狐 と 鶴のご馳走
元々は冬童話2018の投稿するつもりで書いたのですが規定文字数を知らなくて断念 (/o\)
勿体ないので短編として投稿しました。
後味は良くないです。
ご注意下さい
ある日のことです。
狐と鶴が森でばったり出会いました。
「こんにちは、鶴さん」と狐が言いました。
「こんにちは。良いお天気ですね」と鶴も答えました。
「どうでしょう鶴さん。
今度の日曜日、うちに遊びに来ませんか?食事をご馳走しますよ」
と狐は言いました。
「それはありがとうございます。ぜひ、お邪魔したいと思います」
鶴は喜んで答えました。
「じゃあ、楽しみにしています。う~んとお腹を空かして来てください」
狐はニヤニヤ笑いながらそう言うと去っていきました。
さて、次の日曜日です。
鶴は狐の家にやって来ました。
「やあ、待っていましたよ」
狐は鶴を家に招き入れると食卓に案内しました。
「さあ、思う存分食べてください」
狐は言いましたが鶴は困ってしまいました。
何故なら目の前に置かれた皿は底が浅く、鶴の長いくちばしでは食べることができなかったからです。
美味しそうなスープを鶴は恨めしそうに眺めることしかできませんでした。
「おや、どうしたんですか?
鶴さん、一口も食べていないではないですか。
食事がお気に召しませんか?」
「いえ、そんなことはないですよ。
ただ、ちょっとお腹の調子が悪くて……」
鶴は曖昧な笑みを浮かべると言い訳をしました。
「なんだ、そうなんですか」
狐は言うが早いか、鶴の前に置かれた皿を取り上げるとむしゃむしゃ、ぺろぺろと食べ始めました。
いかにも楽しそうな表情の狐を見て初めて鶴は狐の魂胆を悟りました。
(さては狐の奴、からかうためにわざと俺が食べられない底の浅い皿の料理を用意したんだな)
鶴は物凄く腹が立ちました。
怒鳴り散らしたい気分に駆られましたが、それを鶴はぐっとこらえます。
なんとかして狐に一泡吹かせてやらないと気が済みません。グーグーなるお腹を抱えたまま一生懸命考えます。そして、いい考えが浮かびました。
鶴はニッコリ笑うと狐に言いました。
「今日はお招き頂きありがとうございました。
お礼に今度は私がご馳走をしたいと思います。次の日曜日に私の家に来てください」
「わあ、それは嬉しいな」
と狐は二つ返事で答えます。
「うんとお腹を空かして来てくださいね」
鶴は内心、目にもの見せてやると思いながら狐と別れました。
そして、あっという間に次の日曜日。
「やあ、いらっしゃい」
鶴は狐を自分の家に招き入れました。
「こっちですよ。準備万端です」
鶴は満面の笑みを浮かべて言いました。
食卓には首の長い壺が二つ置いてあります。
鶴は器用にくちばしを壺に突っ込むと中の物を取りだし食べ始めます。
しかし、どうしたって狐には壺の中の食べ物を食べられません。
「おや、狐さん、どうしたのです。
全然食べていないじゃないですか。
もしかして、食べられないのですか?」
満を持した様に鶴は言いました。
狐は答えます。
「そうですね。どうもこれは私には食べらそうにありませんね」
鶴はここぞとばかりに大笑いをしました。そして、狐の壺を取り上げました。
「では、これは私が頂きましょう。
ご馳走が食べられないなんて本当に可哀想」
嘲笑う鶴を前に狐は平然と答えました。
「いえいえ、ご心配には及びません。
だって、ご馳走なら目の前にありますから、ね!」
狐は鶴に飛びかかると一噛みで殺してしまいました。
さて、その日の夕暮れ。
鶴の奥さんが子供と一緒に家に帰って来ました。
鍵を開け、家の中に入ります。
しかし、部屋は真っ暗で気配が有りません。
家には夫がいるはずなのに……
はて?と鶴の奥さんは首を傾げました。
明かりをつけると食卓の床に何枚か羽根が散乱しています。
何だか嫌な予感がしました。
「まあ、何ですな、奥さん」
背後からの声に鶴の奥さんはびっくりして振り返ります。
そこには狐が立っていました。
手にはぐったりとした子供が握られています。
狐は舌舐めずりをしながら言いました。
「奥さんのせいではありませんがね。
不用意に他人を家に招き入れるとろくなことにならないという話です。
もしも、あちらで旦那さんに会うことがあったらそう言っておいて下さい。
では、いただきます!」
狐 と 鶴のご馳走
本当に御馳走様でした。
2017/12/08 初稿
2017/12/11 後書き追記しました
2018/08/23 誤記修正しました
教訓としては、肉食獣は信用するな的な奴ですかね。
皆さんも狐を家に招待する時は気を付けてください。
鶴は天然記念物なので捕まえて食べてみようと思っちゃダメです。
念のために、追記しておきます。