第26話 「ネクロポリスの城壁」
ガーゴイルと別れた後、カズヤ達は急に前に進める様になった事で確信を得ていた
「やはり何らかの障壁が講じられていた様じゃの」
「えぇ、そうですね…あのまま歩き続けていたら普通の人間じゃ辿り着くとか出来ないでしょうね」
障壁によって迷宮化するのはある意味効率的なのかも知れない
近付く者達を無意識に遠ざけ異変すら感じさせないシステムは防御としては前衛的でもある
「それにしても…異常な大きさですね、これ」
カズヤが見上げたのはネクロポリスを取り囲んでいるであろう「城壁」である
その高さは優に100mは越えている
(アル○ンでも届かなそうだな…)
カズヤは前世の某巨人を思い出したが直ぐに打ち消した
「古のネクロミコンには「始祖は冥界の魔王」とあった。
本当の魔王なのか大魔導師だったのかは分からんが相当力のある御仁じゃったのだろうて」
「手積みでこれだけの城壁を作るのは万年掛かっても無理でしょうから何らかの力を使ったんでしょうね」
「お?正面に門が見えてきたぞぃ?」
カズヤ達の歩く先には巨人でも屈まず通り抜けられそうな大門と小脇には多分平常時に使うのであろう
「通用門」が控えていた
「あ、門番っぽいのもいますね」
通用門の両脇には鎧を着たスケルトンが直立している
《お前達は何者だ!?》
門番は突然の来訪者に怒気を孕んだ言葉で詰問する
「俺達は人間から逃れて言い伝えにあったこの国に逃げ延びてきました」
《…成る程、では通れ!》
門番達はカズヤの申し立てを聞き素直に通してくれた
「…意外とチョロかったですね」
「油断は禁物じゃて」
フェルトは無用心過ぎる門番に違和感を感じていたのだ
ー30mはあるであろう城壁のトンネルを潜るとー
門の先には鬱蒼と茂る深淵の森があり通りをアーチ状に木々の枝が囲っている
その森を抜けると途端に開けるが城下町(?)にはまだ程遠く霞が掛かる程である
ーガラガラガラ…ー
「ん?お前さん達は…野良か?」
後ろから近付いて来た馬車を操るゾンビの御者がカズヤに訪ねる
(あれ?ここのゾンビは話せてるぞ?)
幾つかの疑問を抱えながらカズヤはその御者に顛末を話す
「なるほどな、じゃあ馬車に乗っていけ。街まではまだ相当あるからな」
「じゃあお言葉に甘えて失礼しまーす…ってう゛っ!?」
カズヤは気の良いゾンビの言葉に甘えて荷台に乗り込んだが余りの光景に言葉を詰まらせた
その荷台には「人体」が無数に転がっていたのだ
「ガハハ、そりゃケルベロスの晩飯だよ」
「…そうなんですか…」
フェルトは自身がネクロマンサーが故に死臭や死体に慣れている為それほど抵抗感はなかったが
カズヤにとってその光景はかなり衝撃的なモノだった
「お前さんスケルトンなのに弱いんだなぁ、珍しい奴だ」
「カズヤ、堪えるのじゃ」
フェルトの言葉で何とか持ち堪え無言で馬車に乗り込む
(コイツらは事の次第によっては殲滅しなきゃな…)
カズヤは吐き気を抑えてそう決心するのであった
そんなカズヤ達を乗せ馬車は遥か彼方の街へと進んでいく
ここ迄は「誰かが裏で糸を引いているかの如くに」順調な滑り出しだったのである