topics9 ボーダーラインはどこかしら?
第16帖 関屋(【超訳】源氏物語episode16 逢えなくても好き)に寄せて
今なら大騒ぎの「不倫」
源氏の時代とは明らかに違いますね。
今の概念をあの時代にあてはめれば、源氏の恋は正室の葵の上との結婚以外はすべて「アウト」になりますね。
現代に平安貴族がタイムトリップしてきたらさぞかし驚くことでしょうね。たぶん紫式部センセイも。
なんせ源氏の時代では俗に言う一夫多妻制。お屋敷に複数のオクサンを住まわせることもよくありました。前にも書きましたがそれぞれ別棟にね。それに加えて外にいるアイジンのところにも通う。ツマは「行ってらっしゃいませ」と送り出す。それぞれのオクサン、アイジンに仕えている女房(女中)サンとも夜のお付き合い……。
そして人妻のところにも男が通ってくる。そしてそして自分の女房が自分のダンナとも仲良し。
書いていても眉間にしわがよります。なんなんだ。この世界。こうまで自由なお付き合いが咲き乱れればゴシップもゴシップじゃなくなるかも。
あの人とこの人が付き合っていて、この人はこのまえあっちのオクサンと別れて、そこの人はどうやらよそのダンナを通わせていて……。もうワイドショーも追いつきませんよ、きっとね。
そんな自由恋愛のように見える平安時代でも「侵してはいけない」関係もありました。
それが源氏と藤壺の宮との恋でした。
藤壺の宮さまは父帝の妃。自分の母親ではないけれど彼女を恋うることは父への裏切りであるし、謀反ととられてもおかしくありません。
まさに忍ぶ恋。逢いに行くのも想いを遂げるのもそれこそ命がけだったと思います。
帝の寵姫との恋と言えば、朧月夜との恋もそうです。この恋が露見して源氏は須磨で謹慎生活を送ることになります。
(えっ? 謹慎してなかったじゃないかって? ……確かにねぇ)
これもやっぱり「侵してはいけない」恋だったのでしょうね。
でも藤壺の宮との時よりは罪悪感が感じられない。むしろふたりでスリルを楽しんでいるように見えるのはワタシが『あさきゆめみし』に感化されすぎかもしれません。
それから今回の関屋の空蝉さん。
彼女は受領(今でいう県知事)の奥さんです。
源氏はやたら堂々と彼女にモーションをかけますが、これはセーフなのかしら?
ダンナの身分が低ければ人妻との恋はOKなのかしら?
空蝉さんとのことだって、たった一度きりだったとはいえ、まぁ仲良くしてしまい、その後も手紙で口説いたりしてるけど、ダンナさんは知ってたのかなぁ、知っていても源氏の身分が高かったから何も言えなかったのかなあと思ったりするのです。
一体どういう関係がタブーでどういう境遇ならオッケーなのか現代人のワタシにはボーダーラインがよくわかりません。
もちろん源氏物語はフィクションですが、実際の出来事をベースに書いていることもあるらしいのです。桐壺帝と桐壺の更衣の恋もモデルケースがあるみたいです。
うううううぅん。
めくるめく恋愛絵巻なんて言いますけれどねぇ。
でも物語は2次元のバーチャル世界なのでキャラに同調して楽しめればいいのかしら? 「現代のモノサシ」は置いておきましょうか? ね?
「かけ離れた」恋愛観のお話ですものね。
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episode16 逢えなくても好き 関屋
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☆【別冊】次回予告
源氏の世界⑧ 貴族の一日