第10話 「骸骨達の主」
ー骸骨達の住処、洞穴付近ー
「ではガストンさん、フィードさん、この付近で身を隠していて下さい。
俺が失敗して最悪村に骸骨達が向かったとしたら急いで逃げて下さいね」
「「(ああ、)分かった」」
カズヤは二人が頷くのを確認すると少し離れた所から洞穴に向かって歩きだした
ーガチャガチャッ‼ー
入り口で警備をしているらしい骸骨がカズヤの姿に身構える
「あぁ、怪しい者じゃないよ。ほら、アンタ達とご同類じゃないか⁉」
カズヤは二体の骸骨達におどけて見せる
ー。。。?。。。?ー
良く分からないが彼らは独自のコミュニケーションを取っているらしい、
いきなり現れた茶褐色の骸骨に慌てているらしかった
ー…ガシャッ…ー
「ん?「付いて来い」って事かな?」
二体の内一体が退きカズヤを奥に案内する素振りを見せた
「…分かった。付いて行くよ。」
ーピチョーン…ピチョーン…ー
一体の骸骨に先導されて洞穴の中を進む。中は相当湿気っぽいのか所々で水の滴る音が響いている
「ねぇ、君達は喋れないのかい?個体で思考は持っているの?」
カズヤはなるべく穏便に問い掛ける
ー。。。ガシャ…ガシャ…ー
答えの代わりに返ってきたのは骸骨が着る古ぼけた鎧の擦過音だけだった
「…あはは…ダメか…」
どうやらコミュニケーションは無理そうだ。
だがこれでカズヤは気付いた
彼ら(骸骨)は自律的に行動はしていなさそうだ、となると「操る者」の存在がある筈だ、と。
光1つない暗闇を二体の骸骨(一体はカズヤ)が歩いていく
どの位歩いただろうか、やがて先導していた骸骨の先にボンヤリ光るモノが見えてきた
(ん?誰か…いるのか?)
少し進んだ先で先導の骸骨が振り返りカズヤにそのまま進む様に促すと踵を返して来た道を戻っていく
「…何と⁉お前は思考を持つのか?」
明かりの下にいた人物はカズヤを見て驚嘆の色を隠しきれなかったらしい
「はい。俺はカズヤと言います。貴方は?」
こういう時はストレートに訊く方が正しい。
目の前の人物は重い口を開いた
「ワシは…フェルトじゃ。」
「こんな所で何を?」
「ふっ、知らんのか?お主はあの村から何かを託されて来たのではないのか?」
「うーん…まぁ託されて、と言うよりはダメ元で送られて来た斥候…みたいな者ですかね?」
「クッ…ワハハハッ‼それは愉快だ‼お主はあの村に恩も義理もないのにここに送られて来たのか?とんだ道化だな‼」
「えぇ。それは自分でもそう思います。」
「…良かろう‼ワシが何故村に骸骨共を差し向けて襲わせているのか、その怨嗟の程を教えてやろう‼」
そう言うとフェルトは目の前にある水晶に何やら呪文を唱えた
ーフワッ…ー
カズヤが水晶に気を取られているとその水晶から画像が浮かんできていた
(これは…直接頭に映像が…)
カズヤの思考にフェルトが見せる映像が次々と流れ込んでくる
彼が元は村の外れに住む魔導師で村人の為に治療等を善意で行っていた日々を
いつしか時は流れ村人との交流が途絶え勝手な誤解から畏怖の対象になった時を
そして畏怖がいつしか恐怖になり村人達がフェルトを焼き討ちした凄惨な夜を。
「分かったか?ワシは村の者達に疎まれ殺されかかったのじゃ…何の罪もないワシがの。
じゃからワシは村に復讐する為に闇に墜ちて骸骨共を召喚したのじゃ。
理由は言わんでも分かろう?
「復讐」じゃ!」
「…何故そこまで怨みを…」
「おぉ、お主には見せなかったの。…ワシも未だに辛すぎて思い返すのにもヘドが出る」
「一体何が?」
「あやつらは…あやつらはワシの大切な孫娘を焼き殺したんじゃっ!」
カズヤは言葉を失った