第5話 「無情を断ち切れ」
。。。
「うっ…」
俺は「何故か」目覚める
(…死んだんじゃなかったのか?)
記憶の断片に確かに脛椎が砕き折れる音と鈍い振動はあった筈なのに…
そっと首に手をやろうとして気が狂いそうになる
俺の右手は肘から先が「無かった」
こんな…こんな…
余りの事に次の言葉が思い浮かばない
慌てて体を起こそうと力を入れる
「っ‼ゴボァッ⁉」
口からどす黒い血と共に何だか分からない肉片が飛び出す
何とか体を起こして立ち上がろうと力を込めた
ーボトッ。ボタタッ。ー
「あ…あがぁぁぁぁっ!」
落ちたのは内臓の残骸だった
俺は泣きながら辺りを見回し己の体の欠片を拾い集める
右手、右足…骨…
(あ…)
目の前に落ちていたのは顎の骨だった
もう感情は無くなった
ただただ肉片や骨を拾い着ていた上着の上に乗せた
怨嗟の思いも消え失せた
疑問も憂いも消え去った
ただただ集めた肉片を左手に持ち這いずって先に進む
世界は無情で残酷だ
少し進むと沼が見えた。
近づくとその沼がたたえていたのは水ではなく酸の様だった
辺りには白骨化した獣の骨が転がっている
(…これで終わりにしよう…)
ゾンビとして転生し疎まれ終われ魔物に食われて辿り着いた安住の地は酸の沼での永眠だった
ージュウゥゥゥ…ー
肉片を包んだ上着から垂れる血が沼に滴って音と煙を立てる
本当にもう…終わりにしてくれ…
俺は崩れていく体を沼の淵に沈めた