皆さんも気が気じゃないでしょうからね」
カズヤは怯えて母親の背に隠れる子供を見ながらそう言った
「…確かにな。だがお前があの骸骨共と結託しないとも限らん。」
「成る程。…では誰か見張りをつけて下さい。俺が敵に回るのか、味方として説得しているのかを安全な所から見ていて下さい」
「…よし、分かった。では骸骨共の住処迄案内しよう。おい‼フィード‼俺と一緒に見張りだ‼」
「えぇ?俺もかよ…」
「お前程すばしっこい奴はこの村にいないんだ‼最悪俺かお前が村に戻って知らせないと意味がないだろ⁉」
「ちぇっ、分かったよ‼」
「と言う訳だ。アイツはフィード、俺はガストンだ。」
「宜しく、ガストンさん、フィードさん」
こうしてカズヤ達は骸骨達が巣くう山の洞穴へと行く事になった
ー道中ー
「なぁ、カズヤさん…だっけ?アンタは何でその…骸骨になったんだ?」
「ああ、お気になさらずに。
俺はこの間迄ゾンビだったんですが世を儚んで酸の沼に身投げしたら死ねずにこの姿になったんですよ」
「…何だか聞いて悪かったな…」
「あはは、本当に気にしないで下さい。こういう姿なのは現実ですからね」
「…お前は強いな」
「そうですかねぇ?」
「普通はその姿になれば正気ではいられないだろう、人間だった奴が逆に人間に疎まれるんだからな」
「まぁ…そうですね。そういう意味では辛酸を舐めましたよ」
こうして三人は骸骨達の巣くう洞穴近くに到着した