第35話 「スカル王始末」
クリムの策略は自ら劇毒を浴びて悶死すると言う凄惨な形で終結した
五大王による統治はネクロポリスの基本理念だそうで次期スカル王はいずれ
王座決定戦という立候補者総当たりのトーナメントを行って決めるそうだ
王と参謀を失った今、スカル王の代理は長年クリムに虐げられていた宰相のボンドという人が担っている
カズヤはこの事件を取っ掛かりにしてこの国を去る理由にしようとドラグに上奏したのだが
ドラグ本人にもう少し滞在して先の無礼の詫びをさせて欲しいと言われて泣く泣く断念していた
まぁドラグにしてみればクリムなどどうでも良く本丸のワールに首輪がつけられていないのでは
カズヤをエサにした自身の策略が宙に浮いてしまう為、お互い苦しい理由を押し付け合ったのだ
《ゲゲゲッ‼クリムの野郎腐る俺を散々バカにしていたがアイツも腐る部分が残ってたんだな‼》
グズリは憎きクリムが惨めな最後を迎えて上機嫌だった
《にしてもカズヤは俺にない利口さがあるなぁ…是非にも仲間にしたい所なんだが…》
ーゴーレムの里ー
((彼には何か特別な力を感じる…味方云々よりも良い付き合いをしたいものだ…))
ガイア達ゴーレム族は不老長寿に近い生命体が故に些細な権力争いには興味がなかった
ただカズヤから感じる不思議な波動はガイア自身興味を惹かれるモノだったのだ
((カズヤが去る前に友の契りが結べれば良いが…))
ガイアは用意された岩のサラダをゴリゴリ噛み砕きながらボンヤリ考えていた
ーレイス領ワール王の館ー
《ビレイ、ビレイはおるか?》
《はい、ここに。》
《見たか?ビレイ、あのクリムが自滅しおったわ‼》
《はい、水晶玉にてしかと。》
《あのカズヤという骨は予想以上に働いてくれるわ‼あっはっはっ‼》
《我が君、あの計画はそのまま続行しても宜しいのでしょうか?》
《うむ。ドラグの奴め、いつまでも私がへり下っているとは思うなよ?
あの魔導具とあの骨があれば必ず滅せようぞ》
《…分かりません…あのスケルトンがそれ程の力を?》
《力量云々ではない。肝心なのはドラグの私室に入れる者だ、という事なのだ‼》
《私室に?》
《ああ、奴の私室に入れたのはここ数百年でカズヤだけだ。それだけ気を許しているという証でもある》
《気を許す…それだけ暗殺出来る機会があると?》
《そうだ‼奴は公務の時は殺せん。選別眼の能力でほぼ全て見通すからな‼忌々しい‼》
《そこであの魔導具ですか》
《フフッ…カズヤにアレを持たせて私室迄運べば…フハハッ‼》
《御心のままに、我が君よ》
《フフ、フハハハッ‼》
ーカズヤの部屋ー
「…まぁ良くも盛大に語ってくれるなぁ~。こっちとしては助かるけどさ」
カズヤはPDAからもたらされる各王の動向をくまなくチェックしている
特に危険度が高いのはワールだと言うのも証拠映像と共にバッチリ抑えた
「しかし…「あの魔導具」って何だろう?ビレイさんって人にもビットを付けておく必要があるな…」
そう言うとカズヤはワールに付けているビットを遠隔操作で分裂具現化をしてターゲットをワールとビレイに変更した
「これで魔導具の謎が解ければ御の字だな」
今まで無力だった頃の苦悩は具現化能力の復活により払拭されてしまった
無から有を生み出しカズヤのイメージは全て具現化出来る
物質世界に於いてこの能力は正に神の御業なのだ
さて、グズリ王とガイア王はほぼ友好的だしワール王の対「策はしたし…
後はドラグ王の本心だよなぁ~…選別眼持ってるからか本心が読めないんだよな…」
カズヤは私室にて物思いに耽るドラグの映像を見て嘆息する
「今やれる事はグズリ王とガイア王と友達キャンペーンかな?」
そう呟くと以前の様に飛行能力か転移で二人の下に飛ぼうと思ったが思い直して中止した
能力は可能な限り秘匿した方が勝ちなのだ
特に王を名乗る彼等には致命傷とも成りうる為ここは無能なスケルトンを演じつつ彼等の登城を待つ事にしたのだった