第43話 「決戦part5」
《なっ?け、けひゅっ⁉》
情けない声をあげるワール王の前に弑逆した筈のドラグ王、洗脳して下手人にした筈のフェルト、
罪を被せて消滅させた筈のスケルトン、今は青年の姿になっているカズヤが立っていた
『ワール王…いやワールよ。お前はもう終わりだ。』
《な、何をっ⁉》
『お前の策略は既にカズヤによって全ての王に暴露されている。
依ってお前は既にレイスの王でもないのだ。』
《あぁ、さっきカズヤが消されたのにはビックリこいたけどお前ぇの悪巧みはとっくにバレてんぜ?ワールさんよぉ‼》
((見損なったぞ、ワールよ))
「ワシを嵌めようとしおってからに…赦せん!」
《あぁ…カズヤ様…濡れちゃう☆⁉》
「。。。最後のは聞かなかった事にして…もう終わりですよ?ワールさん」
《ばっ、馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿な馬鹿なぁーーーっ!そんな馬鹿な事が許されると思っているのかぁっ!》
「馬鹿を連呼しても状況は変わりませんよ?証拠も証言も揃ってますし部下達も既に捕縛してます。
許すも許さないも貴方にその権限はもうありませんよ…」
ワールが謁見の間の入り口を見やるとビレイ達が捕縛され跪いている
《クッ‼あ、あははっ!私はお前の掌で踊らされていた訳だ⁉何と滑稽なっ‼》
『ワールよ。貴様には今この場で判決を下す。地下の永久凍土に投獄、禁固三千年の刑に処す』
これだけの騒ぎを起こした者にそれでも温い刑だとは思うがレイス族の分裂を避ける為の処置であった
《ふ、ふふふっ…誰が…誰が禁固三千年など受けるモノかっ!》
そう言い放つワールの魔力がどんどん膨らみ捕縛していた縄と押さえていたドラウグル達が弾け飛ぶ
「…ワールさん、往生際が悪いですよ?」
《ククク…何を悠長な事を。私は禁術のグリモワールを以て貴様達を地獄に送ってくれるわっ!》
ワールの気が更に膨れ上がり周囲の者には重力となって襲いかかる
ービキッ‼ビシッ‼バキキッ‼ー
凄まじい魔力の塊に謁見の間の柱や天井が崩れ出した
《うおっ⁉》
((ーっ‼))
《きゃあっ⁉》
『クッ‼』
崩れ落ちる破片を受けてドラグ王達はダメージを受ける
「A○フィールド展開っ‼」
ー…~ン…バキキッ!ー
《((《『え?はっ⁉』》))》
無数の破片を防ぎ切れずに怪我を負っていたその場の全員がカズヤのA○フィールドに包まれ驚愕する
《ぐわぁぁぁっ!!》
ーガガーーーン!ー
ワールはそのフィールドから弾かれ場外に吹っ飛んだ
《き、貴様!な、何者だっ⁉》
ワールは怯えた目でカズヤを見つめる
「ん?俺ですか?俺は通りすがりの…何でしょう?」
《知るかっ!》
ワールはカズヤに向けて攻撃呪文を繰り出す
ーキュイィィン!キュバッ!ー
ーバギィィン!ー
《く、くそっ!》
ワールの攻撃呪文は全てカズヤのA○フィールドに弾かれあちこちに着弾している
カズヤが右手を差し出すとその掌に一振りの刀が出現する
「生太刀」
前のターンで強大な力を持つ悪魔をも圧倒した神代より伝わる古の「神殺しの太刀」である
太刀から発せられる禍々しい圧にワールは怯えた
《くそっ!こうなれば私の命と引き換えにこの世界を消滅させてくれるわっ!》
ワールは自身の胸に手刀を突き刺す
《ゴブッ‼…古の悪魔よ私を依り代にして蘇れっ‼》
突如ワールの体に魔方陣が幾層にも浮かび上がり召喚術が完成する
召喚されたのは…「闇」だった。
その闇から無数の手が伸びワールの体に絡み付く
《違う‼私を「依り代」にと言った筈だ!やめろぉ!やめ…》
無数の手はワールの体を闇の中に引き摺り込んだ
『…終わったの…か?』
ドラグ王がそう呟くが未だ魔方陣は消失していない
それどころか魔方陣は輝きを増し回転し始めたのだ
((…あれは?))
ガイア王が何かを見つけて指差す
ワールの召喚した闇の中から黒い物体が現れる
「俺様華麗に復活っ!」
深淵から現れたのは一柱の悪魔だった
「フフ…フハハハッ‼これから俺様の華麗な復讐劇が始まるぜっ!手始めに目の前にいる…って小僧‼てめぇ‼」
「ん?」
カズヤは既視感に囚われる
黒い薄刃の刀を持つ悪魔?
あれっ?
「この野郎!忘れたとか言わせねぇぞ!よくもあの時は訳分からん次元に飛ばしやがって!」
「…あー、あの時の‼」
カズヤは漸く思い出した
大神様の試験の時、ブラックホールでどこぞに飛ばした悪魔だ。
《カズヤ様?お知り合いですか?》
ラクルはカズヤに訊ねる
「まぁ知り合いっちゃ知り合いか?てか何で此処に?」
「フハハハッ‼お前にあの変な技で亜空間に飛ばされた俺は虎視眈々と召喚者が現れるのを待っていたのさ‼
まさか喚ばれた先にお前がいるとはな!丁度良い、先ずは貴様を地獄に送っ…」
ーギキィィィン…キュイィィ~ー
「あ‼ちょっ⁉待てやコラァ‼」
カズヤは悪魔が口上を陳べている間に前回使った技を展開していた
A○フィールドで悪魔の周りの空間を遮断、中心に小規模のブラックホール(黒い玉)を発現させ重力場を形成する
「馬鹿めっ‼俺様が同じ技に2度も引っ掛かるモ…⁉」
重力場に引き込まれまいと自身の周りに力場を形成して耐える悪魔の目の前に白い玉が現れた
「?何じゃあ?こりゃあ⁉」
「あぁ、知らなかったか。あれからアンタより強い敵と戦ってね、それで編み出した技なんだ」
カズヤは事も無げに答える
悪魔は前後を粒子と反粒子に挟まれ対消滅の渦に巻き込まれる
「て、てめぇ‼前にも言ったが戦いってのは剣と剣、拳と拳で戦うモンだって言ってんだろ‼」
「えー?だって格闘じゃアンタに敵わないじゃん」
「そうだよ‼そんで俺様がお前に勝って復活を祝うっ…痛てて⁉」
「あ、因みに前回は「何処かに飛ばした」けど今回は「原子レベルで消滅」しちゃうからね、復活は無理かな?」
「ちょっ⁉ま、待て‼話を聞いてくれっ‼」
「待てって…止められないんだ、それ」
ーギィヤァァァッッ‼ー
ワールが命を賭して召喚した悪魔はカズヤによって数分で消滅させられてしまった
これによりワールの企みは完全に潰えたのであった