第15話 「新たな旅路part4」
ー洞穴の前ー
「な、何だ⁉骸骨共が待ち構えているじゃないか⁉やはり武器を持って来た方が良かったんだ!」
「…落ち着いて下さい。例えお互いが武装していなかったとしても人数に違いがあります。
貴方は敵かも知れない人間に取り囲まれて心から信頼出来ますか?」
「うぐぐ…」
「あれは俺が頼んだんです。万が一にも悲劇を繰り返さない為にね。
幸いガストンさん達が俺の憂いを払拭してくれましたけど」
もしカズヤが、ガストンが武装放棄させないまま詰め掛けたとしたら誰が誰を信用すれば良いのか分からない状態にもなっていただろう
「今フェルトさんに言って骸骨を消して貰いますから少し待っていて下さいね」
カズヤは洞穴に入って行く
間をおいて骸骨達は煙の如く消え去った
「き、消えた⁉」
「あの骸骨の言う通りだったんじゃ‼」
「…ワシ等は疑い深くなって見境がなくなっておったのか…」
村人がどよめく中、カズヤとフェルトが洞穴から出てきた
ーキコキコ…ギコ…ー
木で作られた粗末な車椅子の上にフェルトは座っていた
「おい…あの手足を見ろよ、あんな酷い仕打ちをしたのかよ?」
「鬼よ‼鬼だわ‼家族を殺した上に手足を切るなんて…」
当時を知らない村人達はフェルトの姿を見て絶句し当事者達はその責を避ける様に俯いた
「…ワシがフェルトじゃ」
フェルトが名を名乗ると直ぐにガストンさん達が土下座をした
「フェルトさん、俺達の先達があんたにした仕打ちはさっきカズヤさんから聞いた!
…赦されるとは思っていないが俺達の詫びをどうか受け取ってくれっ‼」
突然土下座をしたガストン達に当事者である老人達は狼狽えたが慌ててガストン達に倣う
「ワシ達が悪かったんじゃ‼ゆ、赦してくれ~っ‼」
「…皆さん、お立ち下さい。ワシも復讐心から貴方達の大切な家族を奪ってしまったのは事実。
「御互い様」などと綺麗事は言わん、この通りじゃ」
フェルトさんは車椅子から崩れ落ちる様に降りると四つん這いになった
「あぁ。。。」
その姿をガストン達は絶望にも似た眼差しで見つめる
先人達がした事の残虐さを改めて目の当たりにしたのだ。
カズヤはその空気を察してフェルトさんを車椅子に抱き抱えて座らせる
「部外者の俺が言う事でもないですがお互いの謝罪を以てこの件は幕引きにしたら如何ですか?」
「…あぁ…爺さん達がこれ程無残な行いをしていたとは思わなかった…俺がここまでされていたら恨まない訳はないだろうな…」
ガストンは絞り出す様に呟く
「わ、悪かった!」
当事者の老人達は地面に頭を擦り付けて謝罪をする
「…失せた者は帰って来ない。ワシはカズヤにそれを思い知らされたよ…
出来ればお互いの怨嗟の鎖はこの時を以て断ち切りたいのじゃが…宜しいかの?」
「フェルトさん。俺達はこの事を戒めに子々孫々迄伝えていきます」
「…ではこれで手締めですね。良かった、また争いが起こらなくて」
カズヤはそう言って安堵の姿勢を表す
「ワシはカズヤと共にこの地を離れる。これで再び惨劇は起こらんじゃろう」
「…そんな…その体で何処に…」
「憐れみは無用じゃよ。ワシもそこの老人達も当時を知る者は心根に怨みを抱えておる。
この怨嗟は拭い様がないのもまた事実じゃ。どちらかが去る、これが一番なのじゃよ」
フェルトはガストンにそう告げる
ガストンは口を閉じた
手足の欠けた老人が旅をする…この結末がどうなるのかは誰でも容易に想像がついたからだ
「ではカズヤよ、そろそろ旅に出ようかの。」
「はい」
カズヤはガストン達に振り向いてこう答えた
「皆さん、俺がフェルトさんを守ります。どうか怨みを堪えて幸せに過ごして下さいね」
踵を返して去っていくカズヤ達を村人は姿が見えなくなるまで見送っていた