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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
2章 辺境の集落と新しいメンバー、である。
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意外に多い理解者と、知りたくなかった面倒な事実


 俺の名はダン。帝国でたった二人の現役特Aクラスの探検家だ





 

 リリーの先導にしたがって、俺達は研究所内の一室の前にいる。


 「ここが、私の職場よ」


 リリーは、発掘された魔法陣の解析を行っている魔法陣解析研究室という場所の室長をしているようだ。部屋に入ると、数人の研究員がリリーや俺達に頭を下げる。

 リリーは研究に戻るように指示すると、室長室に俺達を案内した。

 室内は、几帳面なリリーらしく研究用の資料や報告書などが丁寧に整理されている。そして、必要外のものはほとんど無かった。


 「珍しいな、お前が花を花瓶に生けてるなんて」


 俺は、無駄を極力省くリリーの性格を知っているので、応接用の机の上に花を生けてあるのが珍しかったのだ。


 「私は、必要ないと思ったんだけれどね、新しく秘書になった子が少しは女性らしくしましょうって二日に一回持ってくるのよ」

 「へぇ、殺風景な部屋よりも良いと思うぜ」

 「そうね、慣れて来るとそう思うわ。そう思うとね、不思議な物で毎日綺麗な花があった方がいいと思うのよ」

 

 リリーはそう言って笑う


 「秘書に嵌められたか」

 「言い方が良くないわよリーダー。でも、そうね。彼女が花を持って来ない日は、私が用意するようになったわ。最近なんか、ほとんど用意しないのよ」

 「じゃあこれは、リリーが選んだ花なのか?なかなか良いセンスだと思うぜ」


 俺は、生けてある花を見る。色使いは派手なわけではないのだが、ふと目を引く華やかさがある。おそらくリリーの事だ。やり出したら凝り出したんだろう。


 「俺は、花のことなんか興味もないんですがね、これはなんとなく目が行きますわ」

 「そうですね、何というか花に対する愛情というか…そんなものが感じられる気がします」

 「あら?そう?そうね、せっかくだから綺麗に見てほしいとは思っているわ。そういってもらえると嬉しいわね」


 リリーの言葉に俺は納得する。センセイから、リリーは他の人間よりも無意識下での意志の具現化が強い事を聞いている。おそらくこの生けている花にも、リリーの意志の魔法がかかっているのだろう。


 「で、メンバーに加える予定の秘書っていうのはどこにいるんだ?」


 俺は、リリーに向き直しそう尋ねる。部屋には俺達しかいないからだ。


 「もうすぐ来ると思うわよ。お茶の用意を頼んでおいたから」


 リリーがそう返事をし、少し雑談をしていると部屋をノックする音がする。


 「来たかしら?入ってちょうだい」


 リリーがノックに応じると、ドアを開けて一人の女性が中に入ってきた。その姿を見て俺は少々驚いた。

 一般的な研究員や秘書などの落ち着いた格好の似合わない。どちらかというと派手目な格好の似合う女性だったからだ。

 正直、花を好んで持ってくるようなタイプには見えなかった。どうやら、それは残りの二人も同じだったようで、一瞬驚いていたのを俺は確認している。


 「室長?お客様は3名なのですか?お茶を5つ用意するようにとおっしゃられていたと思うのですが」


 秘書は、用意した茶の数と人数が合わないので戸惑っているようだ。リリーはどうやらまだ彼女に話を通していないようだ。


 「確かに5つ用意するように伝えたわ。ミレイ、あなたもこちらにいらっしゃい。話があるわ」

 「??。はい、わかりました。お客様、お茶をどうぞ」


 そういうと、ミレイと呼ばれた秘書は慣れた手つきで茶を俺達の前に置いていく。立ち振る舞いもしっかりしてるな。違和感があるのは容姿だけか。

 俺は中々失礼なことを彼女に対して思いながら、つい最近自分で言ったことでもあるが、人を見た目で判断してはいけないとことを再認識する。

 全員の茶を配り、俺達の向かい側にミレイが座ったのを確認すると、リリーは話を始める。


 「まずは紹介するわね、こちらはミレイ・ロックバード。ロックバード伯爵の四女で、私の秘書よ」

 「始めまして、ミレイ・ロックバードと申します」

 「ダンだ。特Aクラスの探検家だ。よろしく頼む」

 「Eクラス探検家、ドランだ。ロックバード伯爵令嬢さま、言葉遣いが悪いけど許してくれや」

 「新人探検家の、は、ハーヴィーです。ロックバード伯爵令嬢さま、よ、よろしくお願いします!」

 「お二人とも、ミレイでいいですよ。ダン様のお話は、教授や父からよく聞いております」


 貴族ということで、言葉遣いに多少気を使っているドランと恐縮しているハーヴィーに、ミレイは優しく答える。


 「ロックバード伯爵は、この研究所の所長で、以前、宮廷魔導師をしていたようなのよ」

 「宮廷魔導師が研究所に来たのか?」


 宮廷魔導師は、騎士隊や開拓団に勤める者の中で、魔法の素質がある者に魔法を教える教官役なのだが、それとは別に総合魔法研究所を初めとする各研究所・研究室の監査も行っている。

 研究所や研究室の研究が本当に帝国の利益になるものなのか、予算や研究資材の横領、情報の横流しの有無などを監査している。時には研究試験に立ち合ったり、実際に魔法の使い具合などを調べることもある。

 そこで、弾かれた研究や研究室は中止や閉鎖されることになる。以前見た、使い魔の研究所はその後研究を中止することになり、馴致魔法の研究に変わったようだ。


 「そうなのよね、元々研究が好きだったみたいね。それでね、面白いことにセンセイと面識があるの」

 「センセイと?」


 宮廷魔導師とセンセイが接点があるなんて珍しいな。


 「センセイが研究所に入ったばかりの頃、錬金術用魔法陣をセンセイの代わりに描いたり、純魔力の操作方法を教えていたことがあったらしいのよ。見返りに錬金術用魔法陣を写させてもらったみたい」

 「あぁ、錬金術の魔法陣は魔法使いにとっては宝の山らしいからな」

 「違うわ、技術の結晶であり、芸術よ。そんな俗な例えは止めてほしいわ、リーダー」


 俺の言葉にリリーは、即時に返答する。リリーのこだわりに触れちまった。


 「はいはい、悪かったよ。それで?」

 「私がチームを解散して研究職に就くことになったとき、ここの研究所を希望したの」

 「ああ」

 「そうしたら、所長は宮廷魔導師時代に錬金術研究所の監査を担当していたみたいで、私の事も知っていたみたいなの」

 「何て言う偶然だろうなぁ」


 リリーの言葉に半分呆れの混ざった返事を返す。


 「それで、何の研究がしたいかと聞かれたから魔法陣の研究がしたいと言ったら、所長が兼任していたここの室長を任されたのよ」

 「何でそんなに至れり尽くせりなんだろうな?センセイと関わって、研究所の監査まで担当してたんだろ?」


 そんな俺の疑問に答えたのはミレイだった。

 

 「父は、アーノルド様と関わったことで、徐々にアーノルド様の考えに共感していったようです」

 「センセイに共感?珍しい人もいるもんだな」


 俺の言葉にミレイは笑って答える


 「父も最初は、アーノルド様が珍しい魔法陣を使っているので、書き写して研究したいと思っていただけだったそうです。ですが、アーノルド様が時々話される学者の一族が持っている歴史や文化等に触れ、帝国を共に作った亜人の幸せも考え、共に歩んでいくべきだというアーノルド様の考えに惹かれていったようです」


 ミレイの言葉に俺は頷く。きっかけはどうあれ、俺や陛下と同じセンセイの理解者が他にもいたことが嬉しかった。


 「その、アーノルド様と何年も行動をともにした室長ですから、父も力になりたかったんだと思います」

 「なるほどねぇ、どこでどうつながるかわからんもんだ」

 「後は、個人的に魔法陣研究の仲間が増えるのが嬉しかったんだと思いますよ。余り人気がない研究室でしたから」


 そう言ってミレイは笑う。そして、リリーも苦笑いだ。


 「所長、暇があると研究室にやってきて魔法陣解析とか研究とか始めようとするのよね」

 「無くても来るときがありますから、来たら追い返してくださいね」


 なんだ?ただの研究バカの気もしてきたぞ。まぁ、宮廷魔導師から研究員になっちまうような御仁だ。その気も当然あるよな。


 「ところで、何でミレイさんはこの研究所に入ったのですか?やはり伯爵様の影響なんですか?」


 ハーヴィーが気になったのか、ミレイに就職のきっかけを聞く。だが、なぜかミレイの歯切れが悪い。

 

 「えっとですね……もともとはここ志望じゃなかったんですけど、研究所が変わっちゃって……」

 「この子ね、研究所に就職した理由が、錬金術研究所に入るため……というか、センセイに逢うためだったのよ」


 リリーから、驚きの事実が投下される。


 「え?嘘だろ!?」

 「室長にも同じ事を言ったらとても驚かれたのですが、それほどの事なんですか?父は、すごく喜んでくれていたのですが…………」


 本気で驚いた俺に、ミレイは戸惑いを隠せないようだ。


 「だって、センセイだぜ?あのセンセイだぜ?分かってんの?」

 「父からアーノルド様は、権威や権力、利権などに左右されず、ただひたすらに亜人を含めた帝国臣民全ての思いを叶えるという自分の信念を貫き通す清廉な方だと聞いていたのですが、違うのですか?」


 予想以上に大袈裟な捉え方をされている。というか、素直に受け取りすぎだからな。それ。


 「間違ってはいないわ、ミレイ。でもね、正しくもないわね。」

 「どういうことですか?」

 「そこまで大仰な物じゃないってことだよ。ただ、自分で決めた錬金術の理念を守ろうとした結果そうなったってだけでな。センセイは、そんなつもりでいろいろやってねぇから聖人を見るような目で見るのはやめておきな。センセイはそういうふうに思われるのが嫌いなんだ。実際は、ただの頑固なおやじだよ」

 「少し補足するならば、いろいろなことがあって苦労もあるけれど楽しいこともいっぱいある、そんな人よ。あの人に似合う言葉は清廉や高潔じゃないわ。自由とか、奔放ね」 


 どんどんとミレイの中でのセンセイの像が崩れて行くようで、ミレイの顔がくるくる面白いように変わっていく。情報が混乱しているんだろうな。

 でも、センセイとこれから逢うことになると考えると今のうちにさっきまでの評価を崩しておいた方がいい。センセイは本気で距離を取るし、ミレイは傷つくからだ。


 「まぁ、センセイが自由過ぎて、俺達以外誰も研究所によりつかなかったからな」

 「あの実験の数々を巻き込まれるのは嫌でしょう」


 リリーのその言葉に混乱の中にいたミレイは反応する。


 「研究所に誰も行かなかったのは、アーノルド様…というか、錬金術の功績や理念が特殊過ぎたために、ほぼ全ての研究員に理解されなかったことと、研究員のような形で室長達がいたので、それ以上の研究員は必要なかったと聞いております」

 「あぁ、そういわれるとなぁ」

 「確かにその通りね、センセイがやったことは現在の魔法技術のに対する破天荒を成したといっても良いわね」

 「え……?そ、そんなにアーノルドさんって常識はずれで型破りな人なんですか?」

 「ハーヴィー、破天荒ってのは本来は今までの常識を打ち破るほどの事をやるって意味だ。それくらいやるのは、型破りなやつくらいしかいないから、そういう意味で使うやつもいるけどな。よく覚えておきな」

 「一応、ハーヴィーの言っている意味でもセンセイを例える言葉としては合ってるとは言っておくよ。さっきリリーも言ったろ?自由で、奔放なんだ。これからどんなことが起きていくか、わかんねぇぞ。楽しみにしておけよ」

 「ひいいぃぃぃ、お、お手柔らかにいいぃぃぃ……」

 「おお?いいねぇ。楽しみだ」


 リリーと俺の言葉にビビったのか、不安そうな顔をするハーヴィーと、楽しそうに笑うドラン。

 意外にドランの奴が頭が良さそうだ。戦闘バカだと思ったが、意外な面を見てしまった。本当に人は見かけで判断しちゃいけねぇな。


 「あの……これからダン様達は、アーノルド様のところに行くのですか?」


 俺達の会話を聞いてミレイがおれに質問する。


 「ああ。俺達はセンセイ専属の探検家チームとして、センセイと一緒に大森林の探検に行くことになってるんだ」

 「そうだったんですか。……それならばアーノルド様に、君と研究所を守り切れなくてすまなかった。と父が言っていたと伝えていただけますか?」

 「どういうことだ?」


 ミレイの言葉に今度はこちらが質問を返す。

 宮廷魔導師時代にセンセイと交流を持ち、錬金術の目的・センセイの思想に共感した伯爵は、研究所の監査役として関わることで、より理解を深めて行ったようだ。ところがある出来事からセンセイを取り巻く環境が変化することになる。


 「ある出来事ってなんだったんですかい?そんな大事をアーノルドの旦那はやらかしたんですかい?」」 


 ドランが、興味深そうに質問する。思い当たることはあるけど、たいした話じゃねぇんだよなぁ

 

 「事の発端は、開拓団に魔法の道具の作製を依頼した宰相閣下に、アーノルド様が拒否をしたことで起こった言い争いだったそうです」

 「は?そんなことですか?」


 ミレイの返事にハーヴィーは、拍子抜けしたようだ。やっぱりそれかぁ。そう普通に考えれば、その程度なんだよなぁ。


 「そう、ただの意見の衝突で終わる話よ。ただ、センセイが道具の作製を拒否した理由が、亜人を守るためだったのからというのが人間至上主義者の宰相閣下としては問題だったみたいね」

 「開拓の途中で亜人に出会ったらどうするって話になったとき、人間至上主義の宰相閣下は排除と答えたんだ」

 「そりゃ、亜人との共存とかを目指してる旦那が、賛成するわけはないわな」


 俺達の言葉を聞いて、ドランは納得したように頷く。


 「そう、亜人を傷つける道具になる物は作ることはできないと突っぱねたのよ」

 「それって、開拓団の活動に協力しないってことですか?」


 リリーの言葉にハーヴィーが質問する。


 「違う。センセイが拒否していたのはあくまで、亜人を傷つける可能性のある道具の作製だけだ。開拓団員の民の薬や道具などを作る事で協力することは一切拒否していない」

 「それなら別に良いじゃないですか」

 「それをよしとしなかったのが、宰相閣下だ。亜人に配慮は不要。開拓を推し進める道具を作るのが民のためだと言ったのさ」

 「それに対してセンセイの答えは、その考えは人間至上主義の宰相閣下個人の考えで、いたずらに衝突を増やすことが民の幸せになるとは思えないって言うものだったのよ」

 「その出来事を知った反人間至上主義の貴族達が、アーノルド様を反人間至上主義と勘違いしたようです」


 ミレイの言葉に俺は溜め息をつく。


 「それで、そんなややこしいことになったのかよ…………都合の良いところだけ抜き出して仲間意識出すなよ……」

 「反人間至上主義とアーノルドさんの思想って違うんですか?」

 「簡単にいうと、人間至上主義・反人間至上主義共に帝国民は現在帝国にいる人間限定よ。センセイの考え方は、帝国建国時に協力関係にあった全ての種族を帝国民の祖として尊敬し、平等に扱うという考え方。根本的に違うのよ」


 ハーヴィーの質問にリリーが答える。

 そう、考え方が根本的に違うのに、自分の都合のいいように解釈してかき回してくれたわけだ。


 「その後、宰相閣下は前陛下に具申することでアーノルド様を動かそうとされたようですが、思うように行かなかったようなので、前陛下が病床に臥されたのをきっかけに錬金術研究所に研究員を派遣することで介入、アーノルド様を追い出すことで研究所の乗っ取ることを画策しはじめたようです」


 「うっわぁ…なんだそれ。全然知らなかったわ。宰相閣下、陛下が病気になってから大人しいと思ってたら、そんなことしてたのかよ」


 全然興味ないような振りしてめちゃくちゃお熱じゃねぇかよ、そこまでして亜人を排除したかったのか?今の開拓ペースで何の問題もないはずだぞ。


 「宰相閣下の動きを察知した反人間至上主義の貴族達は、アーノルド様を反人間至上主義の御輿として担ぎ上げる為に錬金術研究所に研究員を派遣し、介入しようと画策したようです」

 「本当に自分たちの都合の良いように物事を受けとるな、連中は」

 「宮廷魔導師の監査の一環でその動きを察知した父は、アーノルド様と研究所を守るために協力者の助力を得て、総合研究所の副所長に就任し、錬金術研究所の人事や予算編成を担当することで両陣営の介入を防ぐことにしたのです」

 「伯爵に協力者がいたのか?」

 「はい。私が知っているのは、陛下の側近であった前宰相閣下とその関係貴族、帝国治療院の幹部や理事です。他にもアーノルド様の思想に影響をうけた貴族が何名かいたようです」


 予想通りの人物と、予想外の大物が協力者だった。


 「前宰相閣下は陛下の理解者だったから、病床の陛下に心労をかけさせないために協力するのはわかるが、帝国治療院はなんでだ?」

 「治療院は、回復魔法の得意だった森の民との結び付きが強かったので人間至上主義に対して否定的だったことと、ゴードン様からアーノルド様の人柄やキズいらず?という傷薬の報告を受けたことで、錬金術の理念や活動内容に対して好意的だったと聞いています」


 何というか、センセイの思想を理解してない連中がセンセイをおもちゃに遊んでいるようで気分が悪いな。


 「ですが、父が研究所の干渉を防いでいることに業を煮やした両陣営が、錬金術研究所に対し必要以上の便宜を計っているという職権濫用を適用させて副所長から更迭、今の研究所の所長に異動することになってしまいました」


 両陣営が結託したのか。結局は同じ穴のムジナって事だよな。センセイや俺からすれば、どっちも人間至上主義だからな。


 「その後陛下が崩御され、それを期に、宰相閣下は貴族に対する不敬罪をもってアーノルド様を拘束しようとされたそうです」

 「まぁ、センセイの宰相閣下に対する物言いなら十分適用されるな」


 なにせ、本人の前で馬鹿だの頭が沸いているだの、言いたい放題だったからな。


 「そこで、宰相閣下は度重なる不敬罪による処刑と研究所の閉鎖。それか自分の元に下り、研究を続けるかを取引しようと思ったようです」

 「それなら多分、センセイは処刑を選ぶな」

 「そうね、錬金術と自分の理念に殉じるわね」


 その話を聞いた俺とリリーの意見は同じだ。長年センセイを見てきた俺たちならわかる。


 「宰相閣下もそれをわかっていたようで、現陛下に交渉を持ちかけたようです」

 「どんな条件だったんだ?」


 俺の質問に対するミレイの返事に俺は驚いた。






 「処刑の代わりに辺境への放逐の減刑、その代わりに錬金術研究所の閉鎖を取りやめ、宰相閣下直下の研究施設にすることです」

 「は?」


 確か、錬金術研究所って閉鎖されたんじゃなかったか?

 





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