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源氏の世界⑨ 男子の衣装

 前に女子の衣装のご紹介をしたので(源氏の世界⑦艶やかな十二単)、今回は男子の衣装(メンズファッション)のお話をしますね。


 まずは正装から。桃の節句に飾るお内裏さまの服装だと思います。洋服の格式で言うとタキシードね。儀式のときなどに着用します。束帯と言います。宮中では大きく分けて文官の役職と武官の役職があり(それぞれに階級があります)、文官の束帯そくたいと武官の束帯では少し違いがあるので、文官束帯と武官束帯と呼ばれます。

 どちらも冠をかぶります。ひとえの着物に袴を穿いて、襟元のグラデーションが綺麗な下襲したがさねきょと言う長い布を後ろに垂らします(裾は歩くときに引きずるほどの長さで身分が高ければ高いほど長い)。袴は私たちのよく知る侍の袴より細身のパンツといったカンジです。その上に袍と呼ばれる上着を着て石帯せきたいという石飾りのついた革ベルトをして、手にはしゃく(威儀を正すためのもの。儀式の覚書などのあんちょこにも使用)を持ちます。とっても複雑で着るのもタイヘンだったみたいです。


 そして衣冠というのが現代のスーツ的役割で、宮中にはこれで参内します。束帯を省略して着やすくしたもので束帯よりゆったり着用できたので「宿直(とのい)装束」と呼ばれて宮中の夜の勤務服だったみたいです。

 下襲したがさねきょなどが省略され、袍を着るだけです。袴は指貫さしぬきというボトムを穿きます。超ワイドパンツで裾を足首でキュッと絞ったタイプのものです。袍の色は官位によって決められています。



 次に直衣のうし。見た目は衣冠と似ていますが、スーツではなくてブレザーにパンツというオシャレ普段着といったカンジです。こちらは貴族が自宅で着ている服装です。袍は官位にかかわらず色も文様も自由なの。袴は衣冠のときと同じタイプの指貫を穿きます。色や柄は年齢で決まっているみたい。年を重ねるにつれて色が淡く、文様が大きくなります。

 よほど位が高ければ直衣で出勤することもあったみたいで、みんなが衣冠の服装の中で桜重ねの直衣姿の源氏が目立って素敵だという描写もあります。(朧月夜と恋に落ちた第八帖【花宴はなのえん】)


 最後の狩衣かりぎぬはカジュアルなスポーツ着です。身分の高くない人の普段着です。源氏が人目を忍んで出かけるときにわざと位を低く見せるために狩衣を着たこともあったみたいです。


 女子の服装でもご紹介した袖などの表と裏の色合わせ「重ねの色目」は男子にもあります。季節によって、年齢によって、また男子しか使えない色目などさまざまだったようです。


 ちなみにどんな服装の場合でも男子は冠か烏帽子(えぼし)をかぶります。宮中では冠をかぶるのがきまりなので、常に宮中にいる帝は必ず冠をかぶっています。なので烏帽子姿の帝はあり得ないワケです。貴族たちは自宅では烏帽子をかぶります。たとえ家の中でもです。男子は寝るとき以外は被り物をかぶっていることになりますね。



 また宮中《職場》での服装ですが、官位によって色が決められていました。

 衣服を見れば階級がすぐわかるわけなんですよね。


 官位八位以下が深縹、六位以下は緑色、五位が浅緋、四位が深緋、三位以上が深紫です。


 源氏の息子の夕霧が元服をしたときに着る衣装(正確にはその色)を見て皆が驚きました。通例でいけば四位程度の位を授かるはずですが、源氏が与えたのは六位の位で、衣装の色は緑色でした。

 雲居の雁と引き離されるときに彼女の乳母は「姫さまのお相手が六位とはね」と夕霧の身分の低さを嘆きます。夕霧はこんな歌を詠みました。

「こんなに傷ついているのに(袖が血の涙で染まっているのに)浅葱色(緑)の服だってバカにするの?」

 従兄弟や友人に比べて低い官位での就職だったので、緑色を纏っての宮中での仕事に夕霧は引け目を感じていたようです。


 また禁色といって天皇、東宮以外が着てはいけない色があり、現代まで残っている色が天皇の黄櫨染こうろぜんであり、東宮の黄丹おうにでした。黄櫨染は明るい茶色で黄丹は濃い黄色です。


 令和元年5月1日に天皇陛下がご即位なされたときにお召しになっていた装束のお色は黄櫨染こうろぜんでした。上皇さま(平成天皇)も即位の礼のときにお召しになっていらっしゃいました。今も受け継がれている伝統ですね。



色彩と色目

http://kariginu.jp/kikata/5-1.htm

☆【別冊】次回予告

topics21 理解不能の展開、唖然の結末

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