廃屋斉唱【詩】
風ふきて廃屋の塵流れたり
つぎつぎと 壊してはまた 建てぬれど
どれも皆 変はらぬやうな かたちなり
それぞれに 時好はあれども いづれにか
あきらかに 彼我を分かつ しるしやあらむ
つぎつぎと 壊してはまた 建てぬれば
住むひとの くるくると変はり 老ひるらむ
みどりごの 生まれてたちまち おとなびて
夢追ひて 都会を目指し 立ち去らむ
つぎつぎと 壊してはまた 建てぬれど
皆がみな おなぢやうな かたちなれば
灰汁のごと まち全体の 色は変はらず
そのままに 息をひそめて 絶え入りぬ
此の程は 壊されもせず 吹きすさぶ
木枯らしに うちしぶかれて 腐りゆく
鈍色に 赤錆色に 朽葉色に
膝を折る 髪が乱るる 頭垂る
雨にうたれ溶けゆく鉄と石の町
2018年10月制作。