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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
13章 大森林の駆除活動、である。
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お休みにされちゃった……


 わたしの名前はサーシャだよ!

 森の民で、ひいおばあちゃんがれんきんじゅつしを始めたノヴァおばあちゃんなんだよ!

 だから、わたしも立派なれんきんじゅつしになるために、アーノルドおじさんやミレイおねえちゃんと一緒にお勉強を頑張るんだ!






 「リーダーが、いつも無茶ばかり言ってすまないって謝ってたよ」

 「そうであるか。ダンにしては珍しいのである」

 「センセイにじゃないよ。サーちゃんとミレちゃんにだよ」

 「我輩も作業の補佐をしているのであるが」

 「だからセンセイは今まで以上に無理をしろ。だってさ」

 「無理のしようが無いのであるが」


 ダンおじさんの真似をしながらおじさんに意地悪な事を言うアリッサお姉ちゃんを見て、わたしはダンおじさんがそう言っている格好を思い浮かべちゃったら、少し面白くなっちゃった。

 確かにダンおじさんならそう言うかもしれないなあって。


 「それはともかく、本当に二人とも悪いね。結界石とか障壁石のような作るのが大変な物ばかり作らせちゃって」


 そう言ってアリッサおねえちゃんが謝ってきたけれど、コルク達はお薬は作れても、お人形や魔法石を作ることはできないもんね。

 だったらコルク達がお薬を作って、わたしたちがコルク達が作れないものを作った方がいい。


 少し大変だけど、みんな頑張ってるから、わたしたちも頑張らなきゃね!


 「大丈夫だよ! まだ頑張れるから安心してって、ダンおじさんに伝えておいて! ね! ミレイおねえちゃん!」

 「ええ、そうね。皆さんも頑張っているなか、私たちだけもうだめっていう訳にはいかないよね」


 あれ?

 ミレイおねえちゃんちょっと大変そう?


 わたしはまだ結構平気だったからそう答えたんだけれど、ミレイおねえちゃんの答えは少し大変そうに聞こえたの。

 それってもしかして、わたしが森の民でミレイおねえちゃんが人間だからなのかな?

 たしか、人間は森の民よりも魔法が苦手なんだよね。

 

 「ミレちゃん、少し休んだ方がいいんじゃないかい?」


 アリッサおねえちゃんもそう思ったのか、ミレイおねえちゃんに話すの。

 わたしの勘違いじゃなかったみたい。


 「いえ……まだ大丈夫です」

 「いや、ミレイ女史。今日は休むのである」


 大丈夫だって笑うおねえちゃんに、おじさんがそう言ったの。

 そんなおじさんの顔は、いつもより少しだけ怒っているように見えたの。


 「アーノルド様……私は……」


 おじさんから休めって言われて、悲しそうな顔をするミレイおねえちゃんの言葉を遮って、おじさんはアリッサおねえちゃんの方を見るの。


 「アリッサ嬢、繁殖地の状況は逼迫しているのであるか?」

 「いや、今はまだ大丈夫さね。ただ、これから動きが活発化するにあたって、道具に余裕があった方がいい状況ではあるけどね」

 「では、数日程度の遅れならば問題ないのであるな?」

 「その程度なら問題ないだろうね」


 アリッサおねえちゃんの返事を聞いたおじさんは、私達を見て、


 「いま、アリッサ嬢から聞いた通りである。これから繁殖地の魔物の動きが本格化するにあたり、これからより忙しくなる可能性が非常に高いのである。なので、二人はこれから3日ほど錬金術・魔法の使用を禁止し、十分な休息を取るのである」


 そう言ったんだ。


 つまり 


 ミレイおねえちゃんだけじゃなくて、わたしもお休みをすることになっちゃった。

 まだ大丈夫なんだけどなぁ…………。






 「サーシャ嬢、どこに行くのであるか」


 着替えの服を持って湯浴み場に向かっているわたしに、おじさんが声をかけてきたの。


 「湯浴み場に行こうと思ったんだよ」


 わたしの返事を聞いたおじさんは、うんうんと首を動かすの。


 「では、我輩が湯を張るのでそれまで待っているのである」

 「え? わたしできるよ?」


 湯浴み場のお湯張りは、わたしかミレイおねえちゃんがいつもやっているのに、なんでおじさんはそんな事を言うんだろう?


 そんなことを思っていると、おじさんは、

 

 「二人は魔法の使用も禁止である。代わりに我輩がやっておくのである」


 そう言って湯浴み場の方に行っちゃった。

 そんなおじさんに、うーんと思いながら食堂の方に行くとそこには、うーんとした顔のミレイおねえちゃんがいたの。


 「ミレイおねえちゃん、どうしたの? うーんって顔してるよ?」

 「ふふ……。サーシャちゃんもそんな顔をしているよ?」


 わたしを見て、ミレイおねえちゃんはそう言って笑ったから、わたしは隣に座ってさっきあった事をお話したの。


 「サーシャちゃんもそんなことがあったのね」

 「じゃあ、ミレイおねえちゃんも?」


 わたしの質問に、ミレイおねえちゃんは困ったような顔をしてこっちを見るの。


 「わたしの場合は喉が乾いたからお水を飲もうとしたら、アーノルド様に<ミレイ女史は魔法を使うのは禁止である。我輩が用意するのでそこで座っているのである>って言われちゃってね」

 「そうなんだぁ」

 「じゃあ、お水を普通に汲もうと思ったら、<ミレイ女史は休みであるので、そういう肉体労働も我輩がやるのである>って言われちゃってね」


 ミレイおねえちゃんの言葉を聞いて、おじさんがそんなに何もさせないつもりなんだって思ったら、なんか少し心がもやもやってしちゃった。

 わたしたちの事を心配してくれているのは嬉しいけど、大きな病気とか怪我とかして動けないわけじゃないから、もう少しやりたいことをさせてくれてもいいのにって思っちゃった。


 「わたしの事を心配して休ませていただけるのは嬉しいんだけれどね。そこまで徹底されると窮屈だなあって思っちゃって……」


 やっぱりミレイおねえちゃんも同じようなことを思っちゃったみたいで、困ったような顔をしてわたしにそう言ったの。


 「だったらこんなところでぐちぐち言ってないで、あの男にそう言えばいいじゃないか」


 そんなところに、セランフィアさんがやってきたの。

 何か機嫌悪そうだけど、なにかあったのかなぁ。


 セランフィアさんは、大分怪我も治って今は杖を使わなくても少しの時間なら一人で歩けるようになったし、弓の訓練もだいぶ進んできたみたいなの。


 まだまだだってセランフィアさんは言ってるけれど、わたしからすればすごく上手に弓を仕えて羨ましいなって思うんだ。

 弓が使えれば、わたしも狩りに行けるのに。


 お兄ちゃんやおじさんには内緒だけど、わたしもいつかみんなと一緒に戦いたいと思って、攻撃の魔法をお勉強してるの。

 だけど、回復の魔法とかよりもいつまでたっても上手にならないの。


 パットンになんでなのか聞いてみたけれど、森の民とか夜の一族とかの種族とは別に、人それぞれ得意不得意な魔法があるんだって。

 わたしは回復とか補助とかの魔法は得意だけど、攻撃の魔法は苦手みたい。


 それを聞いて、だから前に魔の森で大きな鳥の魔物と戦った時も、魔法で攻撃しても全然倒せなかったんだなぁって思ったの。


 「サーシャは優しい子供だからね。無意識に相手に手加減を加えちゃってるんだと思うよ。サーシャらしくて良いと思うよ。ボクはね」


 パットンはそう言ってくれたけれど、わたしはいつまでたってもみんなに守られているばかりじゃあだめだと思うの。


 だから、最近は弓を使えるようになりたいなって思ってるんだ。


 今度セランフィアさんかハーヴィーおにいちゃんに教えてもらおうかなぁ。


 「はっきりとそこまでしなくても良いって言えばあいつもそこまで窮屈にはしないだろう」

 「そうなんですけれど、話そうとする前に行動を起こしてしまうので話すタイミングが……」

 「ああいう手合いは、強引に引き止めてでも話を進めないと駄目だ! おかげで散々な目にあったんだぞ!」

 「え? 何かおじさんにされたの?」


 おじさんが意地悪や酷いことをするとは思えないけれど、セランフィアさんも嘘を付く人じゃないし、ミレイおねえちゃんとどういうことだろうとお互いを見合っていると、


 「あはは、それはとばっちりさね」


 セランフィアさんの後ろからアリッサおねえちゃんもやってきて、私達の話に加わるの。

 よく見ると寒い時期なのに二人とも結構汗をかいていたから、もしかしたら二人で一緒に訓練していたのかもしれないなって思ったの。


 「まあ、訓練が終わって二人で湯浴み場に行ったら、ちょうど魔法陣を起動させてるセンセイと鉢合わせしたってだけなんだけどね」

 「そんな生易しい話じゃないぞ! 私はなぁ……! 私はなぁ……!!」

 「それは、誰もいないと勝手に判断して素っ裸で湯浴み場に突入したセラにゃんのせいだと思うさね」

 「ば……! それを言うな! それに、にゃん付け禁止だと言ったはずだ!」

 「意見を通したかったら、まずはあたしに一撃くれてから言うんさね。それが獣人のルールじゃないのかい?」

 「く……! 妙な知恵を付けて……!」


 そんな言い合いを始める二人の話を聞いて、わたしは一つ気になることがあったから、聞いてみる事にしたの。


 「おじさん、セランフィアさんの裸見たの?」


 わたしの言葉を聞いて、顔を真っ赤にしてセランフィアさんがこっちに向かって来るの。

 ちょっと顔が怖かったから、聞いちゃいけなかったことなのかも……。


 「あはははは。大袈裟に言ってるけど、センセイは湯の温度調整に夢中でこっちなんか見向きもしてなかったさね。セラにゃんが一人で暴走して騒いでるだけさね」

 「水に……水に反射したかもしれないだろう!」

 「んなわけあるかい」

 「サーシャ嬢、湯浴み場の準備ができたのであるが、アリッサ嬢達が訓練をした後なので、彼女たちを先に……っていたのであるか」


 ちょうどそこにおじさんもやってきて、この場所がもっと騒がしい感じになっちゃったの。

 だけど、その感じがとっても楽しくて、こういう日は久しぶりだなあって思ったんだ。


 今のお仕事が終わったら、皆でまたこういう楽しい日にできるといいなって思ったから、しっかりお休みしたらまたれんきんじゅつを頑張ろうって、わたしは思ったんだ。


 でも、おじさん、


 本当にセランフィアさんの裸、見てないよね?

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