第二話
「一年四ヶ月と二十五日」
毎朝、自分の部屋の天井を見つめながら、最初に口にする。
あの日から何日経ったのかを……
その行為に特にこれといった意味は無いが、自分への戒めとあの日の事を忘れないために、毎朝呪文のように呟いている。
「お兄ちゃん、起きてるー?もう朝だよー」
朝の日課も終え、起き上がって瞼を擦っていると、実妹である美晴の声が部屋の前から聞こえた。
「ん、ああ今起きたよ」
「早く起きないと遅刻するよー」
「うん、わかった、今から行くよ」
「ならいいけど、お兄ちゃんの分の朝ご飯もできてたよ、伝えたからねー」
そこまで言うとドタドタと階段を降りていった。
朝から元気なものだ、と思いながら俺はまだ新しい高校の制服に袖を通して、家族のいるリビングに降りた。
降りてきてみると、俺以外の家族全員と綾姫がいた。
「どうして、お前がここにいる?理由を十文字以内に説明しろ」
「おはよう。昨日ぶり!」
「説明になってないから出て行け」
「ちょっとちょっと、それはないでしょー。大体十文字でなんて無理よ!」
「まあまあいいじゃない、星斗。小さい事は気にしないの。それに美人と学校に登校できるなんていいことじゃない」
俺と綾姫が言い合いをしていると、母さんが俺をなだめてきた。
「ほら、陽子さんもこう言ってるじゃない!それに彗斗さんもさっき、『星斗は今日、朝からいいことあるなー』って言ってたもん」
「父さん、母さん、こいつと登校すると良いこと起きないんだよ……」
「なによー、せっかく人が朝の弱い星斗のために迎えに来てあげたのにー」
「俺は頼んでいないし、美晴がいるからわざわざお前が来なくても大丈夫だ」
「むかっ!大体、星斗が――」
「はい!そこまで!とりあえず星斗は朝ごはん食べる!綾姫ちゃんは美晴と一緒にテレビでも見とく!お父さんは早く準備する!」
綾姫が俺に言い返そうになったところで、見兼ねた母がパンっと手を叩いて話を終わらせ、三人に明確な指示を出した。
『はい!』
息ぴったりに、三人とも大きな声で返事をした。
「父さん、おはよう」
一悶着あった後に父と話をした。父と俺は良く一緒になって、母に叱られる。
「おはよう、星斗、今日も大変だな……」
「お互いにね、朝から疲れるよ」
「こういう日もある、仕方ない」
「ハァー。そうだね、今日も頑張っていこうね
父さん」
「そうだな……」
『ハァー』
お互いに溜息を交え合いながながらも、父と話しているうちに気も晴れ、気づいたら、いつも家を出る時間になっていた。
「じゃあ父さん、母さん達行ってきます!ほら早く行くぞ、美晴、綾姫」
「うん、じゃあ行ってきますね、彗斗さん、陽子さん……」
「もう、待ってよお兄ちゃん。お父さん、お母さん行って参ります」
「はい、行ってらっしゃい!三人とも」
「気をつけてなー」
二人の見送りを受け、俺たち三人は足早に家を後にした。