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錬金術師アーノルドの自由気ままな毎日  作者: 建山 大丸
2章 辺境の集落と新しいメンバー、である。
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楽しいことがいっぱいなのである


 我輩の名はアーノルド。帝国唯一無二の錬金術師である






 「さぁ、話を戻すとしよう。たしか、意思疏通の魔法の話しはしたね。後は、この家を中心に、かなりの広範囲でかけられている認識阻害の魔法だね」


 妖精パットンは、腕を組みその場に羽ばたきながら話を進めるのである。


 「魔法の原理自体は簡単さ。ボクが発する、ここにはなにもない、という構成魔力を具現化して、ある程度の範囲内に拡散したり、逆に集約して特定の相手にぶつけるっていうだけだよ」

 「嬢ちゃん達と逃げるときに使ったのが前者で後者が俺達とのかくれんぼのときか。」

 「そういうことだね」


 相手の意識に作用する魔法なので、対象の抵抗や正しい認識をさせる行動などを起こしてしまうと効果がなくなってしまうのである。


 「だからボクは驚いたんだよ。最初の時も、ボクの周囲に結構強力な認識疎外魔法をかけていたのに、森の外に出る話を聞いたときの一瞬の隙でボクの存在に気付いちゃうんだもんね」

 「なんかずっと、何かいるような、でも気のせいなような気もする気持ち悪い感じだったけど、一瞬だけこっちに強い気配を感じたんだよな」

 「それ、多分サーシャが錬金術師アーノルドの話を聞いて、意気消沈したときにボクが<ボクならそれを解決できる!>って思ったのを無意識に具現化したのを感じたんだろうね。普通感じないよ、それくらいの具現化された意思なんか」


 淡々と話すダンに、呆れ顔の妖精パットン。まぁ、ダンのチームのメンバー全員人間を半分辞めているような気がするのである。魔者に片足を突っ込んでいるような気もするのである。


 「だからさ、かくれんぼの時はダンとアリッサにかなり強い認識疎外の魔法をかけて、意識が行かないようにしてるのに見破るんだもんねぇ、多分、ボクの【意思】の構成魔力を感じてるよね、無意識に。」

 「誰かさんのおかげで、油断すると即死するような場所に連れていかれたりしたからな。きっとそのせいだろ」


 ダンが我輩の方を見るのであるが、我輩はそんなことをさせた覚えは無いのである。濡れ衣は勘弁してほしいのである。


 「へぇ、すごい魔法を破っちゃうんだ、おねぇちゃんすごいんだね!」

 「嬢ちゃん、俺だって破ってるんだぜ」

 「でもおねぇちゃんの方が早かったんでしょ?」


 サーシャ嬢は、まだ少し怒っているようで、いつもよりダンに厳しいのである。ダンも、困り顔である。もう少し困っていれば良いのである。


 「それはそうと、妖精パットンの魔法と同じものがこの家の煙から出ているのであるか?」


 我輩の質問に、妖精パットンは首を振るのである。


 「煙自体は、多分何の魔法もかかってない。ただの臭いのする煙だよ。多分、効果範囲をそれで教えてるのとここには入れるものの判別をしているんだと思う」

 「では、別に認識疎外の魔法がかかっているって言うことであるか」

 「その通り、ほぼ煙の範囲と同じくらいにボクの魔法より強い認識疎外の魔法がかかっているよ」


 妖精パットン魔法より強い認識疎外効果が広範囲に渡っている。途方も無い構成魔力の消費量である。


 「破る方法はあるのか?俺達は入れたけど」

 「一度入ったときに自然に分解される微量の【意思】構成魔力を具現化して意思を読み取ったんだけどね」

 「そんなこともできるのか」

 「結構制御が大変だけど、出来るよ」


 妖精パットンは、胸を張ってダンの言葉に返事を返すのである。なかなかかわいいものである。


 「この中に入れる条件は大きく3つ。先に言っておくけど、こういう結界に判別の条件をつけるのは、かなり高度な魔法技術だって知っておいてね」


 妖精パットンは前置きを入れて説明を始めるのである。


 「まずは普通に、結界を構成する意思の魔法を破るくらいの意思で何かがあると確信すること」


 ダンが、妖精パットンの認識疎外の魔法を破ったように、認識疎外の結界を自分の意思で破る、ということであるな。


 「ここの存在をすでに知っていること」


 サーシャ嬢が達がここに逃げれたのは、この判別条件に該当するからであるか。ダンも、二回目の時はそうだったのかも知れないのである。


 「後は、結界に沿って発生させている煙の魔法技術が分かること。これは、何の意味があるんだろうとは思うけど、そういう風になっているね」


 …………、なるほどである。錬金術師を判別しているということであるか。しかし、アリッサ嬢にしか香りを確認できなかった辺り、あまり意味のあるようには思えないのである。


 「仮に、吹き飛ばされたり、無意識で結界の中に入ってしまった場合はどうなるのであるか?」

 「何となく違和感を感じて違和感を感じなくなるまで外に向かって行くと思うよ。それでも進んでいくものは、結果的にだけど、結界に抵抗していると言えるんだ」

 「なるほどである、ありがとうである妖精パットン」


 我輩の中でまだ消化仕切れていない部分もあるのではあるが、大分色々知れたのである。そう思っていると妖精パットンとサーシャ嬢がこちらを見ているのである。心なしか、何か期待しているような節があるのである。


 「さぁ、錬金術師アーノルド、ボクの使える魔法でサーシャ達をニンゲンの集落に連れていっても大丈夫だという説明はしたよ。どうだい?考え直してくれるかい?」


 そうであった。元々はその話であったのである。完全に忘れていたのである。

 我輩は、ダンの方を見ると、ダンは首を縦に降るのである。問題ないということであろう。我輩は、二人の方を見て答えるのである


 「問題ないのである。一緒に行くのである」


 二人が手をにぎりあって喜んでいるのが印象的であったのである。






 話も終わり、全員で家に向かうことが決まった後、兄君達も家に戻ってきたのである。 

 兄君は大分疲れていたようであるが、笑顔である。アリッサ嬢も笑っているのである。しかし、汗はほとんどかいておらず、疲れなどを感じさせない辺りやはり化け物じみている気がするのである。


 「ただいま皆、おれ、やったぜ……」

 「おにいちゃん、おつかれさま!頑張ったの?」

 「へへ……逃げきったぜ、5分」


 サーシャ嬢の問いに親指を立てて、返事をする兄君である。ちょっとだけ、何かを達成した男の風格が出ている気がするのである。やっていたのは追いかけっこなのであるが。


 「やるな、デルク。アリッサ、手でも抜いたのか?」

 「そんなことあるかい、リーダー。最後はデルっちの本気の覚悟を見れたね」


 アリッサ嬢は苦笑いである。どうやら、木の頂点まで上り、そこを移動しながら逃げて行ったようである。

 アリッサ嬢も、木登りは苦にしないのであるが、兄君の本気には一歩及ばなかったようである。


 「さすがデルク、猿の獣人の面目躍如だな」

 「俺は猫の獣人!わざと間違えんな!」


 ダンは、兄君をからかって遊んでいるのである。この男はすぐに元に戻るのである。


 「それで結局どうするんだい?皆行くことになったんだろうけれど」

 「その通りだよ、アリッサ。全員で行くことになったよ」


 くるくるサーシャ嬢の周りを飛んでいた妖精パットンが、アリッサ嬢に答えるのである。話すときに相手の近くまで飛んでいくのは癖なのであろうか。

 妖精パットンの話を聞いたアリッサ嬢は満面の笑顔で


 「よし!良いことがいっぱいだから夕飯張り切りますか!」


 と言い、ダン達は大声をあげて喜びを表現するのである。我輩は、乗り切れなかったのである。






 「あああぁぁ、うめぇぇぇ…………染み渡る……」

 「おっさんか、おまえは。肉を食え、肉を」


 兄君が、肉と野菜の旨味が良く出ているスープを味わうように飲んでいるのである。汗を大分かいたため、塩味を欲しているのであるな。ひたすらスープを飲んでおり、他のものをがっつく元気すら無いようである。

 そんな兄君を、手前にあるローストされた大きな肉塊を切り取りながらダンはあきれ顔でそういうのである。


 「リーダー、若くないんだから肉ばかり食べないの。野菜を食べなさい、野菜を」

 「アリッサ、俺は若い奴には負けないぜ」


 肉ばかり食べているダンをアリッサ嬢が窘めるのであるが、本人は減らず口で返すのである。そういう態度の割に、言われると野菜に食指を動かすのであるから、だったら最初から素直に分かったといえば言いのに面倒臭い奴なのである。


 「それが年寄りの台詞なのである」

 「おぉ?俺より年寄りのセンセイが言うと重いねぇ」

 「おじさん達は、私たちより全然若いよ?私はおばあちゃん?」

 「森の民は別であるよ、サーシャ嬢はかわいいお嬢さんである」

 「えへへ……おじさん!お肉切ってあげるね!」

 「ありがとうである」


 色とりどりの野菜のサラダに手を伸ばしながら、我輩はダンに告げるのである。

 予想通り、ダンは食いついて来たのであるが、予想外にアリッサ嬢が参戦してきたのである。

 見た目は若くて年齢は我輩の親ほどである。単純に年齢だけだと先輩であるが、本人の感覚もこちらの感覚も年下の子供なので、子供である。 

 サーシャ嬢もそう言われたのが嬉しかったのか、ご機嫌である。


 「おい、アリッサ。センセイが、かわいいお嬢さんとか言ってるぞ」

 「なんて事なの……って思うでしょ?残念だねリーダー。私もリリーも<素晴らしき帝国淑女である>って言われたことあるからね」

 「なん………」

 「ちなみに、シンとゴードンの旦那も<誇るべき帝国紳士である>って言われてたよ。先生もたまにはちゃんと褒めるんだよ。かなり珍しいけどね」

 「俺は今まで一度もそんなことは言われてねぇぞ……」


 ダンが、いつものようにアリッサと我輩で遊ぼうとしたようなのであるが、予想外の反応を受けショックを受けているようである。言われてみると、確かにダンのところをしっかり評価したことがなかったような気がするのである。


 「ダンよ」

 「なんだよセンセイ」


 なので、ちゃんと評価を伝えることにするのである。


 「ダンは、立派な帝国の悪ガキな大人である」

 「何で俺だけろくな評価じゃねぇんだよ!」

 「紳士であるならば、人の注意に屁理屈をこねていないで、素直に受け入れれば良いのである。野菜を食べるのである」

 「そこかよ!」

 「アハハハハハハハハハ!!!おもしろいねぇ、君達は。あはは…うわぁ!!」


 我輩の言葉に憤慨するダンと、文字通り腹を抱えて笑い転げる妖精パットン。あ、いま机から落ちたのである。


 その妖精パットンの様子を見て、我輩達は皆声を出して笑うのである。こういう騒がしさなら、たくさん続いてほしいのである。






 「おじさん!朝だよ!起きて!」


 昨日の楽しかった夕飯を終え、各々の時間を過ごし朝を迎えたのである。今日もサーシャ嬢は元気なのである。我輩は、ゆっくりと布団から起き上がるのである。


 「おはようなのである。サーシャ嬢は、今日は早いのであるな」


 我輩はそういうのであるが、周りを見渡すとそういう感じでもないようである。


 「今日は、おじさんが珍しくお寝坊さんなんだよ。みんな準備終わって待ってるよ。」

 「おぉ、それはすまないのである」


 珍しく寝過ごしてしまったようである。昨日の話を寝る前まで考えていたからであろうか。

 サーシャ嬢は、我輩の荷物を手にとろうとしているのである。


 「おじさんの荷物これだけ?私、先に持って行っておくね」

 「あぁ、これだけは割れ物なので、我輩が持って行くのである。サーシャ嬢、後はよろしくお願いするのである」

 「うん、早く来てね!私、すごい楽しみ!」


 そう言い、サーシャ嬢は我輩の荷物を持って部屋から出て行くのである。






 さぁ、これから1200年以上の時を越えて人間の領土に多種続が赴くのである。多分、妖精パットンの魔法で何事も無いとは思うのではあるが、楽しみである。

 我輩も着替えを終え、残りの荷物を持って皆の下に移動するのであった。






PVがはじめて100を越えました。こんなグダグダに、有難うございます。

あと、よく見たらブックマークと評価もつけていただいていました。

本当にありがたいことでございます……


 少しだけ内容を変更しました

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