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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
第14章 各々の戦い、である。
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本陣の救援を開始するのである


 我輩の名はアーノルド。自由気ままに生きたい錬金術師である。


 因縁の相手を見つけたらしいセランフィア嬢と行動を別にした我輩達は、行く先に見えていた、先んじて防衛線の救援に向かっている探検家達と合流するべく移動するのであった。






 至るところで侵略者達との戦いが繰り広げており、我輩達が探検家達と合流しようとしていた場所の付近でも、陣内へ入るべく門へ突入を始めた者達と、それを防ごうとしている魔物達との間で激しい戦いが起こっていたのである。

 そこに合流した我輩達は、その場で待機していた見覚えのある探検家に声をかけるのである。


 「此処の戦闘が始まってどれくらいであるか」

 「まぁ、始まって1時間弱って……薬師先生!?」


 返答とともにこちらを見ると、探検家は突然大きな声を上げて驚いた表情を見せるのである。そして、彼の声が聞こえたであろう探検家達も同様に我輩達を見て驚いた様子を見せるのである。

 彼らにとっては、我輩達が戦場に来たのがそれほどにおかしな事なのかと思いつつ、そのまま質問を続けることにするのである。



 「それで、なぜ門を突破するのにこれほど時間がかかっているのであるか?」

 「見て分からねぇのかよ、魔物達の反撃が激しいんだよ」


 我輩の質問に対し、そんな当たり前の事も分からないこいつは馬鹿なのか? と言わんばかりの態度を見せる探検家であるが、我輩に言わせれば彼らこそ知恵が足りないと言わざるを得ないのである。


 「デルク坊、門を突破するので荷車を向かわせるのである」

 「おいおい薬師先生、何を……」


 我輩の言葉に呆気に取られる探検家を横目に、我輩はデルク坊に門へと向かわせるように指示するのである。


 「おじさん、どうするの? 魔物いっぱいいるよ?」

 「あの激しい戦場をどうやって突破するのですか?」


 先程の探検家達のような疑問の表情を浮かべ、サーシャ嬢達は我輩を見るのである。

 過去の事例から、こういう状況に対する道具の適した使い方を我輩は幾つか思いついたのであるが、二人はどうやら思いつかなかったようである。

 今回の救援にあたり、道具の利用方法を簡単に説明されただけの探検家達であればそれも致し方ないと思われるのであるが、まさか二人も同じとは思わなかったのである。

 平時の研究や集落の生活の場であれば、我輩も考えつかないような閃きを思いつくこともある二人であるが、こういった緊張感が高まる戦場等での経験は、まだまだ足りないようである。研究ばかりではなく、ダン達と共に大森林内での狩りに付きそう機会を増やすべきであろうか。


 そう思った我輩は、ふとデルク坊に先程サーシャ嬢が我輩にした質問を、デルク坊にしてみることにしたのである。


 「デルク坊は、何か思いつくのであるか?」

 「え? 障壁で門を越せたら簡単かなって」

 「段差と坂道、どちらが都合が良いのであるか?」

 「飛ぶより走る方が簡単だよ!」


 一瞬の間の後、上がる答えは我輩が思いついた考えの一つであった。

 ダン達が障壁や結界を防御用のみではなく、様々な運用方法で活用しているのは三人とも何度も目の当たりにしているのであるが、戦いの場での道具の活用方法の閃きでは、経験の差がある分デルク坊は二人よりも優れているようである。

 様々な経験を増やすことが、サーシャ嬢達の錬金術師としての今後に繋がるであろうと感じた我輩は、これからはもう少しダン達の外出に彼女たちを付き添わせた方がいいかもしれないと思いつつ、門を越していくよう橋状に障壁を次々に展開していくのである。


 「よおっし! いっくぞおおおお!」


 少し先で展開した障壁を、荷車を牽いたデルク坊は一気に駆け上がっていくのである。

 ほぼ透明である障壁を駆け上がっていくデルク坊の姿がよほどおかしかったのか、門付近の探検家の一部に、戦闘中にもかかわらず一瞬動きが止まってしまう者が現れるのである。おそらく、突発的な事に対する能力が低い者達なのであろうが、戦闘中にこれは致命的なのである。

 そういった者達を見つけ次第、魔獣達と隔離をさせるために我輩は結界を次々に展開するのである。


 「お前ら! 薬師様に続けぇぇぇ!」


 こちらの動きを見て、どうやら門を乗り越えていく足場を作ったということを理解したであろう探検家達が、大きな声を上げて次に続くことにしたようである。

 ふとそちらを見ると、我輩達の足場を利用する者、配布した障壁石を利用して足場を作っていく者、障壁や結界を使って門で戦っている魔獣達を跳ね退けたり隔離したりと様々な道具の利用が始まったようである。


 「最初から、道具を使えば楽であったであろうに」

 「"本陣救援"のために渡された道具ですから、使いづらかったのでは?」

 「いや、此処での戦いも本陣救援のためである」

 「単純に、おっちゃんの説明が悪過ぎただけじゃないかなぁ」


 デルク坊の言葉に我輩は、彼らに道具を渡す際に、

 

 「これは傷薬である」

 「これは自分を守る壁を、こちらは空間を、ある程度思う形で展開するのである」

 「これは身体を乗っとろうとする魔物から、自身の身を守るものである」


 という説明と利用方法を述べたことを思い出すのである。

 確かに少々簡素であったかもしれないのであるが、もう少し応用を利かせても良かったと思うのである。


 「ダン達は、それだけで十分であったのである」

 「障壁や結界に関して基本運用しか知らない彼らに、いきなり応用を求めるのはさすがにかわいそうかと……」

 「ダンおじさん達はとってもすごい人だから、できるだけだよ」

 「おっちゃんは周りに恵まれすぎてるんだよ」


 我輩の零した一言に、サーシャ嬢達は呆れたような様子を見せるのである。

 全員から、もう少し丁寧な説明や実演を心がけろと言われたような気がした我輩は、これからはそういう経験を積んでいかなくてはと思いつつ、本部テントであろう豪華な旗が立っている場所へ向けて障壁の足場を伸ばしていくのであった。






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