第18話 「スケルトンですが何か?」
気合いを入れ直してからカズヤの表情…はないが雰囲気が変わった
車椅子を押す力も強くなり会話も前向きになったのだ
「へぇ~、フェルトさんは若い時分随分ヤンチャだったんですねぇ」
「まぁヤンチャと言うより掟を嫌っておっての、事ある毎に師匠に逆らっておったわ」
「今のフェルトさんからは想像がつきませんね…当然アッチの方もお盛んだったんでしょ?」
「む?お主は年寄りに何を聞いておるのだ?」
「あ、つい勢いでですね…あっははは‼」
「ふむ。吹っ切れた様じゃの」
「はい、もう俺は俺の存在を否定しません。スケルトンでも為せる事を見つけますよ」
「うむ」
「それでなんですが…ずっと前から疑問に思っていた事がありまして」
「何じゃ?」
「はい、ゾンビにしろスケルトンにしろ大別はアンデッドだと思うんですよね」
「そうじゃな」
「俺は転生補正があったので論外としてこの世界でゾンビになったパージという知人には
出会った時から記憶と思考があったんですよ。」
「ふーむ、お主の疑問は例の「意思ある魔物」とそうでないモノとの線引きの話じゃの?」
「そうです。魔物と言われる存在に何故意思が宿る場合があるのか、
それはどういう条件を備えると成立するのかがずっと疑問でした」
「ふーむ?お主はやはり異世界者じゃの。我々が考えぬ事に着目しておるわ」
フェルトはカズヤの疑問を推敲する
「まぁ憶測に過ぎんが…」
「それでも構いません、是非ご教授を」
「カズヤは魔物に転生しながら意思と思考を持ち合わせていた。そうじゃの?」
「はい」
「そしてこの世界でその様な自由意思を持つ魔物は殆どが高位の存在じゃ。例えば悪魔や吸血鬼等じゃの」
フェルトは落ちていた枝を取り線を引いて区別していく
「その理論でいくとそのパージの存在が特異点となる。そこでじゃ」
フェルトは一度囲った線を消す
「この括りを一度消してカズヤの存在で括ると…転生者またはその血を継ぐ者、
または次元か空間を操る能力等に長けている者。で括れば一応の区別は出来るやも知れんの」
「でも…それでもパージは特異点になりませんか?」
「じゃからこその「血継・血脈」論じゃよ。ここは敢えてそうと考えるしかなかろう?既に討伐されてしまったからの」
「そうか、今ではその真贋を確かめる術もないのか…」
「そうじゃ、また現れるやも知れんが今はソコに拘る必要もなかろうて」
カズヤは多少強引な理論と知りつつ自分を納得させる
「ではその方向でいきましょう!悩んでいても埒が明かないですもんね」
「正にその通りじゃ」
「ではもう1つ。これは質問ではないのですが…」
「うむ」
「今の俺に出来る事などたかが知れています。ソコでフェルトさん、俺に魔術を教えて下さい!」
「む?それは良いがお主魔力の素養がまるでなかったのでは?」
「「虚仮の一念岩をも通す」ですよ!」
「うーむ、意味は良く分からんがやる気のようじゃな…良し、ワシの知識が役に立つか試してみよう」
「ありがとうございます!」
「それにワシの死霊術は今のお主にジャストフィットじゃしの」
「見た目は完璧なんですけどね」
こうしてカズヤはフェルトに弟子入りし、死霊術を習う事となった