第36話 「魔導具の秘密」
ースーーー…ー
レイス領ワール王の館の中をビレイは進む
レイス族は霊体が多く足音もなく飛んで移動する者が殆どだ
カズヤはビットのステルス機能を更に上げて尾行させる
これから向かう先は話の流れから言って「魔導具」の下か開発現場だと予測される
そうなると警備も厳重だろうし彼等の得手は魔術なのだ、どんな障壁を仕込んでいるか分からない
ーピッ‼…対重力・対圧・感音・対振動・対温度センサーに反応、ステルス機能を強化しますー
おぉ~、凄まじい障壁の数だな
他にも多分色々仕込んでるんだろうな…それだけ魔導具の重要度が高いって事か。。。
《例のモノは完成したか?》
《は、後少しです》
《我が君の仰せだ、至急完成させよ》
《はっ‼》
んー、ビレイと部下さん達で魔導具が良く見えないな…ビットを動かしたい所だけど
流石に今動かしたら本人達の障壁に触って感付かれるだろうな…
カズヤはPDAを下から斜めに見たり横から見たりと無駄な努力をしている事に気付いて苦笑した
「分かってるけど何かやっちゃうんだよなぁ~」
カズヤは今は無き髪の毛をポリポリと掻く仕草をした
カズヤがビレイに付けたビットの映像に注目しているとドラグのビット映像にも動きがあった
『ラクルを呼べ』
(ラクル?腹心の部下かな?)
ーコンコン、入りますー
『来たか』
『はい、お父様』
えっ?
カズヤは画面を見て釘付けになった
翡翠色の髪と瞳、背中に生えた蝙蝠の羽、豊満な体を惜しげもなく魅せるコスチューム…
ラクルの姿は前世のゲームで人気のあったモ○ガンにかなり近かった
(こんな所で実物(に近い)と対面するなんてな…オタに自慢したら刺されそうだ)
カズヤ自身は特に感情移入はしない質ではあったがこれほど似ていればそうでなくも興味は湧くのだ
ラクルはそれほどの『容姿』であったのだ
『ラクルよ、カズヤをあらゆる手段を用いても籠絡せよ』
『お父様、それは構いませんが…問題が…』
『何だ?』
『あの者は肉体がありませんのでちょっと…』
『カズヤの今の姿は恐らく仮初めだ。本来の姿は普通の人間と変わらぬ筈だ』
『まぁ‼それならば楽しみですわ♪』
『くれぐれも悟られぬ様注意せよ』
『はい、お父様』
。。。オイオイ、自分の娘使って色仕掛けかよ?この場合は美人局って可能性もあるな…
とにかく素性がバレない様に気をつけなくちゃ‼
カズヤは吸血鬼の固有能力である「魅惑」に対抗する為にコンタクトレンズを具現化したが…
「目がないじゃんっ‼」
仕方ないので某宇宙探検ドラマの盲目な乗組員が付けていたヴァイザー(VISOR)を具現化して装着した
「何かサイバーパンクっぽくなっちゃったな…」
しかしこれがないと多分魅惑が防げない。
「防ぎたくないけど防げない」のだっ!
「さて、「いつもの」訓練をするか‼」
ーボフッ!ボフッ!ボフッ⁉ー
カズヤは元の姿を取り戻すべくあらゆる手段を講じる
いつもよりも熱心なのはきっと気のせいだろう。
いや、気のせいだ。
この日カズヤの努力は実らず心が折れてふて寝(の真似)をしたが
翌日の朝に試したら完全復活に成功してしまった
「…これでいつラクルに技を掛けられても大丈夫だ⁉」
何故か掛かる気満々のカズヤであった…
ー少し時間を戻してビレイ達の会話ー
《あの魔導具は本当にドラグ王様を死に至らしめる事が可能なのだろうか?》
《肉体を持つ生物であれば防ぐ事は不可能ですが…
バンパイアは固有能力が各々特殊で秘匿されておりますので未知数な部分は否定出来ません》
《…万が一の場合に備えて他の策も準備させよ。》
《はっ‼》
ワールの部下ビレイは不測の事態に備え自らも策を講じるのであった
ーコンコンー
「はい」
《よぉカズヤ‼今日も来たぜぇ‼》
「グズリ王、どうしたんですか?」
《いやぁ、お前とは仲良くなりたいんだよ。クリムを片付けてくれたし全王とも仲良さそうだしな》
「あはは、随分あけすけなんですね」
《俺は駆け引きは苦手だからな。気に入った奴には隠し事はしねぇんだよ》
「なるほど、俺もそういう性格は大好きですよ」
《だろ?さぁさぁ酒も食い物も用意したぜぇ‼飲んで食って騒ごうじゃねぇか‼》
「…俺が骨だっての忘れてます?」
《。。。あ…》
「あはは、冗談ですよ。他の王様達には内緒にして下さいね」
ーボフッ!ー
《お?おぉ~⁉何だよ?お前変身出来るのかよ?》
「やっと元の姿に戻れる様になったんですよ。グズリ王だけ教えますね」
《俺だけ、か‼気に入った‼じゃあバンバン飲もうや‼》
「はい‼」
こうしてカズヤとグズリは飲み明かすのであった
急用で出掛けてましたが初志貫徹、残りも投稿します