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第2話純神ゴリラ

すみません遅れました。第2話です。

 

「待ちなさぁ~い!」


 俺は人生最大の危機に陥っている。


 後ろを振り向いた。


 風を受けてさらさらと舞う藍色の長髪。


 ダイナマイトボディを惜しげもなく外気に晒している……






 ゴリラに追われている。



 割れた青い顎に申し訳程度に局部を隠す布。


 俺はロン毛ダイナマイト(マッチョの暑苦しいゴリラ型魔物)ボディのオッサンに追いかけられてる。


『妾達の拠点に自分の足でくるのじゃ!』


 ヒメキにそう言われて、気がついたら俺は石階段の前に立っていた。


 そして突如、後ろからマッチョが登場して絶対に止まれない状態になっている。


「待ちなさ~い!可愛がってあげるわ~」


 貞操の危機を感じるッ……


 マッチョが段々と距離を詰めてくる。


「いやぁ~大変そうっすねアルカ様」


 すると突然隣から声がした。


 編み込まれた短い赤髪に赤いローブ。

 整った容姿にどこかか憎めなさそうな雰囲気の美少女。

 彼女は真っ赤なブーツで器用にステップを踏んでいる。


 そんな全身真っ赤な美少女がニヤニヤと笑いながら俺と並んでいた。


「お前誰だ?」

「シア様の命で今日からお世話係兼ボディガードになったアスモっす。基本命令してくれれば大体の事は聞いてあげてもいいっすよ。あ、でもエッチなお願いはダメっす」


 アスモと名乗った美少女がパチンとウィンクをした。


 シアには部下がいたようだ。


「おい!シアの部下なら凄い魔法使えるだろ!あのゴリラを何とかしてくれ!」

「ふっふっふっ、このアスモちゃんに任せてください!」


 そう言ってアスモは後方に手を向けた。


「『色欲の豪炎(ラスト・フレア)』!」


 桃色の燃え盛る炎がゴリラを襲った!


 すると……


「ひゃっはぁぁぁぁぁぁ!ぎんもぢぃわぁぁぁぁぁぁ!」


 炎を纏い全身をクネらせながらゴリラが加速した。


「「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!?」」


「お"いッ!どうなってんだよアスモ!」

「……実は自分の魔法は催淫付与や麻痺付与させながら撃つんすよ。でも麻痺状態にはなってるハズっす!」

「まッ、まさか!?」


 アスモが最悪の一言を告げた。


「催淫付与の方が効いたみたいっす」


 後ろを振り向くと……


「あ"っはぁぁぁぁぁぁんッ!」


 白目のゴリラがすぐ目の前に迫っていた。


「「発情ゴリラ嫌ぁぁぁぁぁぁ!」」


 こうなったら……


 この危機的状況の中、俺の命令を聞く少女が現れた。


 これは天啓に違いない。


 神はおっしゃっている……



 ━━『隣の少女を使え』by神



「なぁ、ホントに俺の命令を聞くんだな?」

「勿論っす!」


 ビシッと親指を立てたアスモ。


「わかった……」


 彼女ならきっと許してくれると信じて……






 俺は足を引っかけた。


「えぶッ!?」


 ビターんッとこけたアスモに俺は走りながら言った。


「最初の命令だ~!その発情ゴリラを何とかしてくれぇー!」


 後ろから少女あるまじき声が聞こえたが俺は走り続けた。


 くッ……アスモ……お前の犠牲は無駄にしない!












 アスモのお陰で俺はヒメキの言ってた拠点に辿り着くことが出来た。


 木造の立派な門の前にヒメキが立っていた。


「アメ様から逃げ切るとは今回の新入りは凄いのじゃ!」

「知り合いかよッ!」


 あのゴリラはヒメキの差し金だった。


「あの方は純神で妾の大先輩の天之御中主神アメノミナカヌシ様じゃよ。新入り候補者の選別を担当してくれてるのじゃ!」


 選別……うん、ある意味選別なんだろうな。


「それで俺の結果はどうなんだ?」

「アメ様が来てからじゃ。お、来たようじゃ」


 そして現れたのは……


「んもぉ、最悪。可愛子ちゃんも坊やも逃げちゃうんだからぁ~」


 ゴリラ再臨ッ!


 ゆっくりと後退りヒメキを盾にした。


「はぁ……新入りは肝が小さい故、少し控えてほしいのじゃ」

「アマっちゃんの頼みなら仕方が無いわね!坊や自体は今は脆弱だけどきっと化けるわよ。それに彼には可愛子ちゃんもいるから問題無いわ!」


 バチッとマッチョがウィンクをして消えた。


「可愛子ちゃん?」


 ヒメキが首を傾げた。


「シクシク……アルカ様酷いっす。アスモちゃん怖かったっす」


 いつの間にか俺の腰にアスモがしがみついていた。


「おお、珍しい……学院の近くに悪魔が来ることは滅多にないのじゃが……」

「ツーン、アスモちゃんに気安く話かけないでくださいー」


 アスモがぷいッと顔を反らした。


「神と悪魔は仲が悪いのか?」

「生まれが違うだけのことじゃから妾は気にしておらんのじゃが……悪魔を悪と決めつける輩もおる事も確かじゃな」

「アスモちゃんはそこらの雑魚人神に負けないっす!」


 アスモがムキィーと威嚇したが俺達は無視した。


「本当は清掃員のメンバーを紹介したいのじゃが今は揃って無くての……だから今日はデウス魔法学院の学院長に会って貰うのじゃ」


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