第4話 「非情は常に身の回りに」
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「ぐがぅっ‼ぐああああ~‼」
俺はパージの悲鳴を聞いて閉じていた目を開いた
藪から頭を出して村の跡地を見ると衛兵?らしき甲冑を着けた男達がパージを倒している所だった
(パージ…)
俺は既に動かなくなってしまった友を偲んで泣いた
こうなる事は分かっていたのだ
自分もいずれあんな風に誰かに倒されるのだろう
転生してゾンビになって倒されるのを待つだけの存在…このターンに何の意味があるのだろう
…神様、前の様に出て来て下さいよ…
別に能力を授けて欲しいとは思わない、ゾンビから神へとなりたいとも思わない
ただ…ただこの転生の意味を、
無意味な人生を送らせる理由を教えて下さい…
カズヤはいつの間にか手を組んで祈る様に膝をついていた
神様も誰にも届かぬ祈りに近い悲鳴を心の中であげていた
ーその夜ー
気が付くと既に日は落ち辺りは闇に包まれていた
…ウォォーーン…
狼だろうか?どこからか遠吠えが聞こえる
(ここにいてはダメだ、とにかく森を通って人に見つからない場所に移動しよう)
俺は鈍い体を必死に動かして森の奥へと進んでいく
…ズルッ…ボトッ…ズザザッ‼ー
「あ、足がっ⁉」
突然倒れてしまう
俺は自分の足が腐り落ちてもげてしまった事に半狂乱になり取れた足を必死にくっ付けようとする
ーグチュ、グチャ…ー
。。。もう無理だ…限界だっ!
何の、何の恨みでこんな事に⁉
何だよ‼こんな辛い思いをさせるなら前世で死んだまま放っておいてくれよ!
もう感情を抑え込む事は無理だ
「が…がぅあぁぁぁぁっ!!」
…ウォォーーン
俺の声に応える様に遠吠えが…
さっきよりかなり近い⁉
(もしかして獲物は俺か?)
乱れた心は恐怖に塗り替えられた
動けぬ体で襲われたとしても出来る事は少ない
出来る事は生にしがみついて足掻く事よりも少しでも早く命を刈り取られるのを願うのみだった
ーガサッ…ガササッ‼ー
。。。グルルルッ…ガウッ‼
月明かりに照らされたその姿は一匹のブルピットだった
パラレル世界でカズヤが能力を使って初めて倒した魔物…
ソレは本能に従って俺の喉笛に食らい付いた
(あ、終わったな…結局何だったんだろうな…この転生人生は…)
ブルピットが荒々しく首を振り「ゴキリ」と脛椎が折れる音を聞きながら俺は意識を手放した
辛く下らない人生の幕引きがせめて人によるモノでなかった事を喜びながら