第16話 「新たな旅路part5」
カズヤとフェルトは荒野を流離う
明確な目的地がある訳ではない。
ただただ安住の地を求めて
「フェルトさん、まるで俺達は死出の旅路を彷徨っているみたいですね」
「ワハハ‼そういう事は冗談でも言うモノじゃないぞ?」
二人はこの旅を楽しんでいた
「ところで方角はこれで合っていますかね?」
「あぁ、この方角をずっと行けば死の国、『ネクロポリス』があるらしいのじゃよ」
「ネクロポリスですか?そういえばフェルトさんはネクロマンサーで正しいですかね?」
「む?お主はやけに詳しいの。何処でその知識を手に入れたのじゃ?」
「あはは、所詮付け焼き刃の知識ですが前世でも伝承はあったんですよ」
「ほぉ、是非とも異世界の同輩とも会ってみたいモノじゃ…」
「話は戻しますがネクロポリスという言葉は古代の文明では墓場の意味合いでも使われてました」
「ふむ」
「ネクロマンサーは死霊術「ネクロシス」を使う魔術師として一部のコアな人達には実在を信じられていましたけど…
実際いたかどうか迄は分かっていませんでした」
「この世界でもワシの様に特化した者は少数じゃろうて」
「あれ?じゃあフェルトさんはどうやって死霊術を極めたんですか?」
「ワシはの、実は半分ゾンビなんじゃ」
「は?えっ⁉」
「村の者達に手足を切断されあの洞穴に放り投げられた所迄は話したの?」
「はい」
「放置されてからのワシは食うも飲むも出来ず出血も止まらず死ぬ寸前じゃった…
「ここで死んでなるか!」と復讐を誓ったワシは「禁術」を使ったのじゃ。」
「禁術…ですか?」
「うむ、先人の師匠達が一子相伝で伝えてきた魔導書の中にな、「死を司る書」があったのじゃ」
「…まるでネクロノミコンみたいですね…」
「それは何じゃ?」
「フェルトさん達が守ってきた禁術書と同じですがこれは架空の書物ですね、でも内容は似ています」
「うーむ、お主の前世の世界はワシが驚嘆する程の知識量を蓄えておるのぅ」
「未知への恐怖が想像を支えていたのかも知れませんね」
「成る程のぅ…まぁとにかくワシはその禁術書を使い「半死半生」の呪を己にかけたのじゃよ」
「不老不死ではなくてですか?」
「不老不死になるには例えば吸血鬼等の隷属とならねばならぬ。それにワシのこの体では探す訳にもいかぬだろう?」
「まぁ…」
「ワシが用いた禁術は召喚術から成っておる。召喚した魔物と同化する術じゃ」
「召喚したのがゾンビだった、と言う訳ですか?」
「いや、敢えて喚んだのじゃ。孫娘の父親をの。」
「何でまた…ご自分のお子さんか義理の息子さんですよね?」
「うむ…まぁそれはそうじゃが息子も非業の死を遂げておっての。
後に分かった事じゃがやはりあの村の人間に貶められて自死させられたんじゃよ」
「それは酷い…」
「原因はワシへの恐怖が主にあったが孫娘と誼を結びたくて近づいたものの
断られ逆恨みされての所業じゃと本人から聞かされたんじゃ」
「…なかなかに闇が深いですね…その貶めた男はどうしたんですか?」
「ワシと息子が同化して初めての獲物がヤツじゃったよ」
「仇を討ったんですね」
「孫娘の死に際は筆舌に尽くし難い程の…すまぬ」
「いえ、無理に話さなくて結構ですよ。フェルトさんの苦しみは俺の比じゃなかったんですね」
「そうでもないがの、ワシは己で選んだ結果じゃがお主は唐突に放り込まれての苦しみじゃ、
己の意思ではない苦しみはやはり同じ位苦しいモノよ」
カズヤ達の旅はまだ始まったばかりである
本編に続きパラレル版も予定稿終了です。
なぁーんて言ってますけど単に目が疲れただけってのは内緒です☆