第13話 「新たな旅路part2」
ー村の広場にてー
「皆さん、俺はあの洞穴の中に入り1人の人物と出会いました」
「何っ⁉人だと?まさかソイツが骸骨達をけしかけていたのか⁉」
「…それについて皆さんにお聞きしたい事があります。
「フェルト」という人物に心当たりはありませんか?」
「な、何だとっ⁉アイツがまだ生きておったのか?」
村の老人が驚嘆する
「はい。この殺戮の根元は貴方がたの恐怖から来る誤解が生んだ悲劇だと教わりました」
「ば、馬鹿なっ⁉アイツは…」
「失礼ですが彼は貴方達に何かしたのですか?」
「…い、いや…それは…」
「何だよ!爺さん!口篭ってないで本当の事を話せよ!」
「…そのご老人には話し辛い事もあるでしょう。俺が彼に聞いた話をしますので間違っていたら訂正して下さい」
ソコでカズヤはフェルトに聞いた凄惨な過去を話した
「…という話です。間違っていましたか?」
「う、うむ…おおよそは…その通りだ…」
「お爺ちゃん!無実の人にそんな酷い事を⁉…お孫さんまで手にかけたなんて…酷いわっ!」
過去を知る者は項垂れ知らぬ者はその残酷さに老人達を責めた
「そうたったのか…それなら俺達が恨まれても仕方がないな…俺達の先祖が勝手な誤解で
その人とその家族に酷い仕打ちをしていたとは…俺が彼でも復讐を誓っただろう…」
ガストンの言葉に誰しもが口をつぐむ
「…俺達はどうすれば良いんだ?」
「ソコで提案があります。」
カズヤは村人が沈痛な面持ちになっているのを見計らってこう切り出した
「彼は皆さんの謝罪で全てを水に流し今後一切の怨嗟を捨てると約束してくれました。
誠意を以て謝罪すれば今後この村へ骸骨達が襲ってくる事はなくなるでしょう」
「おぉ…それで我々は赦されるのか?」
「はい。でもそれは彼の赦しが必要です。皆さんの中に少しでも欺瞞があればまたこの殺戮は復活するでしょう」
「う、む…」
「確かに貴方達にも犠牲は出た筈です。怨みもあるでしょう。
だからと言って何も知らない子や孫にこの怨嗟を続けさせる権利は誰にもないのです」
カズヤは敢えて子々孫々に拡がる怨嗟の鎖を断ち切る様に勧めたのだ
「…確かにそうだ。俺達は何で村が襲われるのか今まで全く知らないまま恨んでいた。
これじゃ子供達や孫達にも同じ苦痛を強いる事になっちまうぜ!」
フィードの叫びにも似た言葉に村人は皆頷いていた
「…良し、皆で謝ろう!そして俺達の子孫に安らぎをもたらすんだ!」
「「「「おおっ!」」」」
村人の心は決まった
後はフェルトの存在をどう移すか?だ
「皆さんにもう1つ提案があります」
「何だ?」
「この件が一段落したら俺はフェルトさんと骸骨達を連れてこの村…いやあの洞穴から去ります」
「何だと?」
「幾らお互いを赦し合えたとしても奥底にある怨嗟がいつ表にデリカ、それは誰にも分かりません
それならいっそお互いが争わない様に距離を置く事こそ肝要だと考えます」
「成る程…でもお前は…お前達は一体何処に行くのだ?」
「…それは今考えていません。流離う事にはなるでしょうがいずれ安住の地を探して落ち着くつもりです」
「…それでお前は構わないのか?」
「はい。この姿では人は受け入れ難いでしょう。
俺もまたフェルトさんと同じく「疎まれる」存在です。だからこそ安住の地を探したいと思います」
「そんな…そんな地が本当にあるのか?」
「あるかないかでは無く求めるのです」
カズヤの強い口調にそれ以降の追及はなかった
これで村人とフェルトの怨嗟の幕は降りたのだった