第8話 「化け物扱い」
ーザッザッザッザッ…ー
カズヤは背に刀を帯びて森の境目を突き進む
今迄に分かった事は神経を研ぎ澄ますと「気配」が察知出来る事だった
範囲的にどの程度が察知可能かは分からないがさっき察知した魔物の気配が
歩いて20分程度経ってから遭遇した事を考えるとかなり広範囲に察知出来るのだろう
それにしてもこの高揚感は何なのだろう?
人に怯え魔物に怯えていたあの頃から比べたら身も心も軽やかなのだ
何ならスキップでもしながら進みたい位である
まぁ実際スキップして突進する骸骨など本人ですら恐怖の対象になりかねないので歩いてはいるが。
「ひっ⁉キャァァァッ‼」
「…しまった⁉」
うっかり油断して人間に発見されてしまった
腰を抜かしてアワアワしている女性に近づくとカズヤはニッコリと笑ってこう言った
「お嬢さん、俺は人を襲いませんから安心して下さいね」
震える女性をそっと立ち上がらせるとカズヤは片手を挙げてその場を立ち去った
。。。?
し、しまったぁっ‼
「ニッコリ」出来ないじゃん⁉
骨なのにニッコリとか!
カズヤは恥ずかしさに顔から火が出る思いをしたが赤くなる皮膚すら持たないので
外見上何が起こったのか判断はつかない
「と、とにかく前進だぁっ‼」
カズヤは照れ隠しで大声を張り上げた
目的はあれど宛のない旅はまだ始まったばかりなのだ
森が切れ草原を抜けると目の前に広大な砂漠が現れた
(そう言えば前回のターン?ではこの辺歩いた事なかったなぁ)
ゾンビ無双していた時は主要な国や町を転移で飛び回っていただけで砂漠や山岳部等は
「見守り君」のビットを通した映像でしか見て来なかった
今こうして地に足をつけて歩く事になるとは思ってもいなかったのだ
「生きている者にとっては砂漠は恐怖の対象だけど俺には砂紋が広がる美しいキャンバスだな」
「あっ…あれよっ!」
「皆の衆、行くぞ!」
「おぉ!」
カズヤは人間達に包囲された
見れば先程会った女性の姿が見える
「いくぞ!おぅりゃあっ‼」
「えいっ‼」
「死ねぇっ‼」
ーカカッ、カキーン‼ー
振り下ろされ突かれた人間の攻撃は全てカズヤの体に弾かれた
「な、何だ⁉斬れねぇぞ?」
「どうなってんだ⁉」
襲ってきた人間達は動揺を隠せない
カズヤも突然襲われて動揺を隠しきれない
(…やっぱり俺は討伐対象か…)
落ち込むのは早過ぎる。
先ずはこの状況を何とか被害0で切り抜けなくては
「あ、あの…」
「⁉」
「ひいっ⁉」
「な、喋ったぞ⁉」
「俺は皆さんに危害を加えるつもりはありません。どうかこのまま行かせて下さい」
「。。。ほ、本当か?」
「はい。俺も「元」人間です。皆さんを傷つけたらご家族が悲しむのは十分理解出来てますから」
「…本当にだよな?」
「はい。あ、出来ればこの辺に…」
そうカズヤは口に出してから訊くのを止めた
(仲間を呼んで復讐しに来るのか?)という余計な誤解を招きかねない。
「いえ…この辺に誰の迷惑も掛けずにひっそり暮らせる場所はありますか?」
これなら最悪再び討伐の手が伸びてもカズヤ1人で済む
「…お前はあの山の骸骨共の仲間じゃねぇのかよ?」
(あ、ナイスリアクション♪)
「えぇ、違いますし場所も知りません」
「な、なら助けてくれねぇか?」
「はい?」
「俺達の村は時々骸骨共の襲撃を受けて被害が出てるんだよ…骸骨同士なら話して止めさせるとかさ、出来んじゃねぇのか?」
…突然襲ってきておいて助けてくれとは何と傲慢な事か
だがそれが人間の性だ、とも理解出来ているカズヤは
「なるほど…お力になれるかどうかは分かりませんが試すだけは試してみましょう。
ただ期待はしないで下さい。俺もこの体になったのはつい最近なんです」
「あぁ、分かった。頼む」
村の男の目は強い猜疑心に満ちていた
(疑ってる相手に自分達の存亡を託すとはね…)
カズヤはカカッと笑った
とにかくこうしてカズヤは村の為に骸骨達を説得する事となった