第24話 「死の国、ネクロポリス」
大神様との再会後、カズヤは今までにも増して精力的になった
「ではこのプランでいきましょう。ダメだったとしても何とかなりそうですしね」
フェルトは妙にハイテンションになったカズヤに恐怖すら感じている
「…一体何があったのかは知らんがワシはお主に全てを預けるぞ」
「はい。確約出来ないのが心苦しいですが何とかしてみます」
「…信じとるよ」
「はい!」
カズヤとフェルトは先にある人工的な建造物へと進んで行った
ー数時間後ー
「はぁ~、これは確かに人工物ですね…」
二人の前には正に「羅生門」と言った趣の門がそびえ立っていた
「…気配はない。どうやって入ろうかのぅ…」
「あ、あそこから入れそうですよ?」
カズヤがそう言って指差した先には通用門の様な潜り戸があった
二人は意を決して潜り戸を抜ける
「これは…正にネクロポリスじゃのぅ…」
フェルトは潜った先の光景を見て呆然とした
昼間の眩しい日差しは赤く染まり目の前は見渡す限り刺々しい岩場が広がっている
「これを歩いて渡るとなると…いや、多分不可能じゃろうの…」
その岩場は鋭利な刃物の如き鋭さで来る者を拒んでいた
ただでさえフェルトは体が不自由なのだ、カズヤが背負って渡るにしても無理がありそうだ
「えっと…フェルトさん、少し試して良いですかね?」
「む?何か分からんが構わんぞ」
フェルトの答えを聞くとカズヤはフェルトの失われた右足に手を置いた
。。。
。。。
「!?」
「こんなモンかな?」
「…はっ?カ、カズヤよ…お主一体何をしたのじゃ?」
カズヤが手を置いた右足は欠損していた膝より下が再生されていた
「これが具現化ですよ」
「お主…能力が戻ったのか?」
「まぁほぼ、ですね。慣れていないせいか前よりかなり時間が掛かっちゃいましたが」
そう言いながらカズヤはどんどんフェルトの四肢を再生していく
「筋力迄は上手く再生出来なかったのでご自分で慣らしていって下さいね」
「…正に神の御業じゃの…無から有を生むとは」
フェルトは「生えた」手足を動かしたり握ったりしている
「ここからは今までみたいに車椅子って訳にはいかなそうですしね。それとフェルトさんはラッキーでした」
「?」
「えっと…まぁいいか。今さっき大神様という人に再会出来たんです」
「大神…様?」
「えぇ、この世界だけでなく色んな世界を管理している神様ですよ」
「何と…お主は一体…」
「あはは、見てくれはスケルトンですが前のターンでは一応神だったんです。ペーペーでしたけどね」
「…危うく意識が飛びそうな話じゃのぅ。ワシも手足を戻す御業を見ていなければ到底信じられぬが…神はおるのか…」
「いますよ。勿論」
フェルトはカズヤを信頼していなかった訳ではなかったが聞く話が荒唐無稽過ぎて話半分に聞いていた
だが改めてカズヤの行った御業を体験し、その話の全てが偽りでない事を痛感させられていたのだ
「さぁて、じゃあ行きましょうかね。ネクロポリスへ」
「…待て、カズヤよ。お主もしかして…」
「この姿の方がこれからは都合が良いじゃないですか、あはは」
フェルトはカズヤの返しに黙って頷いた
フェルトの手足が復元出来たのであればカズヤ自身の体躯も当然復元出来る筈だ
それを敢えてしていない、と言う事はカズヤの意思で「敢えて」していない。という事になる
それは何故か?
カズヤはフェルトの行く末を案じているのである
姿が元に戻せ能力が戻ったのであればカズヤ自身ネクロポリスに拘る意味がなくなる
だが半ゾンビのフェルトはネクロポリスで生きていかなければならないのだ
望めばもしかすると半ゾンビ化を戻してくれるやも知れない
だがフェルトはそれを望んではいないのだ
既に彼の「未練」は絶えた
この先の生涯を普通に送る事を良しとしていないフェルトの心をカズヤは汲んでくれていたのだ
フェルトは目に溜まった涙を袖で拭って立ち上がった