第31話 「王達との謁見part2」
ー与えられたカズヤの部屋ー
(うーん…次は誰と会わされるんだろう?残りはゴーレムとゾンビ、後はレイスか…嫌だなぁ)
カズヤは椅子に腰掛け思案する
いずれにしても敵対心を抱かれるのは宜しくない。
媚びるつもりはさらさらないがなるべく穏便にしようと心に誓った
「あ、そうだ!試しに元の姿に戻ってみよう」
パラレルワールドでの絶望の日々を生き、同じく絶望の淵にいたフェルトに出会い
そしてこの国に入る前に突然再会した大神様
彼の話ではカズヤは自身の不安を自身に投影しすぎて勝手にパラレルワールドに転移してしまっていたのだ
それ故にカズヤ自身が強く望めば元の姿どころかあの神様が待つ世界への帰還も可能であるのだ
「うむむ…えいっ!」
ーボフッ‼ー
「あ…えっ⁉」
上手く元の姿に戻れたかと思ったカズヤが見た姿見には巨○兵並みにグズグズな姿だった
「えぇ~?これならスケルトンの方がまだマシだなぁ…何で失敗したんだろう?」
カズヤは原因を探る
「えーと…「思い込み」が姿形や世界にも影響するって言ってたから…
俺がこのターンに来て受けたトラウマとかが失敗の一因になってるのかなぁ…」
PTSD…カズヤの頭にぼんやりその言葉が浮かんでいた
ノアの拒絶、村人の敵意、パージの死、自害の失敗等々心理的なトラウマは数えきれない
「あれ?こりゃ意外と根深いぞ…」
カズヤは事態の深刻さに今更気付いてしまった
「…とにかく能力だけは使えないと万が一の事を考えたらヤバいぞ⁉」
具現化能力は先刻フェルトの四肢を再生した事で実証済みだ。
「他は…っと」
カズヤは気○斬や波○砲等の攻撃能力を試したがそれは問題ない様だ
「…サモンメイル」
ーシュバッ!カララーンー
「おぅっ⁉」
久しぶりに出した「赤と金色の鎧」は今のカズヤにはブカブカだった為に骨と鎧が当たって高い音を立ててぶつかった
「…まぁそらそうだよな…」
とりあえずは発現には成功だ
「えっと…今の体に合う鎧を作るか元の姿に戻るか…競争になるのか?」
…不毛だ、不毛過ぎる!
変身出来なかったショックで思考がおかしくなっていた
カズヤは気を取り直して念の為に背中の剣に能力を付与していく
スケルトンボディのまま戦闘になった場合は剣から攻撃を繰り出すつもりであった
(却ってこっちの方が都合が良いか…)
カズヤは元の世界に戻った後を考える
ドラグは過去世が視えるサイコメトラーだ。
ひょんな事からカズヤと接触があればもしかすると視えてしまうかも知れない
ならばスケルトンのまま去った方が再会しても接触の可能性は減るだろうし
余計な憂いも減るだろう、と思い直した
ーコンコン、ガチャー
《他の主達が到着した。案内する》
案内役のドラウグルがカズヤを呼びに現れた
ーガシャ、ガシャ、ー
「あのー、毎回案内役さんと呼ぶのはアレなんで名前を教えて貰えるかな?」
《名は無い。》
おいおい、話が終わっちゃったよ?…こうなったら…
「…じゃあドラウグルの案内役さんだから…健二さんって呼んで良いですか?」
カズヤは精一杯のボケをかました
《…何とでも呼ぶと良い》
「ガハッ⁉」
カズヤ渾身のボケは躱されHPが150程削られた
考えたら使役されて意思はあるとは言えジョークやボケに対応出来るとは限らないのだ
自滅気味なやりとりで削られた体力を補う為、ボケを殺された恨みの為(?)今後案内役を「健二」と呼ぶ事にした
「健二さん、他の王様達ってクリム王の様な性格なんですか?」
《主達を評する事は出来ぬ》
にべもないな…後でリベンジしてやろう
カズヤは謎の使命に燃えた
ーガシャ、ガシャ、バタンー
《主様、お連れ致しました》
『うむ。こちらへ。』
ドラグの言葉を受けてカズヤは前に進み出る
《私はレイス王「ワール」》
《ゾンビ王「グズリ」だ》
《。。。》
「…えっ?」
((済まぬ。声が発せぬのだ。ゴーレム王「ガイア」だ))
「あぁ、そうだったんですね?此方こそ気遣えず申し訳ありませんでした。ガイア様
俺はカズヤと言います。今はスケルトンですね」
《よぉ、クリムのバカと早速一悶着あったそうじゃねぇか?良い気味だっての‼ギャハハ‼》
ゾンビ王グズリはカズヤに気さくに語りかける
「一悶着だなんてとんでもない。少し行き違いがあっただけですよ」
《ん?でもクリムの野郎お前を絶対殺すって息巻いてたぜ?》
『…何だと?』
《ひえっ⁉い、いやぁ…聞き間違えたかなぁ?》
グズリはドラグの威圧を察知して逃げを打ったが手遅れだった
『…後で聞かせて貰おう』
《ひゃいっ‼》
グズリは怯えた表情でドラグに従った
((してお主は元々ゾンビだったそうだが酸の沼で骨だけになったと聞いた。何故その様な真似を?))
ガイアが念話でカズヤに問う
「あの頃は全てに絶望してまして…酸の沼に身投げしたんです。アンデッドなのを忘れて…」
《酸の沼程度では肉体は溶けたとしても骨迄は消滅せなんだか…因果よの…》
レイス王ワールはカズヤを憐れんだ
《もし霊体になっておれば私の軍門に歓迎しておったのに。今からでも遅くはないぞ?》
「あはは、今はこの体も馴染んでますから…もう少しこのままで」
『ワールよ、私兵を増やして何とするのだ?』
《は、近頃は何かと物騒でしてな?
半ゾンビとかいう輩が私の臣下に加わり虎視眈々と王の座を狙っておるらしいのです》
『うぬは…まぁ良い。カズヤよ、これで全ての王と謁見した事になるが…未だ決意は変わらぬか?』
「えぇ。お引き留め頂き感謝致しますがやはり…」
《なぁなぁ、ドラグ王。何でそんなにコイツに拘ってるんだ?》
『…それを聞けばお主達も平然としてはおられぬが良いか?』
《えっ⁉…こりゃ薮蛇かな?》
グズリ王は肩を竦めてその先の会話を遮った
((…我等がそれ程迄に動揺する存在とは一体?))
あ、ガイアさーん?心の声が皆さんに駄々漏れですよぉ?
《…いずれにしても彼の者はこの国を去るのでしょう?ならば精々歓待して見送りましょう》
ワール王は歓迎ムードを崩さずに発言したが何となく引き込む気が満々だった
『今は我の客分だ。無論歓待はしよう』
こうしてカズヤは全王ドラグの客分として歓迎パーティーを催される事になったのを苦々しく思っていた