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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
10章 辺境の変化と霊木の管理集落、である
227/303

久しぶりに全員揃ったのである


 我輩の名はアーノルド。自由気ままに生きる錬金術師である。






 ようやくアリッサ嬢の屋敷へと戻ることが出来た我輩とダンであったが、そんな我輩達を待っていたのは研究所時代にダンとチームを組んでいたメンバー達だったのであった。


 「お帰りなさい二人とも。少し遅かったわね」

 「お、おう。久しぶりだな」

 「久しぶりなのである」


 我輩達はリリー嬢が菓子を並べている光景を見て、我輩達は嫌な予感を感じずにはいられないのである。

 なので、恐る恐る我輩は確認をするのである。


 「リリー嬢、これは誰が作ったものなのであるか?」

 「センセイ、開口一番それなのかい? それよりも言わないといけない言葉があるんじゃないのかい?」

 「ああ、おそ…………」

 「リーダーには聞いてないわね。センセイに聞いてるんさね」


 有無を言わさぬアリッサ嬢の様子に、ダンは口を閉ざして我輩を見るのである。


 「アリッサ嬢、何をそんなに」

 「あたしが何で怒ってるかって? 本当にわからないのかい? センセイの頭はそんなに茹で上がっちまったのかね」

 「火に油を注ぐなよ…………」


 ダンの冷ややかな視線が我輩を襲うのである。 

 リリー嬢が用意している菓子のことに意識がいきすぎて、ついおざなりな返答をしてしまったのである。

 なので、我輩は気を取り直して返答を返すのである。


 「遅れてすまなかったのである」

 「一言で終わりかい…………まぁ、いいか」

 「そうね、これ以上求めると言い訳を始めるもの」

 

 アリッサ嬢は我輩の謝罪を聞くと、大きくため息をつくと先程までの雰囲気を解くのである。

 しかしリリー嬢、人の詳細な説明を言い訳と断じるのはどうかと思うのである。


 「いいかい? 予定を過ぎても帰ってこないからこっちは大変だったんさね。サーちゃんとミレちゃんは不安で泣き出すし、ドランは文句を言い出すし、ハーヴィーは自分が行ってほしいと言ったからじゃないかって責任を感じ出すし…………」

 「アリッサは到着した俺達を見るなり、一緒に大森林に向かおうと言い出すしな」

 「ウォレス! 余計なことを言うんじゃないよ!」


 横から口を挟むウォレスに、アリッサ嬢は一気に顔を赤くして怒鳴るのである。

 激しく怒っているのであるが、先程より全然怖くないのである。


 「表に出さなかったけれど、一番不安そうにしていたのはアリッサだよね」

 「シン! 勝手なことを言ってんじゃないさね!」


 部屋に入ったときはウォレスに隠れてわからなかったのであるが、隣には灰色の髪を携えた優男、シンもいたのである。

 つまり、この部屋には研究所時代に共にいた者が全員揃っているということになるのである。


 「この騒がしい感じも懐かしいですね」

 「ゴードン、懐かしがってんじゃないさね!」

 「アリッサ、八つ当たりは良くないぞ」

 「リーダー! あんたに言われたくない!」


 いつのまにか、アリッサ嬢に矛先が向かい全員から集中攻撃を受ける様を、我輩は呆気に取られて眺めているのである。


 「こうなるだろうなと思ったから、皆のいる食堂ではなくこっちに来てもらうことにしたのよ」

 「…………なるほどである」

 「リリー! 伯爵がいるでしょうが! なんでそんなにセンセイの隣に座ってるさね!」

 「別にこれくらい問題ないわよ。あら? 嫉妬かしら」

 「~~~~っ!!!!」


 こうして、爆発したアリッサ嬢の怒号が応接間に鳴り響き、そういえば研究所時代のアリッサ嬢はこういう役回りが多かった事を思い出し、どこか懐かしさを感じるのであった。

 





 「ウォレス達はいつこちらに来たのであるか?」

 「一昨日だな」

 「俺達が戻る予定だった次の日か」

 「だから、さっきアリッサが言ったことも見ているんだ。ここだけじゃなく、集落全体で二人を案じている感じだったから、明日全員にちゃんと謝った方がいいね」

 「あぁ、明日は謝罪行脚か…………」


 シンの言葉にダンは面倒そうな表情を浮かべて菓子を手にとって口に入れるのである。

 並べられていた菓子はリリー嬢が前もって作っていた菓子で、ゴードン達も口にしていた物であったので安心して食することができたのである。

 こういう時、ウォレスやシンは嘘をつくことがままあるので、ゴードンに確認するのが1番なのである。

 これも研究所時代の流れである。


 ちなみに先程大爆発したアリッサ嬢であるが、暫く爆発が続いた結果落ち着きを取り戻した後疲れてしまったようで、リリー嬢に連れられて自室へと戻って行ったのである。


 「自分を押し殺して頑張っていましたからね。センセイ達が無事に帰ってきて安心したのでしょう」

 「そういう感じには見えなかったのであるが」

 「まぁ、やり過ぎの面があったのは否めないでしょうね」

 「アリッサをからかうと反応が楽しくてね」

 「つい、な」


 我輩の言葉に三人が苦笑いを浮かべるのである。


 「ところで、ゴードンはわかるんだが、ウォレスとシンはどうしているんだ?」

 「そうであるな、それは我輩も気になったのである」


 リリー嬢とゴードンには収穫祭の招待をした記憶はあるのである。

 で、あるがウォレスは新婚であったので招待を控えていたし、シンにいたっては会っていないのである。


 「僕はたまたまウォレスのところへ遊びに行こうと思ってギルドに行っていたんだ」

 「その時、ちょうどリリーが俺に護衛の指名依頼をしているところでな」

 「それで僕も付いて来たっていうわけさ」

 「……シン、お前タイミングが毎回神懸かってるな」

 「僕もそう思うよ」


 やや呆れたような表情を浮かべてシンを見ているダンを見て、シンは苦笑いを浮かべて同意の頷きを返すのである。


 「そして同じく収穫祭に参加しようと向かっていた私たちと、道中で鉢合わせしたと言うわけです」

 「だから久しぶりに全員が集合することになりそうだと、俺達も楽しみにしてたんだがな」

 「まさかのリーダーとセンセイが不在で、皆が精神的に不安定になってるっていうね」

 「心配しすぎなんだよ……」

 「大袈裟過ぎである」

 「何を言っているんですか」


 三人の言葉に今度は我輩達が苦笑いを浮かべるのであるが、ゴードンが真剣な表情でこちらを咎めるように言葉を放つのである。


 「今一緒にいる者、集落にいる者、さらにいえばこの帝国民、もちろん私たちもですが、二人がどれだけの影響力をお持ちだと思いですか」

 「そうだな、リーダーは帝国最高の探検家チームのリーダーで、今も唯一大森林の深部で活動できる探検家チームのリーダーだ。言い変えれば現時点で帝国一の探検家だ。帝国民に与える影響は大きい」

 「そして、センセイはその存在を隠しているとはいえ、その探検家チームを補助する錬金術師で、この集落を発展させた立役者だよ。心配しすぎとか、大袈裟とか思う方がどうかしてるよ」

 「こういう風に言っていますけれどね、もっと簡単に言ってしまえば二人が思っているよりも深く、あなた方は皆に慕われているのですよ」

 「…………皆に心配をかけて申し訳なかったのである」

 「少し遅れても収穫祭に間に合えば良いだろうと、軽く考えてた部分があったのは確かだ。すまなかった」


 三人の話を聞き、我輩達がどれだけ多くの人に心配をかけていたのか分かった我輩とダンは、頭を下げるのである。

 今回は我輩達三人の自分本意の考えが過ぎたのである。

 

 妖精パットンは自分勝手に同行した結果迷惑をかけたのである。

 ダンは多少の遅刻なら問題ないだろうという甘い考えを持った結果、換言役としての役目を怠ったのである。

 我輩も、自分の好奇心を満足させるために管理集落の滞在日数を延ばしたのである。


 その安易な行動の結果が、皆を不安にさせてしまったということなのである。

 これは大いに反省しなくてはならないのである。


 「…………だ、そうだぞ。皆」


 我輩達の様子を見ていたウォレスが、ドアの方に向かって声をかけるのである。

 すると、いつのまにか少し空いていたドアが大きく開かれるのである。


 「そうですよ! 反省してください! どれだけ心配したと思っているんですか!」

 「俺がこっちで待ってるって時に二人きりで出かけるとか酷くないですかい!?」

 「おっちゃん、何か美味い食べ物あった? 持ってきた?」


 そう言いながらデルク坊やミレイ女史など、いつものメンバーが我輩達の所へと駆け寄って来たのである。

 こうして我輩とダン、そして一人先に帰宅した結果、他の者達から先行して絞られていた妖精パットンは気が済むまで小言を言われ、その間謝り続けることとなったのであった。







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