第25話 「住人発見?」
カズヤ達は遥か彼方の建造物を目指して岩場を進んでいく
「くっ⁉如何に四肢が元に戻ろうともこう道らしきモノがないのでは進むにも骨が折れるのぅ…」
「ですねぇ…飛べますが出来ればネクロポリスの住人を刺激したくないんですよね…」
「飛べるのか⁉…まぁいちいち驚いても仕方あるまい。とにかく道を探してみよう」
「はい」
二人は尖った岩場を何とか切り抜け一時間後漸く道らしい場所を発見した
「ふぅ~、これで幾らかは楽になるのぅ」
「そうですね、本当は何処かに入り口とかがあったのかも知れませんね」
道があった、と言う事はその両端には必ず何かがある筈である。
この道は片方は先の建造物に繋がっている様に見えるし片方はカズヤ達が歩んできた後方に伸びていた
そうなると予想出来るもう片方は「入り口」か「通用門」の様になっているのかも知れない
カズヤ達は知らなかったが故に「道を外れた状態」で入国(?)していたのだろう
「まぁこれからは一本道みたいですしのんびり行きましょうよ」
「うむ、そうじゃの。」
フェルトは復元されたばかりの自分の手足をうん、と伸ばした
ー2時間後ー
「何だか全然近づいてる様な気がしませんねぇ」
「…もしかすると何らかの魔法障壁に阻まれておるやも知れんのぅ」
カズヤ達は進めど進めど近付かない先の建造物に不信感を抱いていた
何故なら近付いているのに一向にその大きさが変化しないのだ
まるで遠近法を無視したその光景に違和感を覚えるのは当然であった
「ん?」
「どうした?」
カズヤが口元に指を当てて「静かに」する様に指示する
フェルトが前方に目線をやると100m程先の道端に誰かが座っているのが見える
久しぶりの人間(?)に嬉しいやら怪しいやら複雑な気持ちで近付いていくと早速人ではない事が分かった
「ガーゴイル」
そう呼ぶに相応しい石の彫刻が一体道端に置かれていたのだ
(ガーゴイルって魔物だったかな?雨樋の彫刻だったりしたのは見た事あるけど…)
カズヤの頭で疑問が沸き上がる
西洋では雨樋の彫刻や魔除け扱いだった筈のガーゴイルが何故かポツンと置かれている
(シーサーみたいな扱いなのかな?)
魔除けの置物という意味では南国のシーサーもガーゴイルの一種である
『お前達はどこから来た!』
突然置物と思っていたガーゴイルがカズヤ達に問いを発した
「うぉっ⁉生きておるのか?」
『問うたのは俺だ。先ずは答えよ。お前達はどこから来た!』
最初の言葉が質問系なのはきっとカズヤもフェルトも「人ではない」認識からなのだろう
これで生身の人間だったら問答無用で襲われていたかも知れないのだ
「…ワシ達は人間の住む国から追われてこの地にやって来たのじゃ。先に進むのを許してくれぬかの?」
フェルトはガーゴイルが門番なのかも?という仮定で接していた
魔除けの意味合いがあるならこの場合は「人除け」の為にここに存在しているかも…と思ったのだ
『…ふん!お前達は野良か。良いだろう、先に進んで「主達」に従属する事を許そう』
「野良って…まぁそうなるのかな?」
カズヤは「野良」呼ばわりに怒りというよりも笑いそうになるのを堪えていた
「野良スケルトン」と「野良ゾンビ」が仲良くネクロポリス目指してやって来たのだ
(どんな「珍道中」だよ…)
もしカズヤに表情があったらガーゴイルの逆鱗に触れていたかも知れない
それほどカズヤの顔は笑っていたのだ
「ぷっ、くっ…ありがとう、先に進ませて貰うよ…」
ーカタカタカタカタ…ー
カズヤは必死に笑いを堪えていたが体全体がわなないていた為に骨同士が当たって音を立てていた
『…恐れる事はない。「主達」は縋る魔物を拒まん。』
どうやらガーゴイルはカズヤが恐怖で震えているのだと「良い方(?)」に勘違いしてくれた様だ
「…おい、カズヤ。先に進むぞぃ」
フェルトはガーゴイルを刺激しない様にカズヤを促したのだった