第32話 『ネクロポリス歓迎会?』
カズヤは三人の王との謁見を終えて今は与えられた部屋で寛いでいる
(さて、困ったぞ?仲間に引き込もうとしているのはドラグ王とワール王、
敵対しそうなのはクリム王、中立っぽいガイア王とお調子者のグズリ王か…)
皆ひとかどの王である。
どんな力量を持っているかも未知数なのだ
誰かを支持すれば周りは黙っていないだろう
(何とか穏便にこの国を去る方法はないもんかねぇ…)
正直転移してしまえばそれで終わりなのだがそれを実行すると残されたフェルトさんがどういう扱いになるか分からない
カズヤはまるで人質を取られた感じを受けた
このままずっと滞在すればクリム王が確実に仕留めに来そうだしなぁ…うーん、困ったな…
カズヤはテーブルに置かれた紅茶を啜るが下顎の隙間からダラーっと溢れて慌てて掃除する
(骸骨なのをすっかり忘れてたな)
カズヤは雑巾を具現化し汚してしまった豪華な調度品をごしごしと拭いていたのだった
ーワールの私室ー
《フフフ…あ奴を何とかして我が軍門に引き入れればドラグとのパワーバランスも崩れようて…》
ワールの感情を受けて彼の霊体を包む炎が赤黒く変わるのを彼は気にも留めなかった
ー謁見の間ー
(さて…火種は撒いたが上手く食い付いてくれると良いが…)
ドラグは冷笑を浮かべカズヤがもたらす今後の波乱を黙考する
((全王よ、あのカズヤという男…それほどの力を有しているのか?))
残っていたガイアがドラグに訊ねる
『あれはな、ああ見えて「理」から外れた者なのだ。どういう訳か知らんが利用させて貰う』
((「理」を…「超越者」なのか?))
『フハハ、ガイアよ。選別眼を持つ我にもあ奴は読めん。楽しみにしておるが良いぞ?』
謁見の間にはドラグの高笑いが響き渡っていた
ーカズヤの部屋ー
《おーっす!邪魔するぜぇ‼》
「え?あ、グズリ王?どうされたのですか?」
《いやぁ、お前さん聞く所によるとちょっと前までゾンビだったらしいじゃねえか
そんでな、まぁ元お仲間って事で親交を深めようと思ってな!良いだろ?》
「え?えぇまぁ…」
《さぁさぁ‼固まってないで酒でも酌み交わそうじゃねぇか》
グズリの背後からメイドゾンビが酒宴の用意を続々と運んでくる
《俺はな、あのいけ好かねぇクリムの野郎をやり込めたお前が気に入ったのよ‼まぁ一杯グッといけよ‼ガハハ‼》
「…はぁ。」
カズヤはグズリのテンションに負けて盃を空ける
ーダララー…ー
「…あ…」
《ギャハハッ‼おいおい、入れた先から溢れてんぞ⁉ギャハハハ‼》
「忘れてました…」
ガックリと肩を落とすカズヤの周りをメイドゾンビがそつなく掃除する
《飲み食い出来ねぇのは残念だがまぁ雰囲気に酔って貰って楽しくやろうじゃねぇか》
グズリが手を叩くと妖艶な踊り子達が曲に合わせて踊り出した
《どうだい?美人揃いだろう?ちょっと腐ってんのが珠に傷だがな、ギャハハ‼》
気さくなグズリの宴は丸1日続いたのであった
ークリムの居城「死骨城」ー
《くそッ‼ドラグにバレずにあのスケルトンを屠る手立てはないのかっ!》
クリムは手に持った錫杖を配下に投げ付ける
《お、王よ‼どうかお静まり下さい‼》
《ボーンよ、お主は俺の参謀だろうが‼何か上手い策を早く練るのだ!》
《…はっ‼直ちに策を講じます》
(畜生…カズヤめ、俺のプライドをズタズタにした礼は必ず返させて貰うからな‼)
カズヤにしてみれば完全な逆恨みだがクリムの怒りはいずれ大きな禍根となって降りかかってくるのであった
こうして各々の思惑を孕んでネクロポリスの夜は更けていったのである