第33話 「誰が最初に?」
明け方散々騒いでいたグズリはカズヤの部屋から立ち去った
「はぁ。。。飲み食い出来ないってのに苦痛だったな…踊り子さんは美人だったけど」
カズヤは一気に老けた気がしたが骨には影響がなかった
(さぁて、大体だけど王達の関係が読めてきたから今の内に整理しておかないとな)
カズヤはこのままでは立ち去る事が叶わないと判断し、王達の関係図を作成する
因みに前のターンでも有用だったPDAは欲しいと願ったら音速で発現出来ていた
「え~っと…」
カズヤがPDAに書いた関係図はこんな感じだ
・全王ドラグ→
多分最強、選別眼持ち、クリムとワールとは仲が悪い
・スカル王クリム→
脳筋、敵意剥き出し、根に持つタイプ
・ゴーレム王ガイア→
無口、念話が出来る、多分温和
・レイス王ワール→
多分腹黒、全王の椅子を狙っていそう、強そう
・ゾンビ王グズリ→
お調子者、気さく、何を考えているか読めない、クリムを敵視
「まぁ今の所こんなモンかな?」
カズヤは持っていたタッチペンでトントンとPDAの画面を叩く
「ドラグは要注意だな…何か俺の素性がバレてる気がする…クリムやワールは感情駄々漏れだから分かり易いし…
ガイアは何か考えが駄々漏れだから大丈夫そう。グズリは…一癖ありそうだな」
カズヤは目下の敵になりうる王を検討する
「直情的なクリムが最初かな?あー、嫌だなぁ…出来ればそっと帰してくれたら最高なのに…」
カズヤは誰もいなくなった部屋で様々な攻撃を想定して準備を進めていく
勿論だが「元の姿」に戻るリハビリも欠かさない
ーボフッ!ー
「あー…もうチョイかな?」
前回は巨○兵だった外見が今はキカ○ダー位の肉付きになっている
「トラウマ克服にはもう少し時間が掛かるか…」
何か明るい話題でもあればもっと早く元に戻れるのに…
カズヤは浮かない表情…はないので雰囲気を醸し出してため息を吐いた
ー死骨城内ー
《クリム王、カズヤめを消滅しうる秘薬が完成致しました‼》
クリムの参謀ボーンが紫色の小瓶を携えて現れた
《おぉっ⁉でかしたっ‼してその秘薬とは?》
《はっ。この秘薬は触れれば激しく腐食し飲めば内側から溶け出します‼》
《おぉ…それは凄い。飲み物に混ぜれば一発だな‼ワハハハ》
《因みにこの秘薬は解毒能力を持たぬ者全てにとって致命傷を与えうる秘薬でございます》
《ワハハ…ハ?では俺も浴びたら致命傷になるのではないのか?》
《は…それは…》
《ちょっ、危っ⁉は、早く下げろっ‼》
クリムはボーンに小瓶を放り投げた
《あっ⁉ちょっ⁉》
ーパリンッ‼ー
突然投げられたボーンはうっかりキャッチミスをして小瓶を割ってしまった
《…ィィィギィヤァァァ‼》
運悪く頭上でキャッチミスをした為全身に秘薬を浴びたボーンはクリムの目の前で溶けていく
ージュゥゥゥゥ~…ー
《グッ…これは凄まじいな》
ボーンから立ち上る臭気に堪らず鼻の辺りを抑えたクリムが唸る
《誰か‼ボーンを片付けろっ⁉》
クリムの部下がボーンの躯…というよりドロドロに溶けた物体を運びだそうと奮闘するが
触れた者が片っ端から溶け出す始末で軽くパニックに陥った
《フフフ…これでカズヤが溶けていくのをツマミに飲む酒はさぞかし美味であろうよ!ワハハッ‼》
秘薬に触れ手足が溶けた部下がもんどりを打ってる前でクリムは高笑いしていた
ーカズヤの部屋ー
「ほぉ~…苛性ソーダみたいなヤツなのかな?」
カズヤはクリムの城内を見て呟く
PDAを具現化する際に自動監視システム「見守り君」のビットを小型化して同時に具現化し
各王にそっと付けておいたのだ
水酸化ナトリウム(化学式NaOH)は別名苛性ソーダと言い前世では劇物指定になる程の劇薬だ
触れると強い腐食性により金属はおろか蛋白質も容易に溶かす
「念の為に中和剤も作っておくか…それにしても部下をあんなにぞんざいに扱って…反乱とかされないのかな?」
知らねば絶対絶命のピンチは知れば滑稽な茶番劇と化す
カズヤの前世での経験則は常に俯瞰出来る位置に身を置く事を絶対としていた
ゲームにしろテレビにしろ俯瞰で見られるから楽しめるのであって当事者であればそれは楽しめる処ではないのだ
カズヤはクリムの動向を把握すると他の王達の動向も探るべくビットからの映像を切り替えた