第29話 「カズヤの意思は?」
ーネクロポリス王城、ドラグの私室ー
『してそちの望みは何だ?安住か死か?』
…おぅ⁉いきなりかよ?…とにかく相手の力量が分からないから上手く立ち回らないとな…
「俺は…フェルトさんの安寧が確保出来れば満足です。見届けたら帰りたいと思います」
『ふーむ…成る程、分かった。それまでの滞在を許そう』
「ありがとうございます」
ほっ…何とかなったかな?
『だがそちの特異性は実に興味深い。他の王達にも引き合わせたいがどうだ?』
「えぇ、その位なら問題ありません」
『うむ。ではフェルトの下に案内してやろう』
ドラグが指を鳴らすとドラウグルが入室して来た
『カズヤをフェルトの下へ案内してやれ』
ドラウグルは恭しく一礼するとカズヤを誘う態度を見せた
「では失礼します」
『うむ。後で使いの者をやろう。』
「はい」
カズヤはドラウグルと共にドラグの私室を離れた
ーガシャ、ガシャ…ー
「あのー、これから何処に?」
《主様がフェルトにご用意された部屋だ》
「え?もう部屋が用意されたんですか?随分厚待遇だなぁ」
《我が国ではネクロマンシーは優遇される。今後は魔導部での活動を保証されるだろう》
「あぁ、良かった。つま弾きにならずに済んだんですね」
《お前は何故主様に目を掛けられているのだ?見た所只のスケルトンにしか見えないが》
「あ、あはは‼珍しいらしいですよ?」
《…そうか。此処だ。》
ーコンコンー
「どうぞ。おぉ‼カズヤではないか‼」
「フェルトさん‼」
二人は固い握手を交わした
《ではこれで。》
「あ、ありがとう」
ーバタン…ー
「さぁカズヤ、座ってくれ」
「はい。フェルトさんは大出世ですね?」
「はは、まぁ偶然じゃな。」
「お互い経緯を話しましょうか」
「そうだな、これからの事も話し合わなくてはならないじゃろうしの」
カズヤは先ずフェルトの話を聞く事にした
「ワシはあの後この国の魔導部らしき所に連れて行かれての、先々代の師匠に会ったんじゃ」
「えっ?先々代のって…生きてたんですか?」
「いや、正確には先々代の変わり身だの。彼はワシと同様に禁術に触れて「リッチ」になっとった」
(リッチ?…あぁ、死んだ魔導師がなる魔物か)
「それでどうしたんですか?」
「うむ、彼はこの国の魔導部でもなかなかの地位におっての、
孫弟子のワシを快く直属の部下に迎え入れてくれたのじゃよ」
「成る程、じゃあ結果オーライでしたねぇ」
「うむ。今後は先々代の師匠の下でより深い研究をする事になって胸が踊っておるよ」
「じゃあ…」
「うむ、ワシはここに残るぞ」
「良かった…」
「してカズヤはどうするのじゃ?」
「はい。実はドラグ王に選択肢を与えられまして」
「ほう。」
「(安住)か(死)の二択だったので第三の選択をしました」
「む?それは?」
「俺はスケルトンになって人間の地を追われてフェルトさんとこの国に来ましたが
どうやら「前のターン」への復帰の目が見えてきたのでフェルトさんが安心して過ごせているのを確認出来たらここを去ろうと思います」
「う…む…短い間じゃったがお主とは魂で繋がれとったと思っておったので何か寂しいのぅ…」
「俺もです…何度も絶望の淵から救ってくれたフェルトさんと離れるのは寂しいです」
二人の間に沈黙が流れる
「でも俺が神だと分かればフェルトさんの立場も危うくなりかねません。
俺はこのまま静かに立ち去った方がお互いの為に良い筈です」
カズヤは己の決意をフェルトに伝えた
「…そうか。お主の選らんだ道じゃ。祝福せねばな‼」
その日は二人で色々な話に花を咲かせて楽しい時間を過ごしたのであった